ASCVDイベントに対するサクビトリル-バルサルタンの効果は?
サクビトリル-バルサルタンはアンギオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)であり、心不全患者の死亡や入院のリスクを減少させることが報告されています。しかし、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)イベントの改善との関連は不明です。
そこで今回は、心不全(HF)患者におけるARNIとASCVDイベントとの関連を評価するために実施されたメタ解析の結果をご報告します。
本試験では、PubMed、Embase、Cochrane、ClinicalTrials.govにおいて、HF患者における心筋梗塞、脳卒中、狭心症、末梢動脈疾患、複合エンドポイントについてARNIとアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)またはアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を比較した研究が系統的に検索されました。
試験結果から明らかになったことは?
合計8件のランダム化比較試験が組み入れられ、17,541例がARNI群(8,764例)またはACEi/ARB群(8,777例)に割り付けられました。
リスク比 RR (95%CI) vs. ACEi or ARB | |
複合エンドポイント (心筋梗塞、脳卒中、狭心症、末梢動脈疾患) | RR 1.03 (0.93~1.13) p=0.63 |
心筋梗塞 | RR 1.02 (0.81~1.30) p=0.85 |
脳卒中 | RR 0.99 (0.85〜1.16) p=0.93 |
狭心症 | RR 0.96 (0.80〜1.17) p=0.70 |
末梢動脈疾患 | RR 1.63 (1.05〜2.52) p = 0.03 |
複合エンドポイント(リスク比[RR]1.03、95%信頼区間[CI]0.93~1.13、p=0.63)、心筋梗塞(RR 1.02、95%CI 0.81~1.30、p=0.85)、狭心症(RR 0.96、95%CI 0.80〜1.17、p=0.70)、脳卒中(RR 0.99、95%CI 0.85〜1.16、p=0.93)はARNI群とACEi/ARB群で統計学的な差はありませんでした。しかし、ARNIは末梢動脈疾患の高い発生率と関連していました(RR 1.63、95%CI 1.05〜2.52、p = 0.03)。
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アンギオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)は比較的新しい治療薬であり、心不全患者の死亡や入院のリスクを減少させることが報告されています。一方、心血管イベント発生との関連性については充分に検証されていないことから、エビデンスの創出が求められています。
さて、ランダム化比較試験8件のメタ解析の結果、ACEiあるいはARBと比較して、アンギオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)治療と心不全患者におけるASCVDイベントの改善との間に関連はみられませんでした。一方、末梢動脈疾患イベントのリスク増加と関連している可能性が示唆されました。
あくまでも副次的な評価項目ですが、末梢動脈疾患イベントのリスクが増加したことから、どのような要因が関与しているのか検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験8件のメタ解析の結果、ACEiあるいはARBと比較して、アンギオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)治療と心不全患者におけるASCVDイベントの改善との間に関連はみられなかった。一方、末梢動脈疾患イベントのリスク増加と関連している可能性が示唆された。
根拠となった試験の抄録
背景:サクビトリル-バルサルタンはアンギオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)であり、心不全患者の死亡や入院のリスクを減少させる。しかし、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)イベントの改善との関連は不明である。われわれは心不全(HF)患者におけるARNIとASCVDイベントとの関連を評価するためにメタ解析を行った。
方法:PubMed、Embase、Cochrane、ClinicalTrials.govにおいて、HF患者における心筋梗塞、脳卒中、狭心症、末梢動脈疾患、複合エンドポイントについてARNIとアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)またはアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を比較した研究を系統的に検索した。
結果:合計8件のランダム化比較試験が組み入れられ、17,541例がARNI群(8,764例)またはACEi/ARB群(8,777例)に割り付けられた。複合エンドポイント(リスク比[RR]1.03、95%信頼区間[CI]0.93~1.13、p=0.63)、心筋梗塞(RR 1.02、95%CI 0.81~1.30、p=0.85)、狭心症(RR 0.96、95%CI 0.80〜1.17、p=0.70)、脳卒中(RR 0.99、95%CI 0.85〜1.16、p=0.93)はARNI群とACEi/ARB群で統計学的な差はなかった。しかし、ARNIは末梢動脈疾患の高い発生率と関連していた(RR 1.63、95%CI 1.05〜2.52、p = 0.03)。
結論:このメタアナリシスでは、ARNI治療とHF患者におけるASCVDイベントの改善との間に関連はみられなかった。
キーワード:ARNI、ASCVD、アテローム性動脈硬化症、サクビトリル-バルサルタン
引用文献
Angiotensin Receptor-Neprilysin Inhibitor Effects on Atherosclerotic Cardiovascular Disease Events: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
Lis Victoria Ravani et al. PMID: 37619492 DOI: 10.1016/j.amjcard.2023.07.154
Am J Cardiol. 2023 Oct 15;205:259-268. doi: 10.1016/j.amjcard.2023.07.154. Epub 2023 Aug 22.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37619492/
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