SGLT2阻害薬とループ利尿薬の併用は体液量減少リスクの要因となるのか?
グルコース共輸送担体2阻害薬(SGLT2i)は、2型糖尿病(T2DM)の心血管合併症の予防に使用されていますが、新たに慢性腎臓病(CKD)や心不全(HF)についても適応を有しています。
ループ利尿薬は、HFの体液量過多を管理するために一般的に処方されますが、実際の臨床では体液量減少のリスクを高める可能性があります。
そこで今回は。本退役軍人においてSGLT2iとループ利尿薬を併用した場合の体液量減少のリスクを評価した自己対照症例シリーズ研究をご紹介します。
本試験において、自己対照症例シリーズデザインを活用し、2012年12月から2019年12月の間にループ利尿薬とSGLT2iを併用し、体液量減少のイベントを少なくとも1回経験したT2DMの退役軍人が組み入れられました。併用処方期間は、1~14日、14~28日、28日以上のフォーカルウィンドウに分けられました。発症率比(IRR)は、年齢および腎機能で調整した多変量ポアソン回帰を用いて推定されました。
試験結果から明らかになったことは?
患者 3,352例が少なくとも1回の体液量減少イベントを経験し、少なくとも1回はSGLT2iとループ利尿薬を併用処方されていました。
併用期間 | 発症率比(IRR) |
1~14日 | IRR 1.82 (95%CI 1.63~2.02) |
15~28日 | IRR 1.546 (95%CI 1.28~1.67) |
28日以上 | IRR 1.22 (95%CI 1.21~1.34) |
体液量減少のリスクは、1~14日のウィンドウ(IRR 1.82、95%CI 1.63~2.02) 、15~28日のウィンドウ(IRR 1.546、95%CI 1.28~1.67) 、28日以上のウィンドウ(IRR 1.22、95%CI 1.21~1.34)で対照群と比較して治療群で増加しました。
コメント
SGLT2阻害薬は、初期の研究報告で作用機序がループ利尿薬と類似していることが示されていました。いずれの薬剤も尿排泄量を増加させるため、併用することで、過度の体液量減少リスクが引き起こされる可能性があります。
さて、本試験結果によれば、SGLT2阻害薬とループ利尿薬の併用は体液量減少のリスク上昇と関連しており、この効果は治療期間が長くなるほど減少することが示されました。2型糖尿病はしばしば心不全を併発することから、SGLT2阻害薬とループ利尿薬を併用するケースも見られます。両薬剤の併用開始してからの特に2週間、そして併用開始後1ヵ月間については特に注意してモニタリングした方が良いと考えられます。
✅まとめ✅ SGLT2阻害薬とループ利尿薬の併用は体液量減少のリスク上昇と関連しており、この効果は治療期間が長くなるほど減少するようであった。
根拠となった試験の抄録
背景:グルコース共輸送担体2阻害薬(SGLT2i)は、2型糖尿病(T2DM)の心血管合併症の予防に使用されており、新たに心不全(HF)の治療薬として適応となった。ループ利尿薬は、HFの体液量過多を管理するために一般的に処方されますが、実際の臨床では体液量減少のリスクを高める可能性がある。本研究では、退役軍人においてSGLT2iとループ利尿薬を併用した場合の体液量減少のリスクを評価した。
方法:T2DMの退役軍人は、自己対照症例シリーズデザインを活用し、2012年12月から2019年12月の間にループ利尿薬とSGLT2iを併用し、体液量減少のイベントを少なくとも1回経験した場合に組み入れられた。併用処方期間は、1~14日、14~28日、28日以上のフォーカルウィンドウに分けられた。発症率比(IRR)は、年齢および腎機能で調整した多変量ポアソン回帰を用いて推定した。
結果:患者 3,352例が少なくとも1回体液量減少のイベントを経験し、少なくとも1回はSGLT2iとループ利尿薬を併用処方されていた。体液量減少のリスクは、1~14日のウィンドウ(IRR 1.82、95%CI 1.63~2.02) 、15~28日のウィンドウ(IRR 1.546、95%CI 1.28~1.67) 、28日以上のウィンドウ(IRR 1.22、95%CI 1.21~1.34)で対照群と比較して治療群で増加した。
結論:SGLT2iとループ利尿薬の併用は体液量減少のリスク上昇と関連しており、この効果は治療期間が長くなるほど減少する。処方者は、併用療法を受けている患者、特に高齢の患者やeGFRが60未満の患者の体液状態を注意深く観察する必要がある。
キーワード:ループ利尿薬、ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害薬、体液量減少
引用文献
Risk of Volume Depletion Events with Concomitant Use of Sodium Glucose Co-Transporter 2 Inhibitors and Loop Diuretics: A Self-Controlled Case Series Study
Colleen M Lewellyan et al. PMID: 35713292 DOI: 10.1002/pds.5496
Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2022 Jun 17. doi: 10.1002/pds.5496. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35713292/
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