運動介入により転倒リスクを低減できるのか?
共同運動介入は、転倒や怪我の予防に役立つ可能性があります。しかし、そのような戦略の有効性を実証する実用的な臨床試験の結果は一貫しておらず、質の高い前向き研究の実施が求められます。
そこで今回は、初期6ヵ月間の監督された週1回のジムと太極拳セッションを含む、市のレクリエーションスポーツ施設への費用無料の12ヵ月間の入場が、転倒と関連する怪我の発生数を減少させるかどうかを検証したランダム化比較試験の結果をご紹介します。
平均フォローアップ期間は、2016〜19年に22.6(SD 4.8)ヵ月でした。人口ベースのサンプルから、平均年齢76.5(SD 3.3、範囲71.1~84.8)歳の女性914例を、運動介入群(n=457)と対照群(n=457)にランダム化しました。
転倒情報は、隔週のショートメッセージ(SMS)問い合わせと転倒日記を通じて収集されました。Intention-to-treat(ITT)解析では、合計1,380件の転倒が記録され、1,281件(92.8%)が電話による確認が行われました。
試験結果から明らかになったことは?
転倒率 (運動介入群 vs. 対照群) | |
転倒リスク | 発生率比(IRR) 0.86 (95%CI 0.77〜0.95) |
中等度の傷害 | 52.8%(n=678) |
重度の傷害 | 4.8%(n=61) |
骨折リスク | IRR 0.62 (95%CI 0.39〜0.99) |
運動介入群では、対照群と比較して14.3%の転倒率低下が確認されました(発生率比, IRR)=0.86、95%CI 0.77〜0.95)。転倒の約半数は、中等度(n=678、52.8%)または重度の傷害(n=61、4.8%)でした。
全体で転倒の13.2%(n=166)(73件の骨折を含む)が医師の診察を必要としましたが、運動介入群では骨折率が38%低いことが示されました(IRR=0.62、95%CI 0.39〜0.99)。
全体として、41%(IRR=0.59、95%CI 0.36〜0.99)の最大の減少は、重傷と痛みを伴う転倒で観察されました。
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高齢者ではサルコペニアやプレフレイルなどの筋力低下、これに伴う転倒リスク増加が懸念されます。予防戦略として運動介入が実施されますが結果の一貫性は示されていません。
さて、ランダム化比較試験の結果、6ヵ月の運動期間と12ヵ月のスポーツ施設の自由利用を組み合わせた地域密着型のアプローチは、高齢女性の転倒、骨折、その他の転倒関連傷害を減らすことが示されました。
本試験期間は約2年でした。運動習慣を維持することは困難であることから、より長期的な効果検証が求められます。
続報に期待。
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