遺伝子組換え帯状疱疹ワクチンと認知症リスクとの関連性は?(後向きコホート研究; Vaccine. 2024)

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帯状疱疹ワクチン接種と認知症リスクとの関連性は?

認知症は、実行機能、知覚・運動能力、社会的認知などの認知領域の低下を特徴とする神経認知障害であり、世界中で5,500万人以上の罹患、年間1,000万人が新たに認知症と診断されています。発症後の認知症の影響を逆転させる確立された治療法はありませんが、いくつかの環境因子や生活習慣因子をコントロールすることで、認知症発症のリスクを減らすことが期待できます。

潜在的な危険因子の一つは帯状疱疹(HZ)感染であり、複数の研究により、HZがおそらく神経炎症または脳血管障害を通じて認知症リスクに関与している可能性が示されています。2017年と2020年に行われた2つの集団ベースのコホート研究では、HZは認知症リスクの上昇と関連している一方で、HZ感染後の抗ウイルス療法はリスクを低下させることが明らかとなっています。

しかし、遺伝子組換え帯状疱疹ワクチン(RZV)の認知症予防効果は不明であり、実臨床における検証は充分ではありません。

そこで今回は、大規模な請求データベースを用いて、RZVが認知症発症に及ぼす影響を明らかにすることを目的に実施された後向きコホート研究の結果をご紹介します。

このレトロスペクティブコホート研究では、2017年1月1日から2022年12月31日までのOptum Labs Data Warehouseデータベースの非識別化請求データを用いて、組換え帯状疱疹ワクチンが認知症リスクの低下と関連するかどうかが検討されました。

365日以上継続して登録された免疫不全患者を対象とし、リスク期間は組換え帯状疱疹ワクチン接種の年齢適格性が認められた時点から開始されました。

認知症のハザード比を推定するために、6ヵ月ごとに時間固定および時間更新で調整したCox回帰が実施されました。帯状疱疹の診断と抗ウイルス療法も評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

本研究には4,502,678人(年齢中央値 62[IQR 54~71]歳、51%が女性)が組み入れられました:206,297人(4.6%)が部分接種を受け、460,413人(10.2%)が完全接種を受けました。

認知症の発症率
(1万人・年当たり)
調整後の認知症の発症率
ハザード比(95%CI)
vs. 未接種群
完全接種群99.1例HR 0.68
0.67~0.70
P<0.001
部分接種群108.2例HR 0.89
0.87~0.92
P<0.001
未接種群135.0例

認知症の発症率は、完全接種群では1万人・年当たり99.1例、部分接種群では1万人・年当たり108.2例、未接種群では1万人・年当たり135.0例でした。調整後、ワクチン接種は、2回接種の場合(ハザード比(HR) 0.68、95%CI 0.67~0.70;P<0.001)、1回接種の場合(HR 0.89、95%CI 0.87~0.92;P<0.001)、認知症リスクの低下と有意に関連していました。

認知症の発症率
ハザード比(95%CI)
初回ワクチン接種前に帯状疱疹の診断を受けた患者HR 1.47
1.42~1.52
P<0.001
帯状疱疹感染の治療に使用された抗ウイルス薬HR 0.42
0.40~0.44
P<0.001

初回ワクチン接種前に帯状疱疹の診断を受けていることは、診断を受けていない人と比較して認知症のハザード増加と関連していました(HR 1.47、95%CI 1.42~1.52; P<0.001)。帯状疱疹感染の治療に使用された抗ウイルス薬は、認知症に対して予防的でした(HR 0.42、95%CI 0.40~0.44;P<0.001)。

コメント

認知症の発症リスクの一つに帯状疱疹があげられますが、帯状疱疹ワクチン接種と認知症の発症リスクとの関連性については充分に検証されていません。

さて、後向きコホート研究の結果、遺伝子組換え帯状疱疹ワクチンが認知症リスクの低下と関連することが示唆され、帯状疱疹の予防にとどまらないワクチン接種のさらなる有益性が強調されました。

研究に利用されたデータベースは2017年1月1日から2022年12月31日のデータが用いられています。乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(チャイニーズハムスター卵巣細胞由来)であるシングリックス接種者が対象であったと考えられます。また、試験対象者は365日以上継続して登録された免疫不全患者であることから、免疫不全を有さない高齢者等に対しては、本研究結果を外挿できません。更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 後向きコホート研究の結果、遺伝子組換え帯状疱疹ワクチンが認知症リスクの低下と関連することが示唆され、帯状疱疹の予防にとどまらないワクチン接種のさらなる有益性が強調された。

根拠となった試験の抄録

背景:帯状疱疹は認知症の潜在的危険因子である。遺伝子組換え帯状疱疹ワクチンの認知症予防効果は不明である。

方法:このレトロスペクティブコホート研究では、2017年1月1日から2022年12月31日までのOptum Labs Data Warehouseデータベースの非識別化請求データを用いて、組換え帯状疱疹ワクチンが認知症リスクの低下と関連するかどうかを検討した。365日以上継続して登録された免疫不全患者を対象とし、リスク期間は組換え帯状疱疹ワクチン接種の年齢適格性が認められた時点から開始した。
認知症のハザード比を推定するために、6ヵ月ごとに時間固定および時間更新で調整したCox回帰が実施された。帯状疱疹の診断と抗ウイルス療法も評価した。

結果:本研究には4,502,678人(年齢中央値 62[IQR 54~71]歳、51%が女性)が組み入れられた:206,297人(4.6%)が部分接種を受け、460,413人(10.2%)が完全接種を受けた。認知症の発症率は、完全接種群では1万人年当たり99.1例、部分接種群では1万人年当たり108.2例、未接種群では1万人年当たり135.0例であった。調整後、ワクチン接種は、2回接種の場合(ハザード比(HR) 0.68、95%CI 0.67~0.70;P<0.001)、1回接種の場合(HR 0.89、95%CI 0.87~0.92;P<0.001)、認知症リスクの低下と有意に関連していた。初回ワクチン接種前に帯状疱疹の診断を受けていることは、診断を受けていない人と比較して認知症のハザード増加と関連していた(HR 1.47、95%CI 1.42~1.52; P<0.001)。帯状疱疹感染の治療に使用された抗ウイルス薬は、認知症に対して予防的であった(HR 0.42、95%CI 0.40~0.44;P<0.001)。

結論:これらの所見は、遺伝子組換え帯状疱疹ワクチンが認知症リスクの低下と関連することを示唆し、帯状疱疹の予防にとどまらないワクチン接種のさらなる有益性を強調するものである。

キーワード:抗ウイルス剤;認知症;帯状疱疹;帯状疱疹ワクチン;遺伝子組換え帯状疱疹ワクチン;ワクチン接種

引用文献

Recombinant zoster vaccine and the risk of dementia
Emily Tang et al. PMID: 39733478 DOI: 10.1016/j.vaccine.2024.126673
Vaccine. 2024 Dec 28:46:126673. doi: 10.1016/j.vaccine.2024.126673. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39733478/

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