血液分布異常性ショック治療におけるアンギオテンシンIIの有効性は?(SR&MA; Shock. 2024)

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ノルエピネフリン不応性ショック時に対するアンジオテンシンIIの有効性は?

ノルエピネフリン不応性ショックのレスキュー療法として非ノルエピネフリン系昇圧薬が使用されるようになってきているが、その有効性に関するデータは限られています。

そこで今回は、血液分布異常性ショック(distributive shock)におけるアンジオテンシンII(アンギオテンシンII, ATII)の有効性に関する既存の文献を統合することを目的に実施された系統的レビューとメタ解析の結果をご紹介します。

メタ解析はPROSPERO(CRD42023456136)に予備登録されました。PubMed、Scopus、および灰色文献が検索され、血液分布異常性ショックにおけるATIIの使用に関する転帰を提示した研究が対象となりました。

メタ解析の主要アウトカムは全死因死亡率でした。ランダム効果モデルによりプールリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)が算出されました。

試験結果から明らかになったことは?

10件の研究に含まれる1,555例のデータを組み入れられました。

プールリスク比 RRまたはMD
(95%CI)
全死亡率RR 1.02
0.89~1.16
P=0.81
治療開始後3時間におけるノルエピネフリンまたはノルエピネフリン等価量の減少MD -0.06
-0.11 ~ -0.02
P=0.008

ATIIを受けた患者と対照群で全死亡率は同等でしたが(RR 1.02、95%CI 0.89~1.16、P=0.81)、治療開始後3時間におけるノルエピネフリンまたはノルエピネフリン等価量の減少は、ATIIを受けた患者でより大きいことが示されました(MD -0.06、95%CI -0.11 ~ -0.02、P=0.008)。

一方で、ATII患者で報告された有害事象の割合は高くありませんでした。

コメント

血液分布異常性ショック(distributive shock)は、血管内が何らかの異常により拡張した結果、相対的に循環血液量が減少して引き起こされるショックです。ショックが起きているものの、循環血液量は正常に保たれているのが特徴です。原因として、感染性ショック、アナフィラキシーショック、神経原性ショックがあげられます。治療の第一選択薬はノルアドレナリン(ノルエピネフリン)ですが、ノルエピネフリン抵抗性(不応性)ショック時には、併用薬としてエピネフリンやドブタミン、バソプレシンが選択されます。しかし、ノルエピネフリンに代わる単剤治療薬については充分に検証されていません。

さて、メタ解析の結果、アンジオテンシンIIは血液分布異常性ショック患者の死亡率を低下させませんでしたが、報告された有害事象を増加させることなく3時間後に血管圧を有意に減少させました。

カテコラミン曝露とその有害事象を最小化するために採用されつつある多剤併用血管圧制御に代わる実行可能な選択肢であると考えられます。

とはいえ、症例数は1,555例と限られておりデータが充分とはいえません。更なる検証が求められます。日本においては承認されていない点も気にかかるところです。

今後に期待。

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✅まとめ✅ メタ解析の結果、アンジオテンシンIIは血液分布異常性ショック患者の死亡率を低下させなかったが、報告された有害事象を増加させることなく3時間後に血管圧を有意に減少させた。カテコラミン曝露とその有害事象を最小化するために採用されつつある多剤併用血管圧制御に代わる実行可能な選択肢であると考えられた。

根拠となった試験の抄録

目的:ノルエピネフリン不応性ショックのレスキュー療法として非ノルエピネフリン系昇圧薬が使用されるようになってきているが、その有効性に関するデータは限られている。この系統的レビューとメタ解析の目的は、血液分布異常性ショック(distributive shock)におけるアンジオテンシンII(ATII)の有効性に関する既存の文献を統合することである。

方法:メタ解析はPROSPERO(CRD42023456136)に予備登録した。PubMed、Scopus、および灰色文献を検索し、血液分布異常性ショックにおけるATIIの使用に関する転帰を提示した研究を探した。メタ解析の主要アウトカムは全死因死亡率とした。ランダム効果モデルを用いてプールリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

結果:10件の研究に含まれる1,555例のデータを組み入れることにより、ATIIを受けた患者と対照群で全死亡率は同等であったが(RR 1.02、95%CI 0.89~1.16、P=0.81)、治療開始後3時間におけるノルエピネフリンまたはノルエピネフリン等価量の減少は、ATIIを受けた患者でより大きかった(MD -0.06、95%CI -0.11 ~ -0.02、P=0.008)一方で、ATII患者で報告された有害事象の割合は高くなかった。

結論:ATIIは血液分布異常性ショック患者の死亡率を低下させなかったが、報告された有害事象を増加させることなく3時間後に血管圧を有意に減少させることができ、カテコラミン曝露とその有害事象を最小化するために採用されつつある多剤併用血管圧制御に代わる実行可能な選択肢であると考えられた。

引用文献

ANGIOTENSIN II IN THE TREATMENT OF DISTRIBUTIVE SHOCK: A SYSTEMATIC-REVIEW AND META-ANALYSIS
Eleni Xourgia et al. PMID: 38888542 DOI: 10.1097/SHK.0000000000002384
Shock. 2024 Aug 1;62(2):155-164. doi: 10.1097/SHK.0000000000002384. Epub 2024 Jun 12.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38888542/

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