糖尿病患者におけるHbA1cの長期的変動は腎関連アウトカムの発生リスクと相関しますか?(観察研究; Am J Kidney Dis. 2023)

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糖尿病患者におけるHbA1cの長期的変動が及ぼす影響は?

血糖値の変動が大きいと血管への負荷が大きくなり、血管合併症のリスク増加の可能性が報告されています(PMID: 30040822)。したがって、グルコーススパイクなどの血糖変動が大きくなることと、患者の予後不良が関連している可能性がありますが、腎アウトカムについては充分に検証されていません。

そこで今回は、糖尿病患者におけるHbA1cの長期的な受診間変動と腎臓の有害転帰リスクとの関連を明らかにした観察研究の結果をご紹介します。

本試験では、スウェーデンのストックホルムで日常診療を受けている糖尿病の成人93,598例が対象となりました。

ベースラインおよび時間変化するHbA1c変動スコア(HbA1c variability score, HVS:3年間のウィンドウの間に0.5%[5.5mmol/mol]を超えて変動する総HbA1c測定値の割合)のカテゴリーにより層別化され、腎臓アウトカム発生リスクとの関連性について比較検討されました(0~20%、21~40%、41~60%、61~80%、81~100%、基準群:0~20%)。

本試験のアウトカムはCKDの進行(50%以上のeGFR低下と腎不全の複合)、AKI(KDIGO基準による臨床診断または一過性のクレアチニン上昇による)、およびアルブミン尿の増悪でした。

分析手法として多変量Cox比例ハザード回帰が使用されました。

試験結果から明らかになったことは?

HbA1cの変動が小さい集団(HbA1c変動スコア、HVS:0〜20%)と比較して、変動が大きくなると、平均HbA1cを超えて腎臓の有害転帰のリスクが高くなることが明らかとなりました。

ベースラインのHbA1c変動率81~100%の患者における調整後ハザード比 aHR
(vs. 0〜20%)
CKD進行aHR 1.6(95%CI 1.47~1.74
AKIaHR 1.23(95%CI 1.16〜1.3
アルブミン尿悪化aHR 1.28(95%CI 1.21〜1.36

例えば、ベースラインのHbA1c変動率が81~100%の患者では、調整後のHRは、CKD進行が1.6(95%CI 1.47~1.74)、AKIが1.23(1.16〜1.3)、アルブミン尿悪化が1.28(1.21〜1.36)でした。

結果は、サブグループ(糖尿病サブタイプ、ベースラインeGFRまたはアルブミン尿カテゴリー)、時間変動解析、時間加重平均HbA1cまたは変動性の代替指標を含む感度解析で一貫していました。

コメント

外来受診間のHbA1c変動による腎アウトカムへの影響については充分に検討されていません。

さて、スウェーデンの観察研究の結果、3年間という長期的な受診間ごとのHbA1cの変動が大きいことは、CKD進行、AKI、アルブミン尿悪化のリスクと一貫して関連しているようでした。

ただし、本試験は観察研究であり、用いられたのはスウェーデンのストックホルムにおける日常診療請求データです。本データベースには、食事内容や摂取カロリー、BMI、治療薬の変更、糖尿病罹患期間に関する情報などが含めれていないようです。特に治療薬の変更および糖尿病罹患期間は患者予後に大きく影響すると考えられることから、結果の解釈に注意を要します。

今後の検証結果により同様あるいは異なる知見が得られるかもしれません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 観察研究の結果、長期的な受診間ごとのHbA1cの変動が大きいことは、CKD進行、AKI、アルブミン尿の悪化のリスクと一貫して関連しているようであった。

根拠となった試験の抄録

根拠・目的:糖尿病患者におけるHbA1cの長期的な受診間変動と腎臓の有害転帰のリスクとの関連を明らかにすること。

研究デザイン:観察研究

試験設定・参加者:スウェーデンのストックホルムで日常診療を受けている糖尿病の成人93,598例。

曝露と予測因子:ベースラインおよび時間変化するHbA1c変動スコア(HbA1c variability score, HVS:3年間のウィンドウの間に0.5%[5.5mmol/mol]を超えて変動する総HbA1c測定値の割合)のカテゴリー:0~20%、21~40%、41~60%、61~80%、81~100%(基準群:0~20%)。

アウトカム:CKDの進行(50%以上のeGFR低下と腎不全の複合)、AKI(KDIGO基準による臨床診断または一過性のクレアチニン上昇による)、およびアルブミン尿の増悪

分析手法:多変量Cox比例ハザード回帰。

結果:HbA1cの変動が小さい集団(HVS 0-20%)と比較して、変動が大きくなると、平均HbA1cを超えて腎臓の有害な転帰のリスクが高くなることがわかった。例えば、ベースラインのHbA1c変動率が81~100%の患者では、調整後のHRは、CKD進行が1.6(95%CI 1.47~1.74)、AKIが1.23(1.16〜1.3)、アルブミン尿悪化が1.28(1.21〜1.36)となった。結果は、サブグループ(糖尿病サブタイプ、ベースラインeGFRまたはアルブミン尿カテゴリー)、時間変動解析、時間加重平均HbA1cまたは変動性の代替指標を含む感度解析で一貫していた。

試験の限界:観察研究、請求データの限界、食事、BMI、薬の変更、糖尿病期間に関する情報の欠如。

結論:長期的な受診間ごとのHbA1cの変動が大きいことは、CKD進行、AKI、アルブミン尿の悪化のリスクと一貫して関連している。

キーワード:AKI、CKD進行、糖尿病、HbA1c変動、アルブミン尿悪化

引用文献

Long-term Visit-to-Visit Variability in Hemoglobin A1c and Kidney-Related Outcomes in Persons With Diabetes
Yang Xu et al. PMID: 37182597 DOI: 10.1053/j.ajkd.2023.03.007
Am J Kidney Dis. 2023 May 12;S0272-6386(23)00628-5. doi: 10.1053/j.ajkd.2023.03.007. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37182597/

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