家族で食事をする時間を平均10分長くすると食事内容に変化はあるのか?
家族での食事は、子どもたちの食の選択と嗜好を形成する形成的な学習環境です。そのため、子どもの栄養状態を改善するための取り組みには理想的な環境であると考えられます。しかし、家族での食事時間と摂取する食事内容との関連性については充分に検討されていません。
そこで今回は、家族での食事の時間を長くすることが、子どもの果物や野菜の摂取量に与える影響を検討するために実施されたランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本試験では、親子一対内操作デザイン(within-dyad manipulation design)を用い、2016年11月8日から2017年5月5日まで、ドイツ・ベルリンの家族食事研究室で実施されました。試験に組み入れられたのは、特別な食事療法を行っていない、あるいは食物アレルギーを有していない6〜11歳の小児と、家庭内で栄養のゲートキーパーを務める成人の両親(すなわち、食事の計画と準備の少なくとも半分を担当する家族)でした。
対照条件は、家族の食事時間が通常通りであること、介入条件は、食事時間が50%長いこと(平均10分長い)であり、参加者は最初に完了する条件にランダムに割り付けられました。
本試験の主要アウトカムは、食事中に子どもが食べた野菜と果物の数でした。
試験結果から明らかになったことは?
合計50組の親子一対が試験に参加しました。親の平均年齢は43歳(28~55歳)で、主に母親でした(36例[72%])。子どもの平均年齢は8歳(6~11歳)で、男女同数(25例[50%])でした。
介入群(食事時間が50%長い; 平均10分長い) vs. 対照群 | |
果物 | t49 = 2.36、P=0.01 平均差 [MD] 3.32、95%CI 0.96 〜 ∞; Cohen d=0.33 |
野菜 | t49 = 3.66、P<0.001 MD 4.05、95%CI 2.19 〜 ∞; Cohen d=0.52 |
パンとコールドカット | t49 = 1.25、P=0.22 MD 30.4、95%CI -18.28 〜 79.08; Cohen d=0.1 |
水(mL) | t49 = 3.70、P<0.001 MD 54.2、95%CI 24.73〜83.67; Cohen d=0.52 |
砂糖入り飲料 | t49 = 2.37、P=0.02 MD 36.5、95%CI 5.53〜67.47; Cohen d=0.34 |
子どもたちは、通常の食事時間の条件よりも長い条件の方が、果物(t49 = 2.36、P=0.01; 平均差 [MD] 3.32、95%CI 0.96 〜 ∞; Cohen d=0.33)と野菜(t49 = 3.66、P<0.001; MD 4.05、95%CI 2.19 〜 ∞; Cohen d=0.52)を著しく多く食べていることが示されました。
一方、パンとコールドカット(冷製の薄く切ったソーセージやミート・ローフなど)の消費量には条件間で有意な差はありませんでした。
子どもの食事速度(通常の食事時間における1分あたりの一口数)は、通常条件よりも長い条件の方が有意に低いことが示されました(t49 = -7.60、P<0.001; MD -0.72、95%CI -0.56 〜 ∞; Cohen d=1.08)。また、子どもたちは、より長い条件の後に、有意に高い満腹感を報告しました(V = 36.5、P<0.001)。
コメント
家族で食事することによる影響については充分に検討されていません。
さて、本試験結果によれば、ランダム化比較試験の結果、家族の食事時間を約10分長くするというシンプルで閾値の低い介入によって、一般的な食事時間と比較して、子どもの食事と食行動の質を向上させることが示唆されました。具体的には、果物と野菜の摂取量が増加しました。また食事速度が低くなり、満腹感が高いことも示されました。
これらが子どもの精神的・身体的状態にどのように影響するのか気にかかるところです。
続報に期待。
コメント