心疾患リスク因子を有さない集団における血清尿酸値正常と心血管系疾患の関連性は?(中国の大規模コホート研究; J Am Heart Assoc. 2023)

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心疾患リスクを有さない集団における尿酸の影響とは?

尿酸値が基準値7.0mg/dLよりも高い高尿酸血症について、日本では、腎臓や心血管アウトカムの発生リスク増加の懸念から早期治療を推奨しています。一方で、米国や欧州では痛風発作がなければ治療の対象としないとするスタンスが一般的です。しかし、血清尿酸が正常値の健康な集団において、本当に心血管疾患(CVD)のリスクが低いとは限りません。

そこで今回は、CVDのリスク因子を有さない集団を対象に、SUA値とCVDおよびそのサブタイプとの関連を評価し、CVD予防に適した血清尿酸の目標値を決定することを目的に実施された中国の大規模コホート研究の結果をご紹介します。

CVDの発症がなく、CVDのリスク因子を有していない、ベースライン時の血清尿酸値が180~359μmol/L(3~6mg/dL)である25,284例がKailuan試験(炭鉱グループ)から登録されました。Cox比例ハザードモデルを適用し、CVDおよびそのサブタイプのリスクに関する調整済みハザード比(HR)および95%CIが算出されました。

試験結果から明らかになったことは?

中央値12.97年(四分位範囲 12.68〜13.16年)の追跡期間中に、1,007例の心血管疾患(CVD)が確認されました。

血清尿酸値CVD発生のハザード比
180~239μmol/L
(3~4mg/dL)
Reference
240~299μmol/L
(4~5mg/dL)
HR 1.12
(95%CI 0.96〜1.31
300~359μmol/L
(5~6mg/dL)
HR 1.28
(95%CI 1.08〜1.52

血清尿酸値の上昇に伴い、CVDの発症リスクが増加しました(傾向のP=0.0011)。血清尿酸値が180~239μmol/L(3~4mg/dL)の参加者と比較して、血清尿酸値が240~299μmol/L(4~5mg/dL)、300~359μmol/L(5~6mg/dL)ではCVDのHRはそれぞれ1.12(95%CI 0.96〜1.31)、1.28(95%CI 1.08〜1.52) となりました。

多変量調整スプライン回帰モデルでは、SUAとCVDのリスクとの間にJ字型の関連性が見られました。脳卒中と心筋梗塞についても同様の結果が得られました。

コメント

高尿酸血症が及ぼす影響については一貫した結果が得られていません。

さて、中国の大規模コホート研究の結果、高尿酸血症や他の伝統的なCVDリスク因子を有さない人の場合、血清尿酸値の上昇に伴いCVD発症リスクが上昇しました。したがって、CVDリスク因子を有さない集団においても高尿酸血症がCVD発生のリスク要因となる可能性が示されたことになります。

とはいえ、本試験は一部の国や地域の結果であり、あくまでも相関関係が示されたに過ぎません。さらに、コホート内のCVD発生率は約4%であること、リスク推定値であるハザード比の程度は小さいと考えられます。実臨床における患者負担や経済的な負担を評価するには不充分であり追試が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 中国の大規模コホート研究の結果、高尿酸血症や他の伝統的なCVDリスク因子を有さない人の場合、血清尿酸値の上昇に伴いCVD発症リスクが上昇したものの、そのリスクの程度は小さいかもしれない。

根拠となった試験の抄録

背景:血清尿酸(SUA)が正常値の健康な人が、本当に心血管疾患(CVD)のリスクが低いとは限らない。本研究では、CVDの危険因子を有さない人を対象に、SUA値とCVDおよびそのサブタイプとの関連を評価し、CVD予防に適したSUAの目標値を決定することを目的とした。

方法:CVDの発症がなく、CVDの危険因子を有していない、ベースライン時のSUA値が180~359μmol/L(3~6mg/dL)である25,284例をKailuan試験(炭鉱グループ)から登録した。Cox比例ハザードモデルを適用し、CVDおよびそのサブタイプのリスクに関する調整済みハザード比(HR)および95%CIを算出した。

結果:中央値12.97年(四分位範囲 12.68〜13.16年)の追跡期間中に、1,007例のCVDを確認した。SUA値の上昇に伴い、CVDの発症リスクが増加した(傾向のP=0.0011)。SUA値が180~239μmol/L(3~4mg/dL)の参加者と比較して、SUA値が240~299μmol/L(4~5mg/dL)、300~359μmol/L(5~6mg/dL)ではCVDのHRはそれぞれ1.12(95%CI 0.96〜1.31)、1.28(95%CI 1.08〜1.52) となった。多変量調整スプライン回帰モデルでは、SUAとCVDのリスクとの間にJ字型の関連性が見られた。脳卒中と心筋梗塞についても同様の結果が得られた。

結論:高尿酸血症や他の伝統的なCVD危険因子を有さない人の場合、SUA値の上昇に伴いCVD発症リスクが上昇した。これらの知見は、他の伝統的なCVDリスク因子とともに、SUA値上昇に対する原始的な予防の重要性を強調するものであった。

キーワード:心血管疾患、原始予防、血清尿酸、従来のCVD危険因子。

引用文献

Association of Normal Serum Uric Acid Level and Cardiovascular Disease in People Without Risk Factors for Cardiac Diseases in China
Xue Tian et al. PMID: 37183869 DOI: 10.1161/JAHA.123.029633
J Am Heart Assoc. 2023 May 16;12(10):e029633. doi: 10.1161/JAHA.123.029633. Epub 2023 May 15.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37183869/

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