SARS-CoV-2抗原検査の感度・特異度はどのくらいですか?

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新型コロナウイルスに対する抗原検査とRT-PCRの違いとは?

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症において、確定診断のための補助検査が求められています。なぜなら、SARS-CoV-2感染症であるCOVID-19は、無症候性の患者(無症候性キャリア)が推定50%いることが報告されているためです。

これまでCOVID-19患者に対するSARS-CoV-2検出検査としては、遺伝子検査であるRT-PCRと、特異蛋白を迅速に検出する抗原検査が用いられてきました。RT-PCRは理論上、抗原検査より高い感度を示すことが特徴的ですが、臨床現場ではコンタミネーションの可能性を排除できないため、実際の感度は下がります。

抗原検査はRT-PCRよりも簡便に迅速に検査結果を得ることができますが、RT-PCRよりも感度が低いことが指摘されており、実臨床における利用拡大のための検証が必要とされています。

SARS-CoV-2抗原検査の感度・特異度は?

今回ご紹介する臨床試験では、4つの迅速AD(RAD)検査(biotical、Panbio、Healgen、Roche)と1つの自動AD検査(VITROS)を含む5つのAD検査の臨床性能を比較しています。その結果によれば、Ct値≦33の場合、RAD検査の抗原検査の臨床性能は感度76.2%(95%CI 65.4〜85.1%)から88.8%(95%CI 79.7〜94.7%)であり、特異度は96.3%(95%CI 90.8〜99.0%)から99.1%(95%CI 95.0〜100%)でした。

一方、VITROS自動測定法はCt値≦33に対して、感度100%(95%CI 95.5〜100%)を示し、特異度も100%(95%CI 96.6〜100%)でした。

SARS-CoV-2に対する抗原検査において、RAD検査よりも自動AD検査(VITROS)の方が、感度・特異度が高いようです。実臨床での使用を考慮すると、自動AD検査(VITROS)の普及に専念した方が良いように考えられます。

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✅まとめ✅ SARS-CoV-2に対する抗原検査の感度・特異度が高いのは自動抗原検出検査(VITROS)だった

根拠となった論文の抄録

背景:リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcription-polymerase chain reaction, RT-PCR)による鼻咽頭検体中のSARS-CoV-2 RNAの検出は、SARS-CoV-2感染症の診断のための標準的なゴールドメソッドと考えられている。
抗原検出(antigen detection, AD)検査は、より迅速で手間がかからず、安価な代替法であるが、臨床的な検証が必要である。

方法:本研究では、4つの迅速AD(RAD)検査(biotical、Panbio、Healgen、Roche)と1つの自動AD検査(VITROS)を含む5つのAD検査の臨床性能を比較した。そのため、有症者118例(62.8%)と無症状者70例(37.2%)を対象に検査を行い、RT-PCRとの比較を行った。

結果:RAD検査の性能は控えめであり、ウイルス負荷が高いRT-PCR陽性患者を同定することができた。Ct値が25以下の場合、感度は93.1%(95%CI 83.3〜98.1%)から96.6%(95%CI 88.1〜99.6%)の範囲であり、高ウイルス負荷の検体を見逃したことを意味した。
CDCが提唱する伝染性のCt値(すなわちCt値≦33)を考慮すると、感度は76.2%(95%CI 65.4〜85.1%)から88.8%(95%CI 79.7〜94.7%)であり、特異度は96.3%(95%CI 90.8〜99.0%)から99.1%(95%CI 95.0〜100%)であった。VITROS自動測定法はCt値≦33に対して100%(95%CI 95.5〜100%)の感度を示し、特異度は100%(95%CI 96.6〜100%)であった。

結論:VITROS法はRAD法と比較して、Ct値が33までのRT-PCR法と完全に一致しており、SARS-CoV-2感染症患者の迅速、簡便かつ安価な同定を可能にしている可能性がある。

Ct値:増幅された特徴的DNAがある一定量(危険量)になるための増幅サイクル数(threshold cycle)のこと。

引用文献

Head-to-Head Comparison of Rapid and Automated Antigen Detection Tests for the Diagnosis of SARS-CoV-2 Infection

J Clin Med. 2021 Jan 13;10(2):265. doi: 10.3390/jcm10020265.

ー続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33450853/

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