α-リポ酸(ALA)とプレガバリンの併用効果はどのくらいなのか?
非鎮静性抗酸化剤であるα-リポ酸(ALA)の補給は、いくつかの生化学的プロセスと作用に関与し、重要な抗酸化作用と抗炎症活性を発揮することで、末梢神経障害患者における痛みや麻痺症状を和らげることが報告されています。
末梢神経障害による神経障害性疼痛に対する治療薬としてカルシウムイオンチャネルのα2δサブユニットの拮抗薬としてプレガバリンが使用されていますが、ALAと鎮静性抗けいれん剤であるプレガバリンの併用効果については不明です。
そこで今回は、ALAとプレガバリンの併用療法を、それぞれの単剤療法と比較したランダム化二重盲検3期間クロスオーバー試験の結果をご紹介します。参加者はALA、プレガバリン、およびそれらの併用療法をそれぞれ6週間経口投与されました。
本試験の主要転帰は、最大忍容用量(MTD)における1日の平均疼痛強度であり、副次的転帰は、QOL(SF-36)、睡眠(Medical Outcomes Study-Sleep Scale)、副作用、薬剤投与量、その他の指標でした。
試験結果からきらかになったことは?
ランダム化された55例の参加者(糖尿病性神経障害20例、小繊維神経障害19例、その他の神経障害16例)のうち、46例が2期投与を完了し、44例が3期投与を完了しました。
最大忍容用量(MTD)における1日の平均疼痛強度(0~10) | |
ベースライン時 | 5.32(SE 0.18) |
α-リポ酸(ALA)群 | 3.96(SE 0.25) |
プレガバリン群 | 3.25(SE 0.25) |
併用群 | 3.16(SE 0.25) |
MTD時の主要評価項目である平均疼痛強度(0~10)は、ベースライン時、ALA群、プレガバリン群、併用群でそれぞれ5.32(標準誤差、SE 0.18)、3.96(SE 0.25)、3.25(SE 0.25)、3.16(SE 0.25)でした(P<0.01:ALA群 vs. 併用群 or プレガバリン群)。
糖尿病性神経障害のサブグループとその他の神経障害のサブグループでも治療法の差は同様でした。
SF-36総スコア(数値が高いほどQOLが高い)は、ALA群で66.6(SE 1.88)、プレガバリン群で70.1(SE 1.88)、併用群で69.4(SE 1.87)でした(P<0.05:ALA群 vs. 併用群 or プレガバリン群)。
MTDにおいて、副作用や薬剤投与量に統計学的に有意な治療差は認められませんでした。
コメント
抗酸化作用を有するα-リポ酸は、日本において健康食品として販売されています。別名をチオクト酸といい、疼痛緩和作用を有することから、神経障害性疼痛に対する鎮痛効果が期待されています。
さて、ランダム化二重盲検3期間クロスオーバー試験の結果、α-リポ酸とプレガバリンの併用による神経障害性疼痛の治療効果は、個々の薬剤を単独使用した場合と明確な差が得られませんでした。プラセボ群が設定されておらず、前後比較であること、症例数が少ないことから、結果の再現性が求められます。現時点については併用することの有益性はなさそうです。
続報に期待。
✅コメント✅ α-リポ酸とプレガバリンの併用による神経障害性疼痛の治療効果は、個々の薬剤を単独使用した場合と明確な差が得られなかった。
根拠となった試験の抄録
目的:末梢神経障害による神経障害性疼痛の治療において、非鎮静性抗酸化剤であるα-リポ酸(ALA)と鎮静性抗けいれん剤であるプレガバリンの併用療法を、それぞれの単剤療法と比較した。
方法:このランダム化二重盲検3期間クロスオーバー試験では、参加者はALA、プレガバリン、およびそれらの併用療法をそれぞれ6週間経口投与された。
主要転帰は、最大忍容用量(MTD)における1日の平均疼痛強度であり、副次的転帰は、QOL(SF-36)、睡眠(Medical Outcomes Study-Sleep Scale)、副作用、薬剤投与量、その他の指標であった。
結果:ランダム化された55例の参加者(糖尿病性神経障害20例、小繊維神経障害19例、その他の神経障害16例)のうち、46例が2期投与を完了し、44例が3期投与を完了した。MTD時の主要評価項目である平均疼痛強度(0~10)は、ベースライン時、ALA群、プレガバリン群、併用群でそれぞれ5.32(標準誤差、SE 0.18)、3.96(SE 0.25)、3.25(SE 0.25)、3.16(SE 0.25)であった(P<0.01:ALA群 vs. 併用群 or プレガバリン群)。糖尿病性ニューロパチーのサブグループとその他のニューロパチーのサブグループでも治療法の差は同様であった。SF-36総スコア(数値が高いほどQOLが高い)は、ALA群で66.6(1.88)、プレガバリン群で70.1(1.88)、併用群で69.4(1.87)であった(P<0.05:ALA群 vs. 併用群 or プレガバリン群)。MTDにおいて、副作用や薬剤投与量に統計学的に有意な治療差は認められなかった。
結論:本試験では、プレガバリンとALAの優越性が示されたが、α-リポ酸とプレガバリンの併用による神経障害性疼痛の治療効果を示唆するエビデンスは得られなかった。
引用文献
Randomized, double-blind, controlled trial of a combination of alpha-lipoic acid and pregabalin for neuropathic pain: the PAIN-CARE trial
Ian Gilron et al. PMID: 37678556 DOI: 10.1097/j.pain.0000000000003038
Pain. 2023 Sep 7. doi: 10.1097/j.pain.0000000000003038. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37678556/
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