小児心疾患患者におけるエドキサバンの血栓塞栓症予防効果はどのくらいですか?(RCT; ENNOBLE-ATE試験; J Am Coll Cardiol. 2022)

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小児心疾患患者における術後の血栓塞栓管理としてエドキサバンは有用なのか?

小児心疾患患者における血栓塞栓症(TE)予防のための標準治療(SOC)抗凝固療法には、低分子ヘパリンまたはビタミンK拮抗薬がもちいられています。代替療法として直接作用型経口抗凝固薬(OAC)がしょうんん販売されていますが、小児におけるデータは限られています。

そこで今回は、小児におけるエドキサバンの安全性と有効性のデータを得ることを目的に、心疾患を有する18歳未満の患者を対象とした第3相国際前向きランダム化非盲検エンドポイント試験(ENNOBLE-ATE [Edoxaban for Prevention of Blood Vessels Being Blocked by Clots (Thrombotic Events) in Children at Risk Because of Cardiac Disease] trial)の結果をご紹介します。

本試験では、心疾患診断により層別化された患者を、年齢と体重に応じたエドキサバン1日1回経口投与群とSOC群に2:1で3ヵ月間(主要試験期間)ランダムに割り付けられました。両群とも1年までエドキサバンの非盲検延長試験を継続することができました。本試験の主要評価項目は、臨床的関連出血(CRB)、副次的評価項目は症候性心筋梗塞または無症候性心筋内血栓症でした。

試験結果から明らかになったことは?

修正intention-to-treatコホートには167例の小児が含まれました。

主要期間中に重篤でない臨床的関連出血(CRB)を経験した患者は各群1例でした。治療上有害な事象はエドキサバン群で46.8%(109例中51例)、標準治療(SOC)群で41.4%(58例中24例)に発現しました。SOC群の患者1例が2件の血栓塞栓(TE)イベント(PEを伴うDVT)を経験しました。

延長試験に参加した小児147例では、CRBイベントが1例(0.7%)、TEイベントが4例(2.8%;川崎病33例中冠動脈血栓症および心筋梗塞の2例、脳卒中2例)発生しました。

コメント

小児心疾患患者においては、術後の血栓塞栓予防として低分子ヘパリンまたはビタミンK拮抗薬が使用されています。一方、直接作用型経口抗凝固薬(OAC)であるエドキサバンの検証は充分ではありません。

さて、本試験結果によれば、標準治療を対照としたランダム化比較試験において、エドキサバン(1日1回投与)は血栓症および心筋梗塞の発症率が低く、モニタリングの頻度も低いため、小児心疾患患者の血栓予防に有用なようです。頻回の採血を避けられるのは大きなメリットであると考えます。

事実、ワルファリンのように定期的なINR測定の必要はありませんが、正しくは、OAC(DOAC)による出血リスクを評価するためのモニタリング項目が定まっていないため定期的な測定ができない、と言えます。DOACの半減期はワルファリンと比較して短く、血中濃度が安定しやすいことから実臨床における深刻な課題とまでは言えませんが、モニタリング項目の探索が求められます。

続報に期待。

☑まとめ☑ 標準治療を対照としたランダム化比較試験において、エドキサバン(1日1回投与)は血栓症および心筋梗塞の発症率が低く、モニタリングの頻度も低いため、小児心疾患患者の血栓予防に有用であると考えられた。

根拠となった試験の抄録

背景:小児心疾患患者における血栓塞栓症(TE)予防のための標準治療(SOC)抗凝固療法には、低分子ヘパリンまたはビタミンK拮抗薬が含まれる。小児における直接経口抗凝固薬の代替使用に関するデータは限られている。

目的:小児におけるエドキサバンの安全性と有効性のデータを得ることを目的とした。

方法:心疾患を有する18歳未満の患者を対象とした第3相国際前向きランダム化非盲検エンドポイント試験(ENNOBLE-ATE [Edoxaban for Prevention of Blood Vessels Being Blocked by Clots (Thrombotic Events) in Children at Risk Because of Cardiac Disease] trial)を実施した。心疾患診断により層別化された患者を、年齢と体重に応じたエドキサバン1日1回経口投与群とSOC群に2:1で3ヵ月間(主要試験期間)ランダムに割り付けました。両群とも1年までエドキサバンの非盲検延長試験を継続することができた。
主要評価項目は、臨床的関連出血(CRB)だった。副次的評価項目は症候性心筋梗塞または無症候性心筋内血栓症とした。

結果:修正intention-to-treatコホートには167例の小児が含まれた。主要期間中に主要でないCRBを経験した患者は各群1例であった。治療上有害な事象はエドキサバンで46.8%(109例中51例)、SOCで41.4%(58例中24例)に発現した。SOCの患者1例が2件のTEイベント(PEを伴うDVT)を経験した。延長試験に参加した小児147例では、CRBイベントが1例(0.7%)、TEイベントが4例(2.8%;川崎病33例中冠動脈血栓症および心筋梗塞の2例、脳卒中2例)発生した。

結論:エドキサバンは、1日1回の投与で血栓症および心筋梗塞の発症率が低く、モニタリングの頻度も低いため、小児心疾患患者の血栓予防に有用であると考えられた(ENNOBLE-ATE [Edoxaban for Prevention of Blood Vessels Being Blocked by Clots] (Thrombotic Events) in Children at Risk Because of Cardiac Disease trial; NCT03395639)。

キーワード:フォンタン(Fontan手術)、川崎病、抗凝固療法、小児、血栓塞栓症

引用文献

Edoxaban for Thromboembolism Prevention in Pediatric Patients With Cardiac Disease
Michael A Portman et al. PMID: 36328157 DOI: 10.1016/j.jacc.2022.09.031
J Am Coll Cardiol. 2022 Dec 13;80(24):2301-2310. doi: 10.1016/j.jacc.2022.09.031. Epub 2022 Oct 31.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36328157/

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