漢方薬である血必浄により敗血症患者の28日死亡率が低下する?(DB-RCT; EXIT-SEP試験; JAMA Intern Med. 2023)

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血必浄は敗血症患者の死亡リスクを低減できるのか?

これまでの研究で、漢方薬ベースの点滴製剤である血必浄注射液(Xuebijing, XBJ:紅花・赤芍・川きゅう・丹参・当帰を配合)が敗血症患者の死亡率を低下させる可能性が示唆されています。しかし、検証は充分ではないことから、より質の高い前向き研究の実施が求められていました。

そこで今回は、敗血症患者の28日後の死亡率に対するXBJとプラセボの効果を明らかにすることを目的に実施されたEfficacy of Xuebijing Injection in Patients With Sepsis(EXIT-SEP)試験の結果をご紹介します。

本試験は、45施設の集中治療室で行われた多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験で、48時間以内に敗血症(Sepsis 3.0*)を発症した患者1,817例がランダムに参加しました。18歳から75歳で、Sequential Organ Failure Assessmentのスコアが2~13の患者が登録されました。本試験は、2017年10月から2019年6月まで実施され、フォローアップの最終日は2019年7月26日、データ解析は2020年1月から2022年8月まで実施されました。
Sepsis-3に基づく敗血症の定義:
・敗血症は感染症に対して生体が制御不能な状態となり致死的な臓器不全を発症している状態を指す。
・臓器障害は感染によりSOFAスコアの合計が2点以上、急激に上昇した場合とする。
・敗血症は感染に対する生体反応が自身の組織や臓器を障害している致死的な状態を指す。
・感染症を疑う患者において、長期ICU滞在や入院中死亡が予想される患者はqSOFAで判別することができる。

試験参加者は、XBJ(100mL、n=911)または容量を合わせた生理食塩水プラセボ(n=906)の12時間ごとの静脈内注入を5日間行う群にランダムに割り付けられました。その他、地域の敗血症管理ガイドラインと、敗血症と敗血症性ショックの管理のための国際ガイドライン2016に従いました。具体的には、抗生物質の早期投与、緊急輸液療法と血管圧迫薬の併用による動脈血圧の維持、感染源の早期治療が推奨されています。

本試験の主要アウトカムは28日死亡率でした。

試験結果から明らかになったことは?

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2804120より引用

ランダム化された1,817例の患者(平均年齢 56.5[13.5]歳、男性 1,199例[66.0%])のうち、1,760例(96.9%)が試験を完了しました。

プラセボ群XBJ群絶対リスク差
28日死亡率882例中230例
[26.1%]
878例中165例
[18.8%]
P<0.001
7.3(95%CI 3.4〜11.2)%
(NNT=14)

これらの患者において、28日死亡率はプラセボ群とXBJ群で有意差が示されました(それぞれ882例中230例[26.1%] vs. 878例中165例[18.8%]、P<0.001)。絶対リスク差は7.3(95%CI 3.4〜11.2)%でした(NNT=14)。

有害事象の発生率は、プラセボ群878例中222例(25.3%)、XBJ群872例中200例(22.9%)でした。

コメント

敗血症は、感染症に対する炎症反応の異常によって引き起こされ、多臓器機能障害を伴って急速に悪化する全身疾患であり、依然として世界的な死亡原因の1つとなっています。敗血症に対して数多くの治験が大規模ランダム化臨床試験で失敗し、死亡率に対する大きな効果を示すものはありませんでした(PMID: 24581450PMID: 28284298PMID: 25885654PMID: 24717456)。

血必浄注射液(XBJ)は、漢方薬をベースにした点滴製剤で、2004年に国家医療品監督管理局(NMPA、中国)から敗血症および多臓器不全症候群の治療薬として認可されました(PMID: 32860891)。XBJは、エンドトキシンに対する拮抗作用と、エンドトキシンに刺激された単球/マクロファージが産生する内因性炎症メディエーターの無秩序な放出を抑制する作用を有し、敗血症における保護機構と関連する様々な作用を有しているようです。ランダム化比較試験やメタ解析の結果、XBJが敗血症患者の良好な転帰と生存に有意に関連することが示唆されていますが(PMID: 31162191PMID: 29860133PMID: 27852528)、より規模の大きいランダム化比較試験での検証が求められていました。

さて、敗血症患者を対象としたこのランダム化臨床試験において、漢方薬である血必浄注射液※の投与はプラセボと比較して28日死亡率を低下させました。漢方薬でここまでの結果を示したものは、これまでなかった認識です。とはいえ、より外挿性の高いリアルワールドデータを含む観察研究での結果が待たれるところです。

続報に期待。

※2023年5月現在、日本では未承認の薬剤です。

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☑️まとめ☑️ 敗血症患者を対象としたこのランダム化臨床試験において、漢方薬である血必浄注射液の投与はプラセボと比較して28日死亡率を低下させた。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:これまでの研究で、漢方薬ベースの点滴製剤である血必浄注射液(Xuebijing, XBJ:紅花・赤芍・川きゅう・丹参・当帰を配合)が敗血症患者の死亡率を低下させる可能性が示唆されている。

目的:敗血症患者の28日後の死亡率に対するXBJとプラセボの効果を明らかにすること。

試験デザイン、設定、参加者:Efficacy of Xuebijing Injection in Patients With Sepsis(EXIT-SEP)試験は、45施設の集中治療室で行われた多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験で、48時間以内に敗血症(Sepsis 3.0*)を発症した患者1,817例がランダムに参加した。18歳から75歳で、Sequential Organ Failure Assessmentのスコアが2~13の患者が登録された。本試験は、2017年10月から2019年6月まで実施された。フォローアップの最終日は2019年7月26日であった。データ解析は2020年1月から2022年8月まで実施した。
Sepsis-3に基づく敗血症の定義:
・敗血症は感染症に対して生体が制御不能な状態となり致死的な臓器不全を発症している状態を指す。
・臓器障害は感染によりSOFAスコアの合計が2点以上、急激に上昇した場合とする。
・敗血症は感染に対する生体反応が自身の組織や臓器を障害している致死的な状態を指す。
・感染症を疑う患者において、長期ICU滞在や入院中死亡が予想される患者はqSOFAで判別することができる。

介入: XBJ(100mL、n=911)または容量を合わせた生理食塩水プラセボ(n=906)の12時間ごとの静脈内注入を5日間行う群にランダムに割り付けた。

主要アウトカムと測定方法:主要アウトカムは28日死亡率であった。

結果:ランダム化された1,817例の患者(平均年齢 56.5[13.5]歳、男性 1,199例[66.0%])のうち、1,760例(96.9%)が試験を完了した。これらの患者において、28日死亡率はプラセボ群とXBJ群で有意差があった(それぞれ882例中230例[26.1%] vs. 878例中165例[18.8%]、P<0.001)。絶対リスク差は7.3(95%CI 3.4〜11.2)%であった。有害事象の発生率は、プラセボ群878例中222例(25.3%)、XBJ群872例中200例(22.9%)であった。

結論と関連性:敗血症患者を対象としたこのランダム化臨床試験において、XBJの投与はプラセボと比較して28日死亡率を低下させた。

試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier. NCT03238742

引用文献

Effect of an Herbal-Based Injection on 28-Day Mortality in Patients With Sepsis: The EXIT-SEP Randomized Clinical Trial
Songqiao Liu et al. PMID: 37126332 DOI: 10.1001/jamainternmed.2023.0780
JAMA Intern Med. 2023 May 1. doi: 10.1001/jamainternmed.2023.0780. Online ahead of print.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37126332/

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