2型糖尿病患者のアルブミン尿に対するエンパグリフロジンへのセマグルチド追加効果はどのくらい?( DB-RCT; Diabetes Obes Metab. 2023)

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尿中アルブミン-クレアチニン比(UACR)に対するSGLT-2i+GLP-1RA併用効果は?

2型糖尿病は腎臓病を合併することが多く、患者予後に影響を与えることから、治療戦略の確立が求められています。2型糖尿病の治療薬は多く販売されていますが、中でもナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害薬(SGLT-2i)とグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)の治療効果(患者予後への影響度)は高いとされ、診療ガイドラインの推奨で第一選択薬とされる場合もあります。しかし、これらの薬剤の併用が、腎臓病に対して有益であるかどうかについては不明です。

そこで今回は、2型糖尿病かつアルブミン尿を有する患者において、エンパグリフロジンとセマグルチドの併用療法が、エンパグリフロジン単独療法と比較して尿中アルブミン-クレアチニン比(UACR)を低下させるかどうかを検討したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

2型糖尿病およびアルブミン尿を有する60例を対象としたランダム化プラセボ対照二重盲検並行試験において、参加者全員は、26週間のrun-in期間中に、レニン・アンジオテンシン系阻害薬に加え、非盲検のエンパグリフロジン25mgを1日1回投与された。その後、参加者はセマグルチドまたはプラセボ1mgを週1回26週間投与する群にランダムに割り付けられました。

主要エンドポイントはUACRの変化でした。副次的エンドポイントは、(i)糸球体濾過量(GFR)、(ii)24時間収縮期血圧、(iii)糖化ヘモグロビン(HbA1c)値、(iv)体重、(v)血漿レニンとアルドステロン値の変化でした。

試験結果から明らかになったことは?

エンパグリフロジンにセマグルチドを追加しても、ランダム化から治療終了までUACRに変化はみられませんでした。

UACRの平均差は治療群間で-22(95%信頼区間 -44 〜 10)%(P=0.15)でした。GFR、24時間血圧、体重、血漿レニン活性はセマグルチド投与により変化しませんでした

HbA1c(-8、95%信頼区間 -13 〜 -3 mmol/mol;P=0.003)と血漿アルドステロン(-30、95%信頼区間 -50 〜 -3 pmol/L;P=0.035)はプラセボと比較してセマグルチドにより減少しました。

コメント

2型糖尿病および腎臓病を有する患者において、SGLT-2阻害薬にGLP-1受容体作動薬を追加した場合の効果に関するデータは限られています。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、エンパグリフロジンにセマグルチドを追加投与しても、2型糖尿病およびアルブミン尿を有する患者において、尿中アルブミン-クレアチニン比(UACR)、GFR測定値、24時間収縮期血圧、体重、血漿レニン値は変化しませんでした。

ただし、試験期間は26週間程度であることから、より長期的な検証が求められます。

続報に期待。

water bubbles

✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、エンパグリフロジンにセマグルチドを追加投与しても、2型糖尿病およびアルブミン尿を有する患者において、UACR、GFR測定値、24時間収縮期血圧、体重、血漿レニン値は変化しなかった。

根拠となった試験の抄録

目的:2型糖尿病(T2D)でアルブミン尿を有する患者において、エンパグリフロジン(Na-グルコース共輸送体-2阻害薬)とセマグルチド(グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬)の併用療法が、エンパグリフロジン単独療法と比較して尿中アルブミン-クレアチニン比(UACR)を低下させるかどうかを検討する。

方法:T2Dおよびアルブミン尿を有する60例を対象としたランダム化プラセボ対照二重盲検並行試験を実施した。参加者全員は、26週間のランイン期間中に、レニン・アンジオテンシン系阻害薬に加え、非盲検のエンパグリフロジン25mgを1日1回投与された。その後、参加者はセマグルチドまたはプラセボ1mgを週1回26週間投与する群にランダムに割り付けられた。
主要エンドポイントはUACRの変化であった。副次的エンドポイントは、(i)糸球体濾過量(GFR)、(ii)24時間収縮期血圧、(iii)糖化ヘモグロビン(HbA1c)値、(iv)体重、(v)血漿レニンとアルドステロン値の変化であった。

結果:エンパグリフロジンにセマグルチドを追加しても、ランダム化から治療終了までUACRに変化はみられなかった。UACRの平均差は治療群間で-22(95%信頼区間 -44 〜 10)%(P=0.15)であった。GFR、24時間血圧、体重、血漿レニン活性はセマグルチド投与により変化しなかった。HbA1c(-8、95%信頼区間 -13 〜 -3 mmol/mol;P=0.003)と血漿アルドステロン(-30、95%信頼区間 -50 〜 -3 pmol/L;P=0.035)はプラセボと比較してセマグルチドにより減少した。

結論:セマグルチドをエンパグリフロジンに追加投与しても、T2Dおよびアルブミン尿を有する患者において、UACR、GFR測定値、24時間収縮期血圧、体重、血漿レニン値は変化しなかった。セマグルチドはプラセボと比較して、血糖コントロールと血漿アルドステロン値を改善した。

キーワード:GLP-1アナログ、SGLT2阻害薬、糖尿病性腎症、無作為化試験

引用文献

Albuminuria-lowering effect of adding semaglutide on top of empagliflozin in individuals with type 2 diabetes: A randomized and placebo-controlled study
Suvanjaa Sivalingam et al. PMID: 37722966 DOI: 10.1111/dom.15287
Diabetes Obes Metab. 2023 Sep 18. doi: 10.1111/dom.15287. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37722966/

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