心血管疾患または腎疾患におけるSGLT2阻害薬と新規発症糖尿病との関連性(メタ解析; Eur Heart J. 2024)

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SGLT2阻害薬ダパグリフロジンは糖尿病の新規発症を抑制できるのか?

心不全(HF)、その他の心血管疾患、腎疾患を有する患者は、糖尿病の発症や健康への悪影響のリスクが高いことが報告されています。そのため、これらの患者では糖尿病の予防または遅延が治療の重要な優先事項です。

そこで今回は、左室駆出率(LVEF)および心血管疾患または腎疾患の広い範囲にわたって、ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2i)がHFにおける糖尿病の発症に及ぼす影響を明らかにすることを目的に実施されたメタ解析の結果をご紹介します。

本解析ではまず、DAPA-HF試験とDELIVER試験の参加者レベルのプール解析において、新規糖尿病発症に対するダパグリフロジンとプラセボの効果が評価されました。新規糖尿病発症は追跡期間中に新たに糖低下療法を開始したものと定義され、ランダム化から新規糖尿病発症までの期間はCox比例ハザードモデルにより評価されました。

次に、PubMedとEmbase検索により、心血管疾患または腎疾患を有する成人においてSGLT2iとプラセボを比較した大規模ランダム化臨床転帰試験(RCT)が同定されました。次に、新規糖尿病発症率に対するSGLT2iの治療効果を要約することを目的に、試験レベルのメタ解析が行われました。

試験結果から明らかになったことは?

糖尿病の新規発症のハザード比 HR
(95%CI)
DAPA-HFとDELIVERのプール解析
(糖尿病を発症していないHF患者5,623例)
HR 0.67
0.49~0.91
P=0.012
7件の補完的RCT
(心血管疾患または腎疾患を有する17,855例)
HR 0.74
0.65~0.85
P<0.001

DAPA-HFとDELIVERのプール解析では、ベースライン時に糖尿病を発症していないHF患者5,623例を含み、ダパグリフロジンはプラセボと比較して新規糖尿病発症率を33%減少させました[ハザード比(HR) 0.67、95%信頼区間(CI) 0.49~0.91;P=0.012]。

連続的なLVEFの範囲または主要なサブグループにわたる異質性の証拠はありませんでした。

心血管疾患または腎疾患を有する17,855人の参加者を含む7件の補完的RCTの中で、SGLT2iは糖尿病の新規発症を26%減少させ(HR 0.74、95%CI 0.65~0.85;P<0.001)、試験間で一貫した効果を示しました。

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心不全(HF)や心血管疾患、腎疾患を有する患者において、糖尿病の発症などの健康への悪影響リスクの高さが報告されています。上記のような背景を有する患者において、SGLT2阻害薬の使用が糖尿病発症リスクを低減する可能性がありますが、充分に検証されていません。

さて、メタ解析の結果、ダパグリフロジンは心血管疾患または腎疾患を有する患者における糖尿病の新規発症を減少させました。

本解析では、いずれもプラセボとダパグリフロジンとの比較であり、未治療の場合にどの程度の糖尿病発症リスクを有しているのかについては不明です。とはいえ、心血管疾患または腎疾患を有する患者におけるダパグリフロジンの使用は、プラセボと比較して、新規糖尿病の発症リスクを低減することは明らかなようです。組み入れられた試験数は10件未満ですが、症例数としては充分であると考えられます。

ただし、ダパグリフロジンの大規模試験で対象となったのは大半が白人です。アジア人においても同様の結果が示されるのかについて、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ メタ解析の結果、ダパグリフロジンは心血管疾患または腎疾患を有する患者における糖尿病の新規発症を減少させた。

根拠となった試験の抄録

背景と目的:心不全(HF)、その他の心血管疾患、腎疾患を有する患者は、糖尿病の発症や健康への悪影響のリスクが高い。そのため、これらの患者では糖尿病の予防または遅延が治療の重要な優先事項である。このメタアナリシスの目的は、左室駆出率(LVEF)および心血管疾患または腎疾患の広い範囲にわたって、ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2i)がHFにおける糖尿病の発症に及ぼす影響を明らかにすることであった。

方法:まず、DAPA-HF試験とDELIVER試験の参加者レベルのプール解析において、新規糖尿病発症に対するダパグリフロジンとプラセボの効果を評価した。新規糖尿病発症は追跡期間中に新たに糖低下療法を開始したものと定義し、ランダム化から新規糖尿病発症までの期間はCox比例ハザードモデルを用いて評価した。次に、PubMedとEmbaseを検索し、心血管疾患または腎疾患を有する成人においてSGLT2iとプラセボを比較した大規模ランダム化臨床転帰試験(RCT)を同定した。次に、新規糖尿病発症率に対するSGLT2iの治療効果を要約するために、試験レベルのメタ解析を行った。

結果:DAPA-HFとDELIVERのプール解析では、ベースライン時に糖尿病を発症していないHF患者5,623例を含み、ダパグリフロジンはプラセボと比較して新規糖尿病発症率を33%減少させた[ハザード比(HR) 0.67、95%信頼区間(CI) 0.49~0.91;P=0.012]。連続的なLVEFの範囲または主要なサブグループにわたる異質性の証拠はなかった。心血管疾患または腎疾患を有する17,855人の参加者を含む7件の補完的RCTの中で、SGLT2iは糖尿病の新規発症を26%減少させ(HR 0.74、95%CI 0.65~0.85;P<0.001)、試験間で一貫した効果を示した。

結論:SGLT2iは心血管疾患または腎疾患を有する患者における糖尿病の新規発症を減少させた。これらの所見から、SGLT2iの導入はこれらのハイリスク集団における糖尿病の予防または遅延に重要な補助的効果をもたらす可能性が示唆される。

キーワード:糖尿病;心不全;予防;ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害薬

引用文献

Sodium-glucose co-transporter 2 inhibitors and new-onset diabetes in cardiovascular or kidney disease
John W Ostrominski et al. PMID: 39568016 DOI: 10.1093/eurheartj/ehae780
Eur Heart J. 2024 Nov 21:ehae780. doi: 10.1093/eurheartj/ehae780. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39568016/

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