2型糖尿病における血糖コントロールと大血管および微小血管転帰に優れる薬剤とは?(RCTのSR&MA; Diabetes Obes Metab. 2024)

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血糖低下薬の血管転帰への影響は?SGLT-2阻害薬 vs. GLP-1RA vs. DPP-4阻害薬

糖尿病は、血管内皮細胞の機能低下に続く種々の血管合併症の発症により、健常人と比較して寿命が短くなることが知られています。糖尿病治療における血糖コントロールは、目標範囲に収まるように行われますが、これはあくまでも手段です。本来の目的は、健常な人と変わらない生活を送るようにすること、予後短縮を先送りするための手段に他なりません。しかし、糖尿病治療薬ごとの患者予後への影響については、質の高いデータが不足しています。

そこで今回は、比較的新しい糖低下薬[ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害薬(SGLT-2is)、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬(DPP-4is)]のプラセボ対照心血管系アウトカム試験(CVOT)を対象に、系統的レビューとメタ解析を行うことで、 2型糖尿病(T2D)における大血管および細小血管の転帰を明らかにし、糖化ヘモグロビン(HbA1c)低下とこれらの転帰のリスクとの関係を明らかにすることを目的とした試験の結果をご紹介します。

本試験では2023年9月までMEDLINE、Embase、Cochrane Libraryからランダム化対照試験が同定されました。95%信頼区間(CI)付きの試験特異的ハザード比がプールされ、メタ回帰を用いて転帰と試験群間のHbA1c低下との関係が評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

T2D患者 169,513例を対象とした20件のユニークなCVOT(SGLT-2is:6件、GLP-1RA:9件、DPP-4is:5件)が適格でした。

3ポイントの主要有害心血管イベントのハザード比 HR
vs. プラセボ
SGLT-2isHR 0.88(0.82〜0.94
GLP-1RAHR 0.85(0.79〜0.92
DPP-4isHR 1.00(0.94〜1.06

SGLT-2is、GLP-1RA、DPP-4isをプラセボと比較すると、3ポイントの主要有害心血管イベントのハザード比(95%CI)はそれぞれ0.88(0.82〜0.94)、0.85(0.79〜0.92)、1.00(0.94〜1.06)でした。SGLT-2isとGLP-1RAはいくつかの大血管および微小血管合併症、特に腎イベントのリスクを一貫して減少させました。一方、DPP-4isは大血管への有益性を示しませんでした。

HbA1c低下と3ポイントの主要有害心血管イベントリスク(HbA1c低下1%当たりの推定リスク:0.84、95%信頼区間 0.67〜1.06、p=0.14、R2=14.2%)の間には逆直線関係の潜在的証拠があり、これは非致死的脳卒中(R2=100.0%、p=0.094)の成分によってもたらされました。HbA1c低下といくつかの血管転帰のリスクとの間には有意ではない逆直線関係がみられました。

コメント

長きに渡り糖尿病治療薬の開発が進められています。比較的新しい薬剤であるSGLT-2is、GLP-1RA、DPP-4isによる患者予後への影響、特に心血管イベントに対する効果については大規模臨床試験で検証された結果が主であり、定期的な結果の統合解析が求められています。

さて、ランダム化比較試験20件を対象としたメタ解析の結果、プラセボと比較して、SGLT-2isとGLP-1RAは大血管転帰と微小血管転帰において一貫したリスク減少を示しました。しかし、DPP-4isは大血管への有益性を示しませんでした。

おそらくですが、大規模臨床試験の影響が大きいことから、新たな知見は得られませんでした。これまでの報告と同様、心血管イベントに関連する患者予後への影響が大きいのはSGLT-2is、そしてGLP-1RAであることは間違いなさそうです。しかし、患者を取り巻く環境、併用薬の変化等により、薬剤が及ぼす影響の大きさは変化します。このため、定期的な結果の統合解析が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験20件を対象としたメタ解析の結果、SGLT-2isとGLP-1RAは大血管転帰と微小血管転帰において一貫したリスク減少を示した。

根拠となった試験の抄録

目的:新しい糖低下薬[ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害薬(SGLT-2is)、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬(DPP-4is)]のプラセボ対照心血管系アウトカム試験(CVOT)の系統的レビューとメタ解析を用いた、 ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬(DPP-4is)]の2型糖尿病(T2D)における大血管および細小血管の転帰を明らかにし、糖化ヘモグロビン(HbA1c)低下とこれらの転帰のリスクとの関係を明らかにすることを目的とした。

材料と方法:2023年9月までMEDLINE、Embase、Cochrane Libraryからランダム化対照試験を同定した。95%信頼区間(CI)付きの試験特異的ハザード比をプールし、メタ回帰を用いて転帰と試験群間のHbA1c低下との関係を評価した。

結果:T2D患者 169,513例を対象とした20件のユニークなCVOT(SGLT-2is:6件、GLP-1RA:9件、DPP-4is:5件)が適格であった。SGLT-2is、GLP-1RA、DPP-4isをプラセボと比較すると、3ポイントの主要有害心血管イベントのハザード比(95%CI)はそれぞれ0.88(0.82〜0.94)、0.85(0.79〜0.92)、1.00(0.94〜1.06)であった。SGLT-2isとGLP-1RAはいくつかの大血管および微小血管合併症、特に腎イベントのリスクを一貫して減少させた。DPP-4isは大血管への有益性を示さなかった。HbA1c低下と3ポイントの主要有害心血管イベントリスク(HbA1c低下1%当たりの推定リスク:0.84、95%信頼区間 0.67〜1.06、p=0.14、R2=14.2%)の間には逆直線関係の潜在的証拠があり、これは非致死的脳卒中(R2=100.0%、p=0.094)の成分によってもたらされた。HbA1c低下といくつかの血管転帰のリスクとの間には有意ではない逆直線関係がみられた。

結論:SGLT-2isとGLP-1RAは大血管転帰と微小血管転帰において一貫したリスク減少を示した。T2D患者におけるSGLT-2isとGLP-1RAの血管ベネフィットは単なる血糖コントロールにとどまらない。

キーワード:ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬、メタ解析、メタ回帰、ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害薬、2型糖尿病

引用文献

Glycaemic control and macrovascular and microvascular outcomes in type 2 diabetes: Systematic review and meta-analysis of cardiovascular outcome trials of novel glucose-lowering agents
Setor K Kunutsor et al. PMID: 38379094 DOI: 10.1111/dom.15500
Diabetes Obes Metab. 2024 Feb 20. doi: 10.1111/dom.15500. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38379094/

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