重症アルコール性肝炎における抗生物質の予防的投与は死亡率を低減できるのか?(DB-RCT; JAMA. 2023)

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重症アルコール性肝炎の入院患者に対するアモキシシリン-クラブラン酸の予防的投与は有効なのか?

アルコール性肝炎の入院患者に対して、予防的な抗菌薬投与が行われることがあります。一方で重症アルコール性肝炎の入院患者に対する予防的抗生物質の有益性は不明です。

そこで今回は、重症アルコール性肝炎で入院し、プレドニゾロンで治療を受けている患者の死亡率に対するアモキシシリン・クラブラン酸塩の有効性をプラセボと比較検証したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本試験は、フランスとベルギーの25施設で2015年6月13日から2019年5月24日まで、生検で裏付けられた重症アルコール関連肝炎(マドレー機能スコア≧32、末期肝疾患モデル[MELD]スコア≧21)の患者を対象に、多施設共同ランダム化二重盲検臨床試験が実施されました。すべての患者が180日間フォローアップされました(最終フォローアップは2019年11月19日)。

患者は、プレドニゾロンとアモキシシリン・クラブラン酸塩の併用投与(n=145)またはプレドニゾロンとプラセボの併用投与(n=147)にランダムに割り付けられました(1:1)。

本試験の主要アウトカムは、60日後の全死因死亡率でした。副次的アウトカムは、90日および180日時点の全死亡、感染症の発症率、肝腎症候群の発症率、60日時点のMELDスコアが17未満の参加者の割合、7日時点のLilleスコアが0.45未満の参加者の割合でした。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化された292例の患者(平均年齢 52.8[SD 9.2]歳、女性 80例[27.4%])中、284例(97%)が解析対象となりました。

アモキシシリン・クラブラン酸塩群プラセボ群群間差あるいはハザード比
60日後の全死亡率17.3%
P=0.33
21.3%群間差 -4.7%(95%CI -14.0%~4.7%
ハザード比 0.77(95%CI 0.45~1.31

アモキシシリン・クラブラン酸塩とプラセボにランダム化された参加者の間で60日死亡率に有意差はありませんでした(アモキシシリン・クラブラン酸塩群 17.3%、プラセボ群 21.3%、P=0.33;群間差 -4.7、95%CI -14.0%~4.7%;ハザード比 0.77、95%CI 0.45~1.31)。

60日後の感染率は、アモキシシリン・クラブラン酸塩群で有意に低いことが示されました(29.7% vs. 41.5%;平均差 -11.8%、95%CI -23.0 ~ -0.7%;サブハザード比 0.62、95%CI 0.41~0.91;P=0.02)。残りの3つの副次的アウトカムには、いずれも有意差はありませんでした。

最も多かった重篤な有害事象は、肝不全(アモキシシリン・クラブラン酸塩群 25、プラセボ群 20)、感染症(アモキシシリン・クラブラン酸塩群 23、プラセボ群 46)、胃腸障害(アモキシシリン・クラブラン酸塩群 15、プラセボ群 21)関連でした。

コメント

重症アルコール性肝炎の入院患者に対して、抗菌薬の予防的投与の効果は明らかにされていません。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果によれば、重症アルコール性肝炎で入院した患者において、アモキシシリン・クラブラン酸塩とプレドニゾロンの併用は、プレドニゾロン単独と比較して2ヵ月生存率を改善しませんでした(ハザード比 0.77、95%CI 0.45~1.31)。副次的評価項目である60日後の感染率は、アモキシシリン・クラブラン酸塩で有意に低いことが示されました(サブハザード比 0.62、95%CI 0.41~0.91)。

死亡リスクについて有意な差は認められませんでしたが、死亡原因の内訳について解析してみないことには次のResearch Questionを明らかにできません。また抗菌薬としてアモキシシリン-クラブラン酸塩を選択した妥当性についても考察が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 重症アルコール性肝炎で入院した患者において、アモキシシリン・クラブラン酸塩とプレドニゾロンの併用は、プレドニゾロン単独と比較して2ヵ月生存率を改善しなかった。

次のページに根拠となった論文情報を掲載しています。

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