根拠となった試験の抄録
研究の意義：マグネシウムは、CKDの動物モデルにおいて血管石灰化を防ぐことが示されている。また、血清マグネシウム値の低下は、CKDにおける心血管イベントの高リスクと関連している。そこでランダム化二重盲検プラセボ対照試験において、透析前のCKD患者における血管石灰化に対するマグネシウム補給とプラセボとの効果を検討した。マグネシウムを投与された試験参加者では、プラセボを投与された試験参加者と比較して血漿マグネシウムが有意に増加したものの、マグネシウムの補充は試験参加者の血管石灰化の進行を遅らせることはなかった。さらに、マグネシウムを投与した群では、重篤な有害事象の発生率が高いことが示された。マグネシウムの補充だけでは血管石灰化の進行を遅らせるには不充分であり、CKDにおける心血管疾患のリスクを低減するためには、他の治療戦略が必要かもしれない。
背景：血清マグネシウム濃度の上昇は、CKD患者における心血管イベントのリスク低下と関連している。また、マグネシウムはCKDの動物モデルにおいて血管石灰化を予防する。
方法：マグネシウム経口補充がCKDにおける血管石灰化の進行を遅らせるかどうかを調べるために、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間臨床試験を実施した。eGFRが15～45mL/minの被験者148例を登録し、水酸化マグネシウム15mmolを1日2回経口投与する群とマッチングプラセボを12ヵ月間投与する群にランダムに割り付けた。
主要評価項目は、ベースラインの冠動脈石灰化（CAC）スコア、年齢、糖尿病で調整した12ヵ月後のCACスコアの群間差であった。
結果：合計75例の被験者にマグネシウムが投与され、73例にプラセボが投与された。ベースライン時のeGFR中央値は25mL/min、ベースライン時のCACスコア中央値はマグネシウム群で413点、プラセボ群で274点であった。血漿マグネシウムはマグネシウム群で試験中に有意に増加したにもかかわらず、ベースライン調整後のCACスコアは12ヵ月後に両群間で有意差はなかった。ベースライン時のCAC>0、糖尿病、血清石灰化傾向の3分位による事前規定サブグループ解析は、主要結果を有意に変化させなかった。消化器系の副作用を経験した被験者のうち、マグネシウム投与群では35例、プラセボ投与群では9例であった。マグネシウム投与群では5例の死亡者と6例の心血管イベントが発生したのに対し、プラセボ投与群では死亡者2例、心血管イベントは認められなかった。
結論：血漿マグネシウムの有意な増加にもかかわらず、マグネシウムの12ヵ月間の補充は、CKDにおける血管石灰化の進行を遅らせることはなかった。
臨床試験登録：clinicaltrials.gov. NCT02542319
引用文献
The Effect of Magnesium Supplementation on Vascular Calcification in CKD: A Randomized Clinical Trial (MAGiCAL-CKD)
Iain Bressendorff et al. PMID: 36749131 DOI: 10.1681/ASN.0000000000000092
J Am Soc Nephrol. 2023 May 1;34(5):886-894. doi: 10.1681/ASN.0000000000000092. Epub 2023 Feb 2.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36749131/
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