薬剤師による処方レビューは減薬につながる?

ポリファーマシー 多剤併用 polypharmacy
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― 75歳以上の高齢者を対象としたクラスターランダム化比較試験(Age Ageing. 2026)

臨床疑問

10剤以上を使用している75歳以上の高齢者に対して、訓練を受けた薬剤師が減薬に焦点を当てた薬物治療レビューを実施すると、通常ケアに比べて薬剤の中止・減量を増やせるのか?

研究の背景

高齢者では複数の疾患を抱えることが多く、治療の追加に伴って薬剤数も増加します。特に多数の薬剤を併用する「ハイパーポリファーマシー」は、薬物有害事象、服薬間違い、転倒、入院などのリスクと関連します。

一方、処方薬を単純に減らせばよいわけではありません。必要な薬まで中止すると、疾患の悪化や離脱症状を招く可能性があります。したがって、患者の治療目標、期待できる利益、潜在的な有害性を再評価しながら、医療者の管理下で減量または中止する「デプレスクライビング Deprescribing(減薬)」が求められます。

本研究では、服用時点ごとに薬剤をまとめて包装・供給するmultidose drug dispensing(MDD)システムを利用している高齢者を対象に、薬剤師主導・医師および患者協働型の薬物治療レビューの効果を検証しました。

PICO

項目内容
P:患者オランダの地域在住者で、75歳以上、10剤以上の慢性期薬剤を使用し、MDDシステムを利用している患者
I:介入訓練を受けた地域薬局薬剤師による、減薬に焦点を当てたclinical medication review(CMR)
C:比較薬局における通常ケア
O:主要評価項目6カ月後までに減量または中止された薬剤数/患者
O:副次評価項目総薬剤数、健康問題、健康関連QOL(EQ-5D-5L、EQ-VAS)

試験デザイン

本研究は、オランダの地域薬局58施設を対象とした実践的クラスターランダム化比較試験です。

患者単位ではなく薬局単位で介入群と通常ケア群に割り付けることで、同じ薬局内で介入内容が通常ケアに混入することを防いでいます。

  • 介入薬局:29施設
  • 対照薬局:29施設
  • 登録患者:318人
    • 介入群:155人
    • 対照群:163人
  • 観察期間:6カ月
  • 解析方法:薬局内の患者の類似性を考慮した一般化線形混合モデル

介入群の薬剤師は1日間の対面研修を受け、薬剤別の減薬資料などが入ったツールボックスを使用しました。レビューでは、患者の目標や希望の確認、薬物療法上の問題点の分析、医師との協議、患者との治療計画の共有、減薬後のモニタリングが行われました。

つまり、薬剤師が独断で薬を中止する介入ではなく、患者・薬剤師・医師による協働型のプロセスです。

試験結果から明らかになったことは?

主要アウトカム

評価項目介入群通常ケア群群間差等
減量または中止された薬剤数2.5剤/人1.7剤/人平均差 0.79剤
(95%CI 0.29~1.28)
P=0.002
ベースライン薬剤数に対する割合20.7%14.4%介入群で多い
減量された薬剤数0.9剤/人0.4剤/人記述的には介入群で多い
中止された薬剤数1.6剤/人1.3剤/人記述的には介入群で多い
新たに開始された薬剤数1.3剤/人1.4剤/人おおむね同程度
総薬剤数の変化−0.30剤+0.12剤調整群間差 −0.35剤
(95%CI −0.78 ~ 0.08)
P=0.108
健康問題有意な群間差なし
EQ-5D-5L・EQ-VAS有意な群間差なし

訓練を受けた薬剤師によるCMRによって、減量または中止された薬剤は、通常ケアよりも患者1人当たり平均0.79剤多くなりました。

一方、6カ月後の総薬剤数には、統計学的に有意な群間差が認められませんでした。

「減薬は増えたのに総薬剤数は減らなかった」、どのように解釈する?

この結果は必ずしも矛盾していません。第一に、主要評価項目には「完全な中止」だけでなく「用量の減量」も含まれます。用量を減らしても、その薬剤は引き続き総薬剤数に数えられます。

第二に、観察期間中には新しい疾患や症状への対応などにより、介入群で1.3剤、通常ケア群で1.4剤の薬剤が新たに開始されていました。

したがって、本介入は薬剤数を一方向に減らすというより、不要または過量となった治療を見直しながら、必要な治療は追加する「薬物療法の最適化」と捉えるべきでしょう。

批判的吟味:試験の限界

1.主要評価項目は患者にとっての臨床アウトカムではない

主要評価項目は「減量・中止された薬剤数」というプロセス指標です。

薬剤数を減らせたこと自体は重要ですが、それによって薬物有害事象、転倒、救急受診、入院、死亡などが減少したかは示されていません。したがって、本研究から「減薬によって患者の予後が改善した」とは結論できません。

2.効果量は比較的小さい

介入による上乗せ効果は、患者1人当たり平均0.79剤でした。

統計学的には有意ですが、この差がどの程度の臨床的利益をもたらすのかは不明です。また、重要度の異なる薬剤の中止・減量が同じ「1剤」として数えられています。

3.健康問題やQOLに差がないことは、安全性の証明ではない

健康問題やQOLに有意差はありませんでしたが、この研究は臨床的安全性の同等性や非劣性を証明するよう設計された試験ではありません。

観察期間も6カ月であり、長期的な疾患悪化、処方再開、有害事象などを十分に検出できない可能性があります。「差がなかった」ことを「減薬は安全だった」と断定することはできません。

4.盲検化されていない

介入の性質上、薬剤師と患者を盲検化することはできませんでした。正式なアウトカム評価者の盲検化も行われていません。

主要評価項目には比較的客観的な調剤データが使用されていますが、介入群であることを知っている医療者の行動変化や、評価上の影響を完全には除外できません。

5.薬局の割り付け後に患者を募集している

薬局が介入群か通常ケア群か決まった後に、各薬局の薬剤師が対象患者へ参加を依頼しました。

そのため、介入内容を知っている薬剤師が、レビューに向いていそうな患者や減薬しやすそうな患者を選択した可能性があります。クラスター試験で問題になりやすい募集段階の選択バイアスです。

6.一般化可能性には注意が必要

対象はオランダの地域在住高齢者で、MDDを利用し10剤以上を服用している患者です。認知機能障害のある患者、介護施設入所者、余命6カ月以下の患者などは除外されました。

また、参加薬剤師は研究参加や減薬に関心の高い集団だった可能性があります。医師との連携方法や処方権限、調剤報酬制度が異なる日本で、同程度の効果が得られるとは限りません。

7.通常ケア群でも一定の減薬が行われている

通常ケア群でも患者1人当たり1.7剤が減量または中止されました。

もともと減薬への関心が高い医療環境だった可能性や、研究参加によって医療者の行動が変化するホーソン効果が考えられます。その結果、介入と通常ケアの差が小さくなった可能性があります。

まとめ

訓練を受けた薬剤師による減薬特化型CMRは、75歳以上で10剤以上を服用する患者において、6カ月間に減量・中止される薬剤を患者1人当たり平均0.79剤増やしました。

ただし、総薬剤数、健康問題、QOLには有意な群間差がありませんでした。

したがって、本研究が示したのは「薬剤師による体系的レビューは減薬の実施を促進できる」という点です。「薬剤数そのものを減らす」、「QOLを改善する」、「有害事象や入院を防ぐ」ところまでは証明されていません。

臨床では薬剤数だけを目標にせず、個々の薬剤について、治療目的、期待できる利益、患者の希望、有害性、減薬後のモニタリング方法を確認することが重要です。この他にも、治療にかかるコストや長期的なハードアウトカムの発生状況など、さまざまな角度から医療業界全体への影響について検証する必要があると考えます。

再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

pills in organizer

✅まとめ✅ クラスターランダム化比較試験の結果、臨床薬剤レビューは、MDDシステムを使用する多剤併用の高齢患者において、薬剤の減量と中止を効果的に増加させたが、6か月間にわたって健康問題や健康関連の生活の質に変化は見られなかった。

根拠となった試験の抄録

背景: 多剤併用は、薬物有害事象や予防可能な入院のリスクを高めます。薬剤の減量・中止は、薬剤関連の害を軽減する可能性があり、臨床薬剤レビュー(CMR)はこれを支援する機会となります。

目的: 訓練を受けた薬剤師による減薬に焦点を当てたCMRが、多剤併用療法を受けている75歳以上の患者において、多剤投与システム(MDD:主に高齢者向け一包化の外注)を使用して、減量および中止された薬剤の数に及ぼす影響を調査する。

方法: このクラスター無作為化比較試験では、薬剤師は減薬に焦点を当てたCMRを実施するよう訓練され、対照薬局は通常のケアを提供した。対象患者は75歳以上で、多剤併用療法を受けており、MDDを使用していた。調剤データを使用して、6か月後の患者1人あたりの減薬および中止された薬剤の数を決定した(主要評価項目)。副次評価項目は、薬剤の総数、健康問題、生活の質(EQ-5D-5L、EQ-VAS)であった。主要評価項目には、一般化線形混合モデルを使用した。

結果: 合計318名の患者が58の薬局から登録されました(介入群155名、対照群163名)。6か月後、介入群の患者は対照群の患者よりも有意に多くの薬剤が処方中止されました(患者1人あたり平均2.5対1.7、平均差0.79、95%信頼区間0.29~1.28、P = .002)。6か月後の薬剤総数には群間差は認められませんでした(介入群-0.30対対照群+0.12、P = .108)。健康問題や生活の質にも有意差は認められませんでした。

結論: 訓練を受けた薬剤師による減薬に焦点を当てたCMRは、MDDシステムを使用する多剤併用の高齢患者において、薬剤の減量と中止を効果的に増加させたが、6か月間にわたって健康問題や健康関連の生活の質に変化は見られなかった。

キーワード:( 過剰)多剤併用;減薬;服薬見直し;高齢者;ランダム化比較試験

引用文献

Deprescribing in older patients with hyperpolypharmacy: a cluster-randomised trial in primary care
Gert Baas et al. PMID: 42472621 PMCID: PMC13381036 DOI: 10.1093/ageing/afag209
Age Ageing. 2026 Jul 2;55(7):afag209. doi: 10.1093/ageing/afag209.
― 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42472621/

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