― NEO-MINDSET試験から得られたものとは?
DAPT後のSAPTではアスピリンを中止した方が良いのか?
急性冠症候群(ACS)に対するPCI後の標準治療は、アスピリン+P2Y12阻害薬の二重抗血小板療法(DAPT)です。
しかし出血リスクの観点から、近年はアスピリンを早期中止し、強力P2Y12阻害薬単剤にする戦略が注目されています。
今回ご紹介するランダム化比較試験は、この戦略の有効性と安全性を検証したNEO-MINDSET試験です。
試験結果から明らかになったことは?
◆PICO
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| P(対象) | ACSでPCI成功後の患者 |
| I(介入) | 早期にアスピリン中止し、強力P2Y12阻害薬単剤(チカグレロルまたはプラスグレル) |
| C(比較) | 標準DAPT(アスピリン+強力P2Y12阻害薬) |
| O(主要評価項目) | ①死亡・MI・脳卒中・緊急再血行再建の複合(非劣性検証) ②大出血または臨床的意義のある非大出血(優越性検証) |
◆研究デザイン
- 多施設オープンラベルRCT(ブラジル)
- PCI成功後、入院4日以内に割付
- 追跡期間:12か月
- ITT解析:3410例
- 単剤群:1712例
- DAPT群:1698例
◆試験結果
主要虚血イベント
| 指標 | 単剤群 | DAPT群 | 絶対差 (95%CI) |
|---|---|---|---|
| 主要虚血イベント | 7.0% | 5.5% | +1.47% (−0.16 ~ 3.10) 非劣性p値=0.11 |
→ 非劣性は証明されなかった
出血イベント
| 指標 | 単剤群 | DAPT群 | 絶対差 (95%CI) |
|---|---|---|---|
| 大出血または臨床的意義のある出血 | 2.0% | 4.9% | −2.97% (−4.20 ~ −1.73) |
→ 出血は単剤群で少なかった
ステント血栓症
| 指標 | 単剤群 | DAPT群 |
|---|---|---|
| ステント血栓症 | 12例 | 4例 |
→ 単剤群で多かった
研究から分かること
- P2Y12単剤療法は虚血イベントに対してDAPTの非劣性を示せなかった
- 出血イベントは単剤療法で少なかった
- ステント血栓症は単剤群で多かった
試験の限界
本研究には臨床解釈に影響する重要な制約があります。
1. オープンラベル試験
盲検化されておらず、治療・評価バイアスの可能性があります。
2. 地域的偏り
ブラジルのみの研究であり、医療体制・背景リスクが他地域と異なる可能性があります。
3. イベント数が比較的少ない
虚血イベントが少なく、非劣性検証に十分な統計的検出力が不足した可能性があります。
4. 薬剤選択が統一されていない
チカグレロルとプラスグレルが混在しており、薬剤間差の影響を評価できません。
5. 高リスク患者の層別解析不足
糖尿病、複雑病変、高齢者などでのサブグループ効果は十分検証されていません。
臨床的示唆
本試験から得られる現時点での実務的な示唆は以下です。
- PCI後ACS患者では、アスピリン早期中止(DAPT4日後の中止)は標準治療を置き換える根拠にはならない
- 出血リスクが高い患者では単剤戦略の検討余地あり
- ステント血栓症増加の可能性には注意が必要
つまり、
👉 「DAPT短縮=常に安全」ではない
という重要なメッセージを示した試験といえます。
まとめ
NEO-MINDSET試験では、
- P2Y12単剤療法は虚血イベントに対してDAPTに非劣性を示せなかった
- 出血は減少した
- ステント血栓症は増加した
という結果でした。
したがって現時点では、ACS後PCI患者の標準治療は依然としてDAPTと考えるのが妥当です。
これまでの試験結果を踏まえると、少なくとも3か月のDAPTは必要そうです。さすがにDAPT開始してから4日後の中止は早すぎるようです。最適なDAPT期間の解明が求められます。
続報に期待。

✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、急性冠症候群に対するPCIが成功した患者において、強力なP2Y12阻害剤単独療法は、12か月時点での死亡または虚血性イベントの複合に関して、抗血小板療法2剤併用療法に対して非劣性を示せなかった。
根拠となった試験の抄録
背景: 経皮的冠動脈インターベンション (PCI) が成功した直後に開始されるアスピリンを含まない強力な P2Y12 阻害剤単独療法が、急性冠症候群の患者に有効かつ安全であるかどうかは不明である。
方法: ブラジルにおいて、PCIが成功した急性冠症候群患者を対象とした多施設共同、非盲検、無作為化試験を実施した。患者は入院後4日以内に、アスピリン投与を中止し、強力なP2Y12阻害薬単剤療法(チカグレロルまたはプラスグレル)を受ける群、または2剤併用抗血小板療法(アスピリンと強力なP2Y12阻害薬)を受ける群に1:1の割合で割り付けられた。12ヶ月間評価された2つの主要評価項目は、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、または緊急標的血管血行再建術(非劣性検定、非劣性マージン2.5パーセントポイント)と、重大または臨床的に重要な非重大出血(優越性検定)の複合であった。
結果: 計3,410例が治療意図集団(ITT)に含まれた(単剤療法群1,712例、抗血小板薬2剤併用療法群1,698例)。12ヵ月時点で、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、または緊急血行再建術は、単剤療法群で119例(カプラン・マイヤー法推定値7.0%)、抗血小板薬2剤併用療法群で93例(カプラン・マイヤー法推定値5.5%)に認められた(絶対リスク差1.47パーセントポイント、95%信頼区間[CI]-0.16~3.10、非劣性のP = 0.11)。重大出血または臨床的に重要な非重大出血は、単剤療法群で33例(カプラン・マイヤー法による推定値2.0%)、抗血小板薬2剤併用療法群で82例(カプラン・マイヤー法による推定値4.9%)に認められました(絶対リスク差-2.97パーセントポイント、95%信頼区間-4.20~-1.73)。ステント血栓症は、単剤療法群で12例、抗血小板薬2剤併用療法群で4例に認められました。
結論: 急性冠症候群に対するPCIが成功した患者において、強力なP2Y12阻害剤単独療法は、12か月時点での死亡または虚血性イベントの複合に関して、抗血小板療法2剤併用療法に対して非劣性であるとは認められなかった。
資金提供: ブラジル保健省
試験登録番号: ClinicalTrials.gov番号 NCT04360720
引用文献
Early Withdrawal of Aspirin after PCI in Acute Coronary Syndromes
Patricia O Guimarães et al. PMID: 40888723 DOI: 10.1056/NEJMoa2507980
N Engl J Med. 2025 Nov 27;393(21):2095-2106. doi: 10.1056/NEJMoa2507980. Epub 2025 Aug 31.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40888723/

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