2型糖尿病とCKDにおける抗糖尿病薬の心腎アウトカム比較(SR&NWM; Diabetes Obes Metab. 2025)

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2型糖尿病+CKDに対する有効な薬剤とは?

2型糖尿病(T2DM)に慢性腎臓病(CKD)を合併すると、心血管イベントや腎不全のリスクが著しく増加します。
近年は SGLT2阻害薬GLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA) が腎・心血管保護効果を示し、臨床ガイドラインでも推奨されつつあります。一方で、従来広く使われてきた DPP-4阻害薬 については、心腎アウトカムに関する明確なエビデンスは限定的です。

そこで今回は、複数のランダム化比較試験(RCT)を統合したネットワークメタ解析(NMA)により、T2DM+CKD患者におけるこれら薬剤の比較効果を検証した試験の結果をご紹介します。


試験結果から明らかになったことは?

◆試験デザイン

  • 対象試験:2014〜2024年に発表されたRCT
  • 患者数:26試験、計143,296例
  • 比較薬:SGLT2阻害薬、GLP-1 RA、DPP-4阻害薬
  • 主要アウトカム
    1. MACE(主要心血管イベント)
    2. 複合腎イベント
    3. 全死亡(all-cause mortality)
  • 副次アウトカム:心不全(HF)、脳卒中、心筋梗塞(MI)、高度蛋白尿(macroalbuminuria)、eGFR低下(>40%)または透析導入

◆主な結果(アウトカム別)

アウトカムSGLT2阻害薬GLP-1 RADPP-4阻害薬
MACE有効(P-score 0.93)有効(次点)限定的
複合腎イベント最も有効(0.94)有効限定的
eGFR低下 >40%/透析導入最も有効(0.99)有効限定的
心不全(HF)最も有効(1.00)有効限定的
心筋梗塞(MI)有効より有効(0.87)限定的
脳卒中有効より有効(0.83)限定的
高度蛋白尿有効より有効(0.86)限定的
全死亡有効(0.83)有効(0.83)限定的

◆考察

  • SGLT2阻害薬は、特に腎アウトカムと心不全抑制で圧倒的に優れており、CKD合併T2DM患者の第一選択薬として有望な結果です。
  • GLP-1 RAは、脳卒中・心筋梗塞・蛋白尿抑制に強みを示し、SGLT2阻害薬が使えない場合や併用時に有用です。
  • DPP-4阻害薬は、心腎アウトカムにおける有効性が限定的であり、血糖コントロール目的に留まる位置づけです。

試験の限界

  • 各RCTの対象患者背景が異なるため、異質性の影響を完全に排除できない。
  • 一部のアウトカムは間接比較による推定に依存している。
  • 長期的な安全性や併用効果については追加研究が必要。

◆まとめ

  • SGLT2阻害薬は心腎アウトカムの第一選択
  • GLP-1 RAは脳卒中・MI・蛋白尿抑制に強み
  • DPP-4阻害薬はアウトカム効果に対して限定的

T2DM+CKD患者の治療戦略では、まずSGLT2阻害薬を検討し、必要に応じてGLP-1 RAを組み合わせるのが有力な選択肢といえます。

個々の患者背景により、使用を開始する薬剤は異なる前提ではありますが、その中でもSGLT-2阻害薬の使用を考慮したほうが利益が大きいのかもしれません。ただし、組み入れられた研究によっては、併用薬としてメトホルミンやチアゾリジン系薬などが使用されていた可能性があります。

薬剤使用がナイーブな患者において、どの薬剤が優れているのか、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験を対象としたシステマティックレビュー・ネットワークメタ解析の結果、SGLT2阻害薬に続いてGLP-1受容体作動薬(RA)を投与することで、2型糖尿病および慢性腎臓病(CKD)患者の心血管疾患および腎臓の健康に大きなメリットがもたらされることが明らかとなった。

根拠となった試験の抄録

目的: 慢性腎臓病(CKD)を伴う2型糖尿病(T2DM)は、心血管イベント(CV)および腎不全のリスクを高める一般的な合併症です。ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-4)阻害薬などの最近の治療法は、転帰の改善に有望性を示しています。しかし、CVおよび腎アウトカムの軽減におけるこれらの薬剤の相対的有効性を示すエビデンスは乏しいです。

材料と方法: PubMed、Scopus、臨床試験登録などの電子データベースから、2014年から2024年の間に発表されたランダム化比較試験(RCT)を検索した。ネットワークメタアナリシス(NMA)を用いて、抗糖尿病薬の心腎アウトカムに対する有効性を評価しました。
主要評価項目は、(1)主要心血管イベント(MACE)、(2)複合腎アウトカム、(3)全死亡率とした。その他のアウトカムは、心不全(HF)、脳卒中、マクロアルブミン尿、推定糸球体濾過率(eGFR)の40%超の低下または腎代替療法の有無とした。

結果: 2型糖尿病および慢性腎臓病(CKD)の患者143,296名を対象とした26件の研究が対象となった。SGLT2阻害薬は、複合イベント(Pスコア:0.94)、eGFRの40%超の低下または腎代替療法(0.99)などの腎アウトカム、およびMACE(0.93)やHF(1.00)などの心血管アウトカムのリスク低減に非常に効果的であり、続いてGLP-1 RAが効果的であった。一方、GLP-1 RAは、SGLT2阻害薬と比較して、心筋梗塞(0.87)、マクロアルブミン尿(0.86)、脳卒中(0.83)のリスク低減に特に効果的であった。SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬はともに、全死亡率低減に非常に効果的(0.83)であった。DPP-4阻害薬は、SGLT2阻害薬およびGLP-1 RAと比較して、効果が限定的であった。

結論: SGLT2阻害薬に続いてGLP-1受容体作動薬(RA)を投与することで、2型糖尿病および慢性腎臓病(CKD)患者の心血管疾患および腎臓の健康に大きなメリットがもたらされる。SGLT2阻害薬は、心不全および腎機能に対するGLP-1受容体作動薬よりも優れた効果を示しており、これらの臨床シナリオにおいてSGLT2阻害薬が優れた役割を担っていることが示唆される。

キーワード: 抗糖尿病薬、心血管アウトカム、慢性腎臓病、メタアナリシス、腎臓アウトカム、システマティックレビュー、2型糖尿病

引用文献

Comparative analysis on renal and cardiovascular outcomes of antidiabetic treatment in chronic kidney disease patients-A systematic review and network meta-analysis
Peter Bramlage et al. PMID: 40798873 DOI: 10.1111/dom.70010
Diabetes Obes Metab. 2025 Aug 12. doi: 10.1111/dom.70010. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40798873/

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