高齢の心房細動患者におけるレートコントロールとリズムコントロール、どちらが優れていますか?(SR&MA; Drugs Aging. 2020)

red heart shaped ornament 未分類
Photo by Djurdjina ph.djiz on Pexels.com
この記事は約5分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

Clinical Outcomes of Rate vs Rhythm Control for Atrial Fibrillation in Older People: A Systematic Review and Meta-Analysis

Laurence Depoorter et al.

Drugs Aging. 2020 Jan;37(1):19-26. doi: 10.1007/s40266-019-00722-4.

PMID: 31745834

DOI: 10.1007/s40266-019-00722-4

背景と目的

心房細動(Atrial fibrillation: AF)は高齢者において非常に有病率が高く、罹患率および死亡率の増加と関連している。

高齢者におけるこの心房細動関連の罹患率を減少させるために、洞調律の時間を長くすることで心房細動関連の罹患率を減少させると仮定して、抗不整脈薬(antiarrhythmic drugs: AAD)がリズムコントロールのために定期的に使用されている。しかし、高齢者ではレートコントロールに比べて薬物有害事象のリスクが高いため、AADが臨床アウトカムを改善できるかどうかは不明である。

本研究の目的は、高齢の心房細動患者におけるリズムコントロールとレートコントロールの臨床アウトカムへの影響を明らかにすることであった。

デザインと方法

65歳以上の心房細動患者で、レート(心拍数)またはリズムをコントロールする薬剤を使用している患者を対象に、システマティックレビューおよびメタアナリシスを実施した。

以下の基準を満たす論文を対象とした;

  • 高齢の心房細動患者(標本平均年齢75歳以上)が登録されている
  • 薬理学的なレートコントロールとリズムコントロールを比較している
  • 全死亡率、心血管死亡率、虚血性脳卒中を報告した論文

結果

・観察研究 5件が含まれた。

・平均年齢 75~92歳の心房細動患者 86,926例を対象とした。

・全死亡率(オッズ比[OR] 1.11、95%信頼区間[CI] 0.78〜1.59I2 = 79.6%;n = 28,526;研究 4件)と心血管系死亡率(OR 1.09、95%CI 0.81〜1.47I2 = 0%;n = 2,292;研究 2件)については、リズムコントロールとレートコントロールの間に差は認められなかった。

・リズムコントロールの結果、脳卒中は減少した(OR 0.86、95%CI 0.80〜0.93I2 = 0%;n = 59,496)が、これは主に1件の研究で決定された。

結論

収集されたデータはすべて観察的なものであり、強力な推奨を行うことはできなかった。さらに、すべての信頼区間が広く、観察された効果の不確実性を高めていた。

そのため、高齢者における心房細動の第一選択療法としてリズムコントロールやレートコントロールを推奨するにはエビデンスが不十分であった。

心房細動は高齢者に特に多いため、この集団ではより多くのランダム化比較試験が必要である。

コメント

心房細動とは?

心臓は右房と左房、右室、左室の4つの部屋に分かれており、その筋肉が規則正しく収縮・拡張を繰り返しながら、全身に血液を循環させています。

右房と左房を合わせて「心房」と呼び、この動きが不規則に小きざみに震え、十分に機能しなくなる不整脈のひとつを心房細動と呼びます。 動悸(どきどき)がしたり、めまいや脱力感、胸の不快感を感じたり、呼吸しにくい感じがしたりすることもありますが、自覚症状のない方もたくさんいます。

心房細動の治療とは?

2020年に不整脈薬物治療ガイドラインが改定されました。約7年ぶりの改定です。

https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2020_Ono.pdf

内容については原文をご参照ください。

レートコントロール vs. リズムコントロール

心房細動に対しては、抗凝固薬治療が基本です。ただし、CHADS2スコアで1点以上の場合です。1点未満の場合は、抗凝固薬治療を考慮しても良いことになります。

75歳以上の高齢者の場合、スコアが1点以上になるため、安全性に多少の懸念があっても抗凝固薬の治療対象となります。ただし、これは心房細動による血栓生成を抑制する目的です。心房の小きざみな震えを抑制することはできません。

したがって、心房細動患者に対するレート(心拍数)コントロールと、リズム(同調律)コントロールによる治療戦略が検証されています。

本研究から明らかになったことは?

平均年齢 75~92歳の心房細動患者 86,926例を対象とした観察研究 計5件がメタ解析に含まれました。

全死亡率および心血管系死亡率において、リズムコントロールとレートコントロールの間に差は認められませんでした。

  1. 全死亡率:オッズ比[OR] 1.11、95%信頼区間[CI] 0.78〜1.59;I2 = 79.6%;n = 28,526;研究 4件
  2. 心血管系死亡率:OR 1.09、95%CI 0.81〜1.47;I2 = 0%;n = 2,292;研究 2件
  3. 脳卒中はリズムコントロールで減少:OR 0.86、95%CI 0.80〜0.93;I2 = 0%;n = 59,496;研究 1件

そもそも研究数が少なく、解析に含まれた研究はさらに少なかったため、効果推定値が大きくなり、研究間の異質性も高くなってしまいました。高齢者を対象とした試験が少ないことから、今後の試験結果の集積が待たれます。

現段階においては、レートコントロールとリズムコントロールに差はなさそうです。症候性か無症候性か、安全性についてはどうかなど、患者背景により治療薬を選択することに変わりはなさそうです。

✅まとめ✅ 高齢者における心房細動の第一選択療法としてリズムコントロールやレートコントロールを推奨するにはエビデンスが不充分であった

コメント

  1. […] […]

タイトルとURLをコピーしました