米国退役軍人におけるCOVID-19後遺症の発症に対するニルマトレルビル-リトナビルの有効性はどのくらい?(標的試験エミュレーション; Ann Intern Med. 2023)

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COVID-19後遺症の発症に対するニルマトレルビル-リトナビルの有効性は?

これまでの研究結果から、COVID-19は急性感染後の多くのCOVID-19後遺症の発症に関連していることが示されています。一方で、急性COVID-19の治療に用いられる経口抗ウイルス薬のCOVID-19後遺症の発症予防効果に関する情報は限られています。

そこで今回は、ニルマトレルビル-リトナビルによるCOVID-19外来治療におけるCOVID-19後遺症の発症予防効果について検証した標的試験模倣(target trial emulation)の結果をご紹介します。

本研究では、ニルマトレルビル-リトナビルを投与されたマッチさせたコホートと無治療のコホートを比較するレトロスペクティブ標的試験エミュレーション研究が実施されました。対象のコホートは、退役軍人健康管理局(VHA)でした。

試験参加者は、2022年1月〜7月までに重症COVID-19のリスクを有し、SARS-CoV-2陽性と判定されたVHAの非入院退役軍人でした。曝露は、急性COVID-19に対するニルマトレルビル-リトナビル治療でした。

本研究では、心臓、肺、腎臓、血栓塞栓、消化管、神経、精神、筋骨格系、内分泌、および一般的な状態や症状を含む31の潜在的なCOVID-19後遺症の治療後31~180日または一致した指標日における累積発生率と、曝露との関連性について検証されました。

試験結果から明らかになったことは?

参加者の86%は男性で、年齢中央値は66歳、17.5%はワクチン未接種でした。ベースライン特性は、ニルマトレルビル-リトナビル投与群とマッチさせた未投与の比較群の間でバランスがとれていました。

静脈血栓塞栓症および肺塞栓症の複合リスクの低下(サブハザード比 0.65、95%CI 0.44~0.97;累積罹患率差 -0.29%ポイント、95%CI -0.52 ~ -0.05%ポイント)を除き、個別または臓器系別に検討したほとんどのCOVID-19後遺症の罹患率において、ニルマトルビル-リトナビル投与群(n=9,593)とマッチさせた未治療の比較群との間に差は認められませんでした。

コメント

SARS-CoV-2感染によるCOVID-19の終息は困難であり、withコロナあるいはPostコロナ時代に突入しています。特に課題となっているのが、COVID-19後遺症であり、発症リスクを低減させる治療薬が求められています。

さて、米国の退役軍人を対象としたレトロスペクティブ標的試験エミュレーション研究の結果、可能性のある31のCOVID-19後遺症のうち、ニルマトレルビル-リトナビルによって減少すると思われたのは複合血栓塞栓イベントのみでした。COVID-19に伴うサイトカインストームにより、血栓塞栓イベントの発症リスクが増加することから、ニルマトレルビル-リトナビルにより、発症リスク低減と関連していると考えられます。

ただし、本試験の対象となったのは米国の退役軍人であり、86%が男性であることから他の国や地域に試験結果を外挿することは困難かもしれません。追試が求められます。

続報に期待。

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まとめ:可能性のある31のCOVID-19後遺症のうち、ニルマトレルビル-リトナビルによって減少すると思われたのは複合血栓塞栓イベントのみであった。

根拠となった試験の抄録

背景:COVID-19は、急性感染後の多くのCOVID-19後遺症(PCC)の発症に関連している。急性COVID-19の治療に用いられる経口抗ウイルス薬のPCC発症予防効果に関する情報は限られている。

目的:ニルマトレルビル-リトナビルによるCOVID-19の外来治療のPCC予防効果を測定すること。

試験デザイン:ニルマトレルビル-リトナビルを投与されたマッチさせたコホートと無治療のコホートを比較するレトロスペクティブ標的試験エミュレーション研究

設定:退役軍人健康管理局(VHA)。

参加者: 2022年1月から7月までに重症COVID-19のリスクを有し、SARS-CoV-2陽性と判定されたVHAの非入院退役軍人。

介入: 急性COVID-19に対するニルマトレルビル-リトナビル治療。

測定:心臓、肺、腎臓、血栓塞栓、消化管、神経、精神、筋骨格系、内分泌、および一般的な状態や症状を含む31の潜在的なPCCの治療後31~180日または一致した指標日における累積発生率

結果:参加者の86%は男性で、年齢中央値は66歳、17.5%はワクチン未接種であった。ベースライン特性は、ニルマトレルビル-リトナビル投与群とマッチさせた未投与の比較群の間でバランスがとれていた。静脈血栓塞栓症および肺塞栓症の複合リスクの低下(サブハザード比 0.65、95%CI 0.44~0.97;累積罹患率差 -0.29%ポイント、95%CI -0.52 ~ -0.05%ポイント)を除き、個別または臓器系別に検討したほとんどのPCCの罹患率において、ニルマトレルビル-リトナビル投与群(n=9,593)とマッチさせた未治療の比較群との間に差は認められなかった。

限界:国際疾病分類第10版コードを用いたCOVID-19後遺症の把握は不正確である可能性がある。多くのアウトカムを評価した結果、偶然に複合血栓塞栓イベントとの偽の関連が生じた可能性がある。

結論:可能性のある31のCOVID-19後遺症のうち、ニルマトレルビル-リトナビルによって減少すると思われたのは複合血栓塞栓イベントのみであった。

主な資金源:米国退役軍人省

引用文献

Effectiveness of Nirmatrelvir-Ritonavir Against the Development of Post-COVID-19 Conditions Among U.S. Veterans : A Target Trial Emulation
George N Ioannou et al. PMID: 37903369 PMCID: PMC10620954 DOI: 10.7326/M23-1394
Ann Intern Med. 2023 Nov;176(11):1486-1497. doi: 10.7326/M23-1394. Epub 2023 Oct 31.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37903369/

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