片頭痛予防薬はアトゲパントとトピラマート、どちらが良い?

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― ランダム化比較試験(TEMPLE試験)

片頭痛の予防治療では「薬が効くか」だけでなく、長期間服用を続けられるかが重要

今回取り上げるTEMPLE試験は、片頭痛特異的な経口CGRP受容体拮抗薬atogepant(アトゲパント)と、従来から広く使用されてきたtopiramate(トピラマート)を直接比較したPhase 3bランダム化比較試験です。

結論を先に示すと、24週間ではアトゲパントはトピラマートと比較して、有害事象による治療中止が少ない、50%以上の片頭痛日数減少を達成した患者が多い、月間片頭痛日数の減少量も大きい、という結果でした。


臨床疑問

月4日以上の片頭痛を有する成人の予防治療において、アトゲパント60 mg/日はトピラマート50~100 mg/日と比較して、治療を継続しやすく、片頭痛日数も減らせるのか?

本研究の特徴は、「有効性」ではなくtolerability(忍容性)を主要評価項目にしたことです。

研究の背景

片頭痛予防には従来、抗てんかん薬など、もともと片頭痛専用に開発されたわけではない薬剤も使用されてきました。その代表がトピラマートです。

トピラマートには片頭痛予防効果がある一方、実臨床では忍容性の問題から継続できない患者がいることが課題です。

これに対してアトゲパントは、片頭痛の病態に関係するCGRP(calcitonin gene-related peptide)経路を標的とした経口CGRP受容体拮抗薬です。

従来、それぞれの薬剤についてプラセボとのRCTは存在していましたが、経口CGRP受容体拮抗薬と従来型経口予防薬との直接比較データは不足していました。そこでTEMPLE試験では、アトゲパント vs. トピラマート、という臨床的に非常に分かりやすいhead-to-head比較が行われました。


PICO

項目内容
P(Patient)成人片頭痛患者。スクリーニング前3カ月およびbaseline期間で平均月4日以上の片頭痛
I(Intervention)アトゲパント 60 mg 1日1回
C(Comparison)トピラマート 50、75または100 mg/日:最高忍容量
O(Primary)24週間における治療関連有害事象(TEAE)による治療中止
O(Secondary)月間片頭痛日数が50%以上減少した患者割合、月間片頭痛日数のベースラインからの変化など

試験デザイン

TEMPLE試験は、Phase 3b、多国籍、ランダム化、1:1割付、ダブルダミー、二重盲検、実薬対照、直接比較(head-to-head)試験です。

12カ国で実施されました。

試験期間

24週間の二重盲検比較期間の後、52週間のopen-label期間が設定されています。

今回報告された主要な比較結果は24週間の二重盲検期間についてです。論文発表時点ではopen-label期間は継続中でした。

症例数

項目症例数
スクリーニング730
ランダム化545
安全性評価540
・アトゲパント群273
・トピラマート群267

安全性評価の内訳は、女性:479例(89%)、男性:61例(11%)、白人:517例(96%)でした。


試験結果から明らかになったことは?

主要評価項目:有害事象による治療中止

アトゲパントトピラマート相対リスク比 RR(95%CI)
TEAEによる治療中止33/273(12%)79/267(30%)RR 0.4
(0.3-0.6)
P<0.0001

アトゲパント群では、有害事象による治療中止リスクがトピラマート群より約60%低い結果でした。絶対差で見ると約18です。概算すると、約6人をアトゲパントで治療すると、トピラマートと比較して1人の有害事象による治療中止を回避できる程度の差になります(概算NNT≈6)。

これは統計学的な差だけでなく、長期的な予防治療を考えるうえで臨床的にも注目すべき結果です。


有効性:50%以上片頭痛日数が減った患者は?

4–6か月目における月間片頭痛日数(MMD:monthly migraine days)がベースラインから50%以上減少した患者を比較しています。

アトゲパントトピラマート相対リスク比 RR(95%CI)
≥50% responder173/270(64%)101/257(39%)RR 1.6(1.4-2.0)
P<0.0001

アトゲパント群では64%、トピラマート群では39%でした。

絶対差は約25%です。したがって概算では、約4人治療するごとに1人多く50% responderを得られる程度の差になります。


月間片頭痛日数はどのくらい減った?

アトゲパントトピラマート群間差(95%CI)
MMDのLS mean変化−6.3日/月(SE 0.3)−4.5日/月(SE 0.3)−1.8日/月(−2.5 ~ −1.0)
P<0.0001

両薬剤とも月間片頭痛日数は減少しています。ただし、アトゲパントではトピラマートよりさらに、1カ月あたり1.8日多く片頭痛日数が減少しました。

ここで重要なのは、「トピラマートが効かなかった」わけではないという点です。トピラマート群でも−4.5日/月の減少が認められています。そのうえで、アトゲパント群の減少量がさらに大きかったという結果です。


安全性

安全性アウトカムアトゲパントトピラマート
治療関連有害事象(TAE)153/273(56%)208/267(78%)
重篤なTAE6例3例
死亡00

TEAEはアトゲパント群で少ない結果でした。一方、重篤なTEAEは、アトゲパント6例、トピラマート3例でした。

アトゲパント群のアナフィラキシー反応1例については、study drugとの関連ありと判断されています。

したがって、「アトゲパントのほうが有害事象による中止は明らかに少ない」とは言えますが、「あらゆる意味でアトゲパントのほうが安全」と単純化するべきではありません。


結果まとめ

評価項目アトゲパントトピラマート効果量
TEAEによる中止12%30%RR 0.4(95%CI 0.3–0.6)
≥50% MMD減少64%39%RR 1.6(95%CI 1.4–2.0)
MMD変化−6.3日−4.5日差 −1.8日(95%CI −2.5 ~ −1.0)
TAE56%78%
重篤なTAE6例3例
死亡00

3つの主要な結果はいずれもアトゲパント群に有利でした。


批判的吟味:試験の限界

1.AbbVieによる資金提供

TEMPLE試験のfunding(資金提供)はAbbVieです。これは研究結果が不正確であることを意味するわけではありません。実際、本研究はランダム化、二重盲検、ダブルダミー、実薬対照という強固なデザインです。

しかし、アトゲパントを開発する企業が資金提供している試験である以上、結果の選択・解析・報告を含め、独立した研究による再現性も重要になります。

少なくとも、利益相反を踏まえて解釈する必要があります。

2.96%が白人

安全性評価集団 540例のうち、517例(96%)が白人でした。また89%が女性です。片頭痛は女性に多い疾患であるため女性が多いこと自体は理解できますが、異なる人種・民族集団や男性にも同程度の効果・忍容性が得られるかという外的妥当性には限界があります。

特に日本人への直接的な一般化には慎重さが必要です。

3.「中止が少ない」ことと「完全に安全」は別

主要評価項目は、有害事象による治療中止です。これは非常に患者中心的で実用的なアウトカムですが、安全性全体を表す指標ではありません。

実際、重篤なTAEは6例 vs 3例であり、アトゲパント群では薬剤関連と判断されたアナフィラキシーも1例ありました。

したがってTEMPLE試験は「アトゲパントのほうが忍容性が良かった」ことを強く支持しますが、「アトゲパントのほうが重篤有害事象を含めて安全性全般で優れている」とまで断定できる結果ではありません。

4.トピラマートは「最高忍容量」で比較されている

トピラマート群は50、75または100 mg/日の高用量・認容量です。これは実臨床を考えれば合理的な設計です。一方で、全員が100 mg/日を投与されたわけではありません。

したがって本研究は、アトゲパント60 mg固定用量 vs 忍容性に合わせて調節するトピラマート治療戦略」の比較として考える方が適切です。

5.有効性の差には「続けやすさ」も影響した可能性

トピラマート群では約30%がTAEにより治療を中止しています。対してアトゲパント群は12%です。そのため、24週間の有効性の差には、薬そのものの効果+治療を継続できたことの両方が影響している可能性があります。

ただし、これは必ずしも欠点ではありません。慢性疾患の予防治療では、「効果はあるが続けられない」薬より、「効果があり、継続もできる」薬のほうが実臨床では有用だからです。

したがってTEMPLEは「純粋な薬効比較」というより、治療戦略としてのeffectivenessに近い重要な情報を提供しているとも解釈できます。

6.完全なITT解析ではない

有効性解析はmodified intention-to-treat(mITT)です。少なくとも1回の投与に加えて、評価可能なbaseline eDiary、少なくとも1期間の評価可能なpostbaseline eDiaryなどを必要とします。

実際、50% responder解析は、アトゲパント270例、トピラマート257例であり、ランダム化545例全員ではありません。

除外数は大きくありませんが、厳密なfull ITTとは異なる点には注意が必要です。

7.追跡期間は24週間

二重盲検比較は約6カ月です。片頭痛予防薬はさらに長期間使用することがあります。したがって、1年以上の継続率、長期的有効性、長期安全性、長期間使用後の中止について、今回の24週間の結果だけでは判断できません。

52週間のopen-label期間が設定されていますが、論文発表時には進行中です。

さらにopen-labelになるため、24週間のランダム化二重盲検比較と同じエビデンス強度ではありません。

8.トピラマートに勝った=すべての予防薬より優れている、ではない

本試験の比較対象はトピラマートです。したがって、「アトゲパントはすべての片頭痛予防薬より優れている」とは言えません。

他の従来型予防薬や別のCGRP関連治療との優劣については、別の直接比較エビデンスが必要です。


この研究を臨床でどう考えるか?

TEMPLE試験の価値は、単純なプラセボ対照試験ではなく、「実際にどちらの経口予防薬を選択するか?」という日常診療の疑問に答えるhead-to-head RCTであることです。

結果はかなり明瞭でした。「効くか」だけでなく「続けられるか」まで含めて、24週間ではアトゲパントがトピラマートを上回ったと整理できます。

一方で、薬剤選択には本試験だけでは評価できない費用、アクセス、患者背景、妊娠可能性、併存疾患、過去の治療歴なども関係します。

TEMPLE試験は非常に重要な直接比較エビデンスですが、「全患者にアトゲパントが最適」と証明した研究ではありません。

まとめ

TEMPLE試験は、アトゲパントとトピラマートを直接比較したPhase 3b二重盲検RCTです。

最大のポイントは以下です。

有害事象による中止:12% vs 30%
RR 0.4(95%CI 0.3–0.6)

50%以上MMD減少:64% vs 39%
RR 1.6(95%CI 1.4–2.0)

月間片頭痛日数:−6.3 vs −4.5日
群間差 −1.8日/月(95%CI −2.5~−1.0)

いずれもアトゲパントに有利でした。

特に、主要評価項目を「有害事象による中止」としたことで、「実際に薬を続けられるか」という片頭痛予防治療の重要な問題を正面から評価した点が、この研究の大きな特徴です。

一方、AbbVie資金提供、96%が白人、24週間という期間、mITT解析、トピラマートの高い中止率などを考慮して解釈する必要があります。

総合すると「アトゲパント60 mg/日は、トピラマート50~100 mg/日と比較して、24週間の片頭痛予防治療において忍容性・有効性の両面で優れていた」というのが、現時点で最も研究結果に忠実な結論でしょう。

抗CGRP注射剤や経口剤との比較が待たれるところです。再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、アトゲパント60mgを1日1回投与した場合、24週間の投与期間において、トピラマートと比較して忍容性と有効性が優れていた。

根拠となった試験の抄録

背景: アトゲパントなどの経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬は、片頭痛の予防治療薬として承認されていますが、従来の経口非特異的予防治療薬と直接比較されたことはありません。トピラマートは、片頭痛に対する広く使用されている従来の経口非片頭痛特異的予防治療薬ですが、忍容性が低いため使用が制限されることがよくあります。本研究では、片頭痛を有する成人におけるアトゲパントとトピラマートの忍容性、安全性、および有効性を評価し、治療選択に役立つ直接的な比較エビデンスを提供することを目的としました。

方法: TEMPLEは、12か国(オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、フランス、ドイツ、ハンガリー、イスラエル、イタリア、ポーランド、ポルトガル、英国)の片頭痛の診断と治療の経験がある施設で実施された、24週間の二重盲検治療期間と52週間の非盲検治療期間からなる第3b相、無作為化、二重ダミー、実薬対照試験でした。参加者は片頭痛の既往歴があり、スクリーニング前の3か月間とスクリーニングおよびベースライン期間を合わせた期間中に、平均して月に少なくとも4日の片頭痛がありました。参加者は、インタラクティブ応答技術を使用して、アトゲパント(1日1回60mg)またはトピラマート(1日50mg、75mg、または100mgの最大耐用量)に1:1で無作為に割り付けられました。主要評価項目は、安全性評価対象集団(二重盲検期間中に治験薬を1回以上投与されたすべての参加者)において、二重盲検期間中に治療中に発生した有害事象による治療中止を測定することにより、忍容性を評価しました。臨床的有効性に関連する副次的有効性評価項目は、修正ITT集団(治験薬を1回以上投与され、評価可能なベースライン期間のeDiaryデータがあり、治験薬の初回投与後24週間以内(1ヶ月目から6ヶ月目)に評価可能なベースライン後4週間(1ヶ月目)のeDiaryデータが1つ以上ある、無作為化されたすべての参加者。治験薬投与中か非投与中かは問わない)における、4~6ヶ月目の平均月間片頭痛日数のベースラインからの50%以上の減少、および平均月間片頭痛日数のベースラインからの変化でした。 TEMPLE試験はClinicalTrials.gov(NCT05748483)およびEU臨床試験登録簿(2022-501172-25-00)に登録されており、二重盲検期間は終了し、非盲検期間が進行中です。

結果: 2023年10月7日から2025年4月28日の間に、730名の参加者がスクリーニングされ、545名がランダムに割り付けられ、540名(女性479名[89%]、男性61名[11%]、白人517名[96%])が安全性解析対象集団に含まれた(アトゲパント群 n=273、トピラマート群 n=267)。24週間の二重盲検期間中に治療中に発生した有害事象による投与中止は、トピラマート群(267名中79名[30%])と比較してアトゲパント群(273名中33名[12%])で少なかった(相対リスク[RR]0.4、95%信頼区間0.3~0.6、p<0.0001)。治療に関連する有害事象は、アトゲパント群の273名中153名(56%)、トピラマート群の267名中208名(78%)で報告された。重篤な治療関連有害事象は、アトゲパント群で6名、トピラマート群で3名に発生した。重篤な治療関連有害事象のうち1件(アトゲパント群におけるアナフィラキシー反応)は、治験薬との関連が認められた。死亡例はなかった。アトゲパント群では、トピラマート群(39% [257人中101人]、相対リスク1.6、95%信頼区間1.4~2.0、p<0.0001)と比較して、月平均片頭痛日数が50%以上減少した参加者の割合が64%(270人中173人)と高かった。また、ベースラインからの月平均片頭痛日数の減少は、トピラマート群(-4.5 [0.3]、治療差-1.8 [-2.5~-1.0]、p<0.0001)よりもアトゲパント群(最小二乗平均-6.3 [標準誤差0.3])の方が大きかった。

解釈: アトゲパント60mgを1日1回投与した場合、24週間の投与期間において、トピラマートと比較して忍容性と有効性が優れていた。トピラマートとアトゲパントはいずれも経口片頭痛予防薬として有効性が確立されているが、臨床現場での有用性は患者の治療耐性に大きく左右される。今回の研究結果は、臨床医が患者に最適な予防療法を選択する際の指針となる直接的な比較エビデンスを提供するものである。

資金提供: アッヴィ

引用文献

Tolerability, safety, and efficacy of atogepant versus topiramate in adults with migraine (TEMPLE): a randomised, head-to-head, phase 3b trial
Uwe Reuter et al. PMID: 42492556 DOI: 10.1016/S1474-4422(26)00214-0
Lancet Neurol. 2026 Jul 23:S1474-4422(26)00214-0. doi: 10.1016/S1474-4422(26)00214-0. Online ahead of print.
― 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42492556/

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