2021年9月時点において新型コロナワクチンの3回目のブースター接種は必要とはいえない(WHO&FDA; LANCET 2021)

person standing on black floor 01_ワクチン vaccine
Photo by Marlon Trottmann on Pexels.com
この記事は約4分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

ワクチンの3回目接種の必要性は?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの収束が求められるなか、ワクチンの3回目接種について活発に議論されています。ワクチンの接種については、国や地域で差があり、特に発展途上国におけるワクチン接種は進んでいません。したがって、世界保健機構(WHO)は集団免疫の獲得およびワクチン接種の格差を是正するために、新型コロナワクチン3回目の接種、いわゆるブースター接種については否定的な立場をとっています。これは3回目接種によるSARS-CoV-2感染予防やCOVID-19発症予防において、明確なエビデンスが存在しないことにも起因しています。

新型コロナワクチン3回目接種における各国の動き

世界で最も早くワクチン接種が進んだイスラエルでは、国をあげて3回目接種を推奨しています。2回目接種から5ヵ月が経った60歳以上の高齢者を対象に、2021年8月1日からブースター接種が始まり、8月29日からは対象年齢が12歳以上に引き下げられました。また米国においても2回目の接種から8ヵ月経った18歳以上を対象に9月20日からブースター接種を開始することを決定しています。日本においても医療従事者に対しては早ければ10月から、高齢者に対しては来年1月からブースター接種が始まる予定のようです。しかし、いずれの施策も、観察研究や基礎研究の結果に基づき、やや強引に実施されている可能性があります。というのも、ワクチン接種6〜8ヵ月後に抗体価が低下する事実はあるものの、感染予防効果が同様に低下することを示す確固たるデータは存在しません。つまり抗体価は高い方が良いのことは疑いようのない事実ではありますが、その値がどのくらい低下すると感染を防ぐことが困難となるのか、質の高い研究報告は充分になされていません。

WHOとFDAによる「COVID-19ワクチンの免疫反応を高めるための検討事項」

2021年9月13日、Lancet誌に「Considerations in boosting COVID-19 vaccine immune responses」というタイトルで論文が公表されました。この論文によれば、イスラエルでの経験に関する最近の報告では、ブースター(mRNAワクチン3回目)接種が承認後に広く展開され始めた直後2021年8月の最初の3週間における有効性(2回目の接種に対する)が示唆されています。しかし、平均追跡調査期間は約7日であることと、短期間の感染予防効果が必ずしも長期的な価値ある利益を意味するとは限りません。一貫して言えることは、重症患者に対するワクチンの有効性は、あらゆる感染症に対する有効性よりもはるかに高いということです。 症候性COVID-19に対するほとんどのワクチンの有効性は、デルタ型ではアルファ型に比べてやや低いものの、デルタ型による症候性疾患と重症疾患の両方に対して、依然としてワクチンの有効性が高いことを示しています。事実、米国の大規模研究の報告(米国CDCのCOVID-NET、主要な健康維持組織の2つの研究:SSRNNEJM)によれば、重篤な疾患や入院に対する完全なワクチン接種の有効性が引き続き高いことが示されています。

WHOの見解としては、各国が独自に新型コロナワクチン3回目接種を推進するよりも、世界全体の利益を鑑み、ワクチンが行き届いていない国や地域へのワクチン供給(配置)を行うことで、集団免疫を獲得し、新型コロナウイルスの亜種の進化を抑制することが可能となり、パンデミックの終息を早められると述べています。

今一度、どのような患者で、どのタイミングで、どのくらいの量(回数)、ワクチン接種が必要であるのか、慎重に検討する必要があると考えられます。

black students reading assignment in textbook

✅まとめ✅ 2021年9月時点において、新型コロナワクチンの3回目接種は免疫不全者など一部の患者集団にとっては有益であるが、一般的な健康成人集団への有効性についてはデータが充分ではない。ワクチンが最も効果的な場所に配備されることで、亜種のさらなる進化を抑制するでき、パンデミックの終息を早めることができるかもしれない。

引用文献

Considerations in boosting COVID-19 vaccine immune responses
Philip R Krause et al.
Lancet 2021. Published OnlineSeptember 13, 2021 https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)02046-8
ー 続きを読む PDF

コメント

タイトルとURLをコピーしました