心血管有効性と安全性に優れる糖尿病治療薬はどれか?(RCTのメタ解析; Diabetes Obes Metab. 2023)

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心血管合併症を予防するための血糖降下薬はどれが良いのか?

糖尿病は高血糖状態を特徴とする疾患であり、末梢神経障害や網膜症、腎症などの微小血管合併症、脳卒中や心筋梗塞などの大血管合併症を引き起こすことが報告されています。治療薬として血糖降下薬が使用されていますが、重要な特徴・役割としては心血管合併症を予防することです。しかし、血糖降下薬間の比較は充分に行われていません。

そこで今回は、血糖降下薬の心血管系への有効性と一般的な安全性を検討することを目的に実施されたネットワークメタ解析の結果をご紹介します。

本試験の対象は、100人以上の参加者を含み、抗糖尿病薬とプラセボまたは別の抗糖尿病薬とを比較し、主要心血管有害事象(MACE)を報告した、あるいは主に心不全を報告した多施設共同ランダム化比較試験でした。PubMed、Embase、Cochraneの各データベースで検索されました。データはランダム効果ネットワークメタ解析のために独立に抽出され、ハザード比推定値が算出されました。

試験結果から明らかになったことは?

9種類の血糖降下薬を比較した43試験が本解析の対象となりました。

3ポイントMACEリスク
vs. プラセボあるいはDPP-4阻害薬
特徴
GLP-1 RAリスク減少心血管系と腎臓の転帰に有利
SGLT-2isリスク減少腎転帰を〜40%低下させる
(他の血糖降下薬よりも優れる)
チアゾリジン系薬剤リスク減少・心不全による入院のリスクを増加
・死亡率には効果がない

グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)、ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害薬(SGLT-2is)、チアゾリジン系薬剤は、プラセボ、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)-4阻害薬、インスリン療法と比較して、3ポイントMACEリスクを減少させました。

GLP-1 RAは心血管系と腎臓の転帰に有利でした。SGLT-2は腎転帰を〜40%低下させ、他の血糖降下薬よりも優れていました。チアゾリジン系薬剤は心不全による入院のリスクを増加させ、死亡率には効果がありませんでした。

投与中止に至る有害事象はGLP-1 RAとチアゾリジン系薬剤でプラセボより高いことが示されました。

コメント

血糖降下薬は血糖降下作用を有していますが、より患者転帰に影響が大きい心血管イベントのリスク低減を示す薬剤が求められています。

さて、ランダム化比較試験を対象としたネットワークメタ解析の結果、GLP-1受容体作動薬、GLP-1受容体作動薬およびチアゾリジン系薬剤は他の血糖降下薬と比較して3ポイント主要心血管有害事象を減少させました。ただし、チアゾリジン系薬剤は心不全による入院のリスクを増加させ、死亡率には効果がありませんでした。したがって、チアゾリジン系薬剤をGLP-1受容体作動薬やSGLT-2阻害薬よりも優先して使用する意義は低いと考えられます。

GLP-1受容体作動薬やGLP-1受容体作動薬は患者転帰に優れた効果を示す一方で、それぞれ副作用を有していることから、どのような患者に適用させるのか慎重に検討する必要があると考えられます。

これまでの報告と同様であることから結果の一貫性・堅牢性が示されたことになりますが、組み入れられた試験の情報が古くなることから、ネットワークメタ解析は定期的に更新される必要があります。引き続き追っていきたいテーマです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ GLP-1受容体作動薬、SGLT-2阻害薬およびチアゾリジン系薬剤は他の血糖降下薬と比較して3ポイント主要心血管有害事象を減少させた。ただし、チアゾリジン系薬剤は心不全による入院のリスクを増加させ、死亡率には効果がなかった。

根拠となった試験の抄録

目的:血糖降下薬の重要な特徴は、心血管合併症を予防することである。われわれは血糖降下薬の心血管系への有効性と一般的な安全性を検討することを目的とした。

材料と方法:100人以上の参加者を含み、抗糖尿病薬とプラセボまたは別の抗糖尿病薬とを比較し、主要心血管有害事象(MACE)を報告した、あるいは主に心不全を報告した多施設共同ランダム化比較試験をPubMed、Embase、Cochraneの各データベースで検索した。データはランダム効果ネットワークメタ解析のために独立に抽出され、ハザード比推定値が算出された。

結果:9種類の血糖降下薬を比較した43試験が本解析の対象となった。グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)、ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害薬(SGLT-2is)、チアゾリジン系薬剤は、プラセボ、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)-4阻害薬、インスリン療法と比較して、3点MACEリスクを減少させた。GLP-1 RAは心血管系と腎臓の転帰に有利であった。SGLT-2は腎転帰を〜40%低下させ、他の血糖降下薬よりも優れていた。チアゾリジン系薬剤は心不全による入院のリスクを増加させ、死亡率には効果がなかった。投与中止に至る有害事象はGLP-1 RAとチアゾリジン系薬剤でプラセボより高かった。

結論:GLP-1受容体作動薬、SGLT-2阻害薬およびチアゾリジン系薬剤は他の血糖降下薬と比較して3ポイントMACEを減少させた。各薬剤はそれぞれ長所と短所を有していた。

キーワード:副作用、血糖降下薬、主要有害心イベント、ネットワークメタ解析、腎アウトカム、チアゾリジンジオン

引用文献

Cardiovascular efficacy and safety of antidiabetic agents: A network meta-analysis of randomized controlled trials
Minji Sohn et al. PMID: 37649320 DOI: 10.1111/dom.15251
Diabetes Obes Metab. 2023 Aug 30. doi: 10.1111/dom.15251. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37649320/

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