プライマリケアにおけるプロトンポンプ阻害薬の不適切な使用に関する予測因子とは?(コホート研究; BJGP 2022)

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プロトンポンプ阻害薬(PPI)の不適切な使用に関する予測因子とは?

プロトンポンプ阻害薬(PPI)の適応は、胃腸障害と潰瘍予防に限定されていますが、それでも、PPIは最も処方頻度の高い薬剤の一つです。しかし、PPI処方の妥当性についての評価は充分に行われていません。

そこで今回は、PPI処方の妥当性を評価し、不適切なPPI使用の予測因子の特定を試みた観察研究の結果をご紹介します。本試験では、2016年から2018年の間に新規に処方されたすべてのPPIを含むオランダのプライマリーケアのデータベースが用いられました。個々の患者データおよびPPI使用に関する詳細が収集されました。PPI処方の開始と継続の適切性については、適用されるガイドラインを使用して評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

27施設の一般診療所の患者(≧18歳)148,926例を評価しました。合計23,601例(16%)の患者がPPI治療を開始しました(平均年齢57±17歳、女性59%)。

開始時の有効なPPI適応は、10,466例のPPIユーザー(44%)にみられました。

不適切に開始されたPPI使用の予測因子オッズ比(OR)
高齢OR 1.03
(95%CI 1.03〜1.03
非選択性NSAIDsOR 5.15
(95%CI 4.70〜5.65
ADP受容体阻害剤OR 5.07
(95%CI 3.46〜7.41
コキシブOR 3.93
(95%CI 2.92〜5.28
低用量アスピリンOR 3.83
(95%CI 3.07〜4.77)

不適切に開始されたPPI使用の予測因子は、高齢(OR 1.03、95%CI 1.03〜1.03)、非選択性NSAIDs(OR 5.15、95%CI 4.70〜5.65)、ADP受容体阻害剤(OR 5.07、95%CI 3.46〜7.41)、コキシブ(OR 3.93、95%CI 2.92〜5.28) および低用量アスピリン (OR 3.83、95%CI 3.07〜4.77) の使用でした。

PPIは、有効な適応症であるにもかかわらず、消化不良の短期治療で32%潰瘍予防で11%の患者で不正確に使用が継続されました。

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胃腸薬は “念のため” に処方されることが多い薬剤の代表格です。中でもプロトンポンプ阻害薬(PPI)は胃潰瘍予防のために使用されますが、その妥当性については充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、不適切に開始されたPPI使用の予測因子は、高齢、非選択性NSAIDs、ADP受容体阻害剤、コキシブ(COX-2阻害薬)および低用量アスピリンの使用でした。いずれも胃潰瘍リスクを有している薬剤であり、処方カスケードとしてPPIが処方されているようでした。

国内の診療ガイドラインでは、潰瘍の既往歴がない患者においても、NSAIDsや低用量アスピリン使用に伴う潰瘍の一次、二次予防に対して、PPIあるいはボノプラザンの併用が推奨されていますが、潰瘍の発生率を考慮すると、いずれの場合もPPIの併用が必須とは言い切れません。

これまでの報告を踏まえると、抗血小板薬を2剤以上使用している患者や、抗血小板薬あるいは抗凝固薬とNSAIDsを併用している患者、潰瘍の既往歴を有する患者などにおいて、PPIの併用を考慮できると考えられます。不必要にPPIを併用することは避けたいところです。

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✅まとめ✅ プライマリケアにおけるPPI使用者の半数以上は、薬剤使用に関連した不必要な潰瘍予防が主要な原因の一つであり、不適切な適応を持っているようである。

根拠となった試験の抄録

背景:プロトンポンプ阻害薬(PPI)の適応は、胃腸障害と潰瘍予防に限定されている。それでも、PPIは最も処方頻度の高い薬剤の一つである。

目的:PPI処方の妥当性を評価し、不適切なPPI使用の予測因子を特定すること。

デザインおよび設定:2016年から2018年の間に新規に処方されたすべてのPPIを含むオランダのプライマリーケアのデータベースを用いた観察的研究

方法:個々の患者データおよびPPI使用に関する詳細を収集した。PPI処方の開始と継続の適切性は、適用されるガイドラインを使用して評価した。

結果:27施設の一般診療所の患者(≧18歳)148,926例を評価した。合計23,601例(16%)の患者がPPI治療を開始した(平均年齢57±17歳、女性59%)。開始時の有効なPPI適応は、10,466例のPPIユーザー(44%)にみられた。不適切に開始されたPPI使用の予測因子は、高齢(OR 1.03、95%CI 1.03〜1.03)、非選択性NSAIDs(OR 5.15、95%CI 4.70〜5.65)、ADP受容体阻害剤(OR 5.07、95%CI 3.46〜7.41)、コキシブ(OR 3.93、95%CI 2.92〜5.28) および低用量アスピリン (OR 3.83、95%CI 3.07〜4.77) の使用であった。PPIは、有効な適応症であるにもかかわらず、消化不良の短期治療で32%、潰瘍予防で11%の患者で不正確に使用が継続された。

結論:プライマリケアにおけるPPI使用者の半数以上は、薬剤使用に関連した不必要な潰瘍予防が主要な原因の一つであり、不適切な適応を持っているようである。今後、不必要な潰瘍予防のためのPPI使用を減らし、PPIの適応がなくなった場合には適時に脱処方する取り組みが必要である。

引用文献

Predictors for inappropriate proton pump inhibitor use: observational study in primary care | British Journal of General Practice
Lieke Maria Koggel et al.
British Journal of General Practice 24 June 2022; BJGP.2022.0178. DOI: https://doi.org/10.3399/BJGP.2022.0178
— 続きを読む bjgp.org/content/early/2022/06/24/BJGP.2022.0178.abstract

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