中国 武漢の新型コロナウイルス感染による肺炎患者の臨床的特徴とは?(単施設の後向き症例シリーズ; JAMA 2020)

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Clinical Characteristics of 138 Hospitalized Patients With 2019 Novel Coronavirus-Infected Pneumonia in Wuhan, China

Dawei Wang et al.

JAMA. 2020

PMID: 32031570

DOI: 10.1001/jama.2020.1585

試験の重要性

2019年12月、中国の武漢で新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染肺炎(NCIP)が発生した。 症例数は急速に増加しているが、罹患患者の臨床的特徴に関する情報は限られている。

目的

NCIPの疫学的および臨床的特徴を記述する。

試験設計、設定、参加者

2020年1月1日から1月28日まで、中国武漢の武漢大学中南病院でNCIPが確認された138人の連続入院患者の後向き単一施設症例シリーズ。 フォローアップの最終日は2020年2月3日だった。

暴露

NCIPのカルテ記録

主なアウトカムと測定

疫学的、人口統計学的、臨床的、実験室的、放射線学的、および治療データが収集され、分析された。

重症患者と非重症患者の結果を比較した。 同じ病棟の医療専門家や入院患者の集団が感染し、感染源の可能性を追跡できる場合、病院関連の感染が疑われる。

結果

・NCIPの入院患者138人のうち、年齢の中央値は56歳(四分位範囲42〜68歳、範囲22〜92歳)で、75人(54.3%)は男性だった。

・病院関連感染は、罹患した医療専門家(40 例[29%])および入院患者(17例 [12.3%])の推定感染メカニズムとして疑われた。

・一般的な症状には、発熱(136件 [98.6%])、疲労(96 件[69.6%])、および乾いた咳(82 件[59.4%])が含まれた。

・リンパ球減少(リンパ球数 0.8×109/L [四分位範囲{IQR} 0.6-1.1])は97人の患者(70.3%)で発生し、プロトロンビン時間の延長(13.0秒[IQR 12.3-13.7])は80人の患者(58 %)、および乳酸デヒドロゲナーゼ(261 U/L [IQR 182-403])上昇は55人の患者(39.9%)で認められた。

・胸部コンピュータ断層撮影スキャンは、すべての患者の肺に両側の斑状の影またはすりガラス状の不透明性を示した。

・ほとんどの患者が抗ウイルス療法を受け(オセルタミビル 124例 [89.9%])、多くの患者が抗菌療法を受けた(モキシフロキサシン 89 例[64.4%]; セフトリアキソン 34 例[24.6%]; アジスロマイシン 25 例[18.1%])。グルココルチコイド療法は62 例[44.9%]だった。

・36人の患者(26.1%)は、急性呼吸圧迫症候群(22件 [61.1%])、不整脈(16 件[44.4%])、およびショック(11件 [30.6%])を含む合併症のため、集中治療室(ICU)に移された。

・最初の症状から呼吸困難までの時間の中央値は5.0日、入院までの日数は7.0日、ARDSまでは8.0日だった。

・ICUで治療された患者(n = 36)は、ICUで治療されなかった患者(n = 102)と比較して、年齢が高く(年齢の中央値 66歳 vs. 51歳)、根本的な併存疾患(26 [72.2% ] vs. 38 [37.3%])、呼吸困難(23 [63.9%] vs. 20 [19.6%])、食欲不振(24 [66.7%] vs. 31 [30.4%])を有している確率が高かった。

・ICUの36症例のうち、4例(11.1%)が高流量酸素療法を受け、15例(41.7%)が非侵襲的換気を受け、17例(47.2%)が侵襲的換気を受けた(4例は体外膜酸素化に切り替えられた)。

・2月3日現在、47人の患者(34.1%)が退院し、6人が死亡した(全体的な死亡率 4.3%)が、残りの患者はまだ入院している。

・生きたまま退院した患者(n = 47)のうち、入院期間の中央値は10日間だった(IQR 7.0-14.0)。

結論と関連性

中国武漢でNCIPが確認された入院患者138人の単一施設症例シリーズでは、2019-nCoVの病院関連伝播が患者の41%で疑われ、患者の26%がICUケアを受け、死亡したのは4.3%だった。

コメント

新型コロナウイルス感染肺炎の臨床的特徴を示した後向き症例集積研究。

新型コロナウイルス感染肺炎の症状で多かったものは、高熱、乾咳、倦怠感。インフルエンザ感染症や上気道感染症の初期症状と酷似していますね。実際、今回の患者138人の約9割に抗インフルエンザ薬のオセルタミビルが投与されています。

またタイでは、新型コロナウイルス感染肺炎の患者に対して、抗HIV薬リトナビルと抗インフルエンザ薬オセルタミビルを同時投与したようで、当該患者はその後解熱し、5日目にはベッドに座れるまでに回復したとのことです。

新型コロナ、発症すると…インフルエンザに近く? - 日本経済新聞
中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、謎の多い感染症の姿が見えてきた。日本や米国、中国などの専門家が発症した患者の経過を明らかにし始め、症状の特徴や治療薬候補の効果の可能性などがわかってきた。症状は...

ただし今回のケースは、たまたま一症例で認められた劇的な効果ですので、リトナビル+オセルタミビルによる効果が万人にあるかは現段階では不明です。

さて、日本ではオセルタミビルを投与している症例が多いようですが、情報が錯綜していて一定の見解は得られていません。

また日本(正確には日本の情報番組およびコメンテーター)での理解が足りていないことは、①新型コロナウイルスに根本的な治療薬はない、②新型コロナウイルス感染の検査(rRT-PCR)は現段階で必須ではない、③rRT-PCRによる核酸の検査結果が出るまでには時間がかかる、④咽頭扁桃の拭いサンプル取得には実施タイミングと手技に実績のある医療者が必要、⑤解熱したほうが良い人とある程度経過観察で良い人がいる、⑥医薬品は承認された適応と異なる場合に使用されることがある、⑦時期的にインフルエンザに罹患していない(新型コロナウイルス感染である)と結論づけられない、パッと思いつくのはこんなところです。

上記のうちの一つ、検査について少し補足しますと、検査キットには感度と特異度がある、ということです。つまり検査したら陽性か陰性か100%当たるわけではないということです。もちろん外れることもあります。RT-PCRで検査する方が確実ですが、結果が出るまでに時間がかかり、かつ検査しなければならない数が多い(患者増加による検体数増加)ほど、さらに時間が必要です。

今回の新型コロナウイルスにおいて検査することのデメリットは、偽陰性が出やすいことです。どうやら検査の感度(陽性率)は30-50%のようです。簡単に説明しますと少なくとも検査した半分は外れるということです(実際はもう少し複雑で、事前オッズや尤度比を用いた計算が必要)。

この値はかなり低く、他の疾患を排除できている状態でさらにこの検査をする意義はほぼないです。なんでもかんでも検査している場合では無くて、要は患者の症状が治れば良いわけです。

少なくとも現時点では、新型コロナウイルスかどうかを知ることが重要となるわけではありません。そもそも新型コロナウイルスかどうかわかったところで治療方法は今のところ対症療法のみです。

未知の情報に対して過度に恐れず、要となる情報を押さえて行動することが肝要であると考えられます。くれぐれも現場の医療従事者や行政を責めるようなことは避けて欲しいところです。

あと、マスクよりもうがいと手洗い(可能であればアルコール消毒も)の方が効果あります。

検査の感度については情報元である中国Caixin紙の内容を以下に一部引用します。

Google翻訳:

「遺伝子配列に基づいて開発されたキットでは、新しいクラウン肺炎核酸の検出を使用する必要があります。 湖北での集団発生の継続的な発酵では、早期決定により病院の検査機関が制限され、その後、キットの供給がスムーズでなく、検査の閾値が制限され、キットの使用効率が批判されました。

核酸の検出精度も疑問視されています。 疫学歴、臨床症状が一貫しており、CTでさえ肺ウイルス感染を示している場合でも、多数の患者が「陽性」核酸と診断されていない。 中国医学アカデミーの重要な医学専門家である王陳は、2月5日のCCTVとのインタビューで、「この病気はすべての患者が核酸陽性を検出できないという特徴を持っている」と述べた。 本当にこの病気にかかっている患者の陽性率は30%-50%に過ぎません。喉の疑いのある綿棒を収集する方法にはまだ多くの偽陰性があります。核酸は発見されていませんが、実際はそうです。 武漢大学中南病院のイメージング部門の副所長であるチャン・シャオチュンと他の専門家は、新しい冠動脈肺炎、タイムリーな治療、タイムリーな疑いのある患者の主な診断基盤としてのCT画像の使用を求めています。 そして、それらのほとんどは隠されており、1つまたは複数の核酸陰性であり、自宅での観察の使用などの臨床症状がなくても、流行はさらに広がることが避けられません。

湖北省の流行の予防と管理の必要性と最前線の医師の呼びかけに応えて、2月4日に国家保健医療委員会が発表した新しい冠状肺炎診断および治療プログラムの第5版は、新しい点として湖北省の肺炎の診断のための「臨床診断症例」を追加しました タイプ、特に肺炎の画像特性を有する疑いのある症例。 (詳細については、Caixin.comのレポート「解釈| Xinguanの疑わしい診断基準の緩和と湖北省のさらなる緩和に必要な臨床症状は2つだけです」を参照)

2月6日の時点で、全国で26,359人の疑わしい患者がまだあり、合計31,161人の診断が確認されました。 最近では、湖北省で新たに疑われる症例の1日あたりの数は約4000〜5000です。 疑わしい症例のタイムリーかつ正確な診断は、流行の制御において重要な役割を果たすでしょう。

高い偽陰性の核酸検査の臨床的考察

高い偽陰性核酸検査の考えられる理由は、「一部の患者は感染しているが、多くの新しいウイルスが生成されておらず、サンプルに多くのウイルスが含まれていない」「RNAウイルスの安定性が低い」です。 呼吸器ウイルスが減少し、低呼吸器ウイルスがまだ存在しています」など。」

原文はこちら:http://m.china.caixin.com/m/2020-02-07/101512519.html?fbclid=IwAR0INPDVbWZ19p7_vn1scOWOU7S5ZB-vnBr9UNZ759scLw-wpcEtBfuQqDs

✅まとめ✅ 新型コロナウイルス感染肺炎の症状は初期のインフルエンザや感冒症状に似ている

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