米国における小児および青年の外来での抗インフルエンザウイルス剤使用の傾向は?(横断研究; Pediatrics. 2023)

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インフルエンザ抗ウイルス薬の適正使用とは?

インフルエンザ抗ウイルス薬は、症状持続期間が2日未満の小児やインフルエンザ合併症のリスクが高い小児の転帰を改善することが報告されています。しかし、小児集団におけるインフルエンザ抗ウイルス薬の実際の処方傾向は不明です。

そこで今回は、2010年7月1日~2019年6月30日にIBM Marketscan Commercial Claims and Encounters Databaseに登録された18歳未満の患者における外来および救急部での処方請求を対象とし、インフルエンザ抗ウイルス薬の処方傾向について検討した横断研究の結果をご紹介します。

インフルエンザ抗ウイルス薬の使用は、オセルタミビル、バロキサビル、ザナミビルの調剤と定義されました。

本研究の主要転帰は、登録小児1,000人当たりの抗ウイルス薬調剤率でした。副次的転帰は、インフルエンザ診断 1,000例あたりの抗ウイルス薬調剤率と、インフレ調整後の抗ウイルス薬費用でした。転帰は、年齢、急性治療と予防治療、インフルエンザシーズン、地域によって層別化後に算出されました。

試験結果から明らかになったことは?

解析には、2010年から2019年の間に行われた1,416件の抗ウイルス薬調剤が含まれました。

オセルタミビルが最も処方頻度の高い抗ウイルス薬でした(99.8%)。調剤率は、登録小児1,000人当たり4.4~48.6人でした。

治療率は、年長児(12~17歳)、2017~2018年のインフルエンザシーズン、および東南中部地域で最も高いことが示されました。

インフルエンザ合併症のリスクが高い幼児(2歳未満)におけるガイドラインに沿った抗ウイルス薬の使用率は低いことが示されました(40%未満)。

インフレ調整後の処方費用は208,458,979ドルであり、費用の中央値は111~151ドルでした。

コメント

抗インフルエンザ薬は、健康な成人において、インフルエンザの罹患日数を約1日短縮することが報告されています。一方、より重症化しやすく、インフルエンザ合併症のリスクが高い小児における抗インフルエンザ薬の使用は、患者転帰に影響が大きいことから、その使用率の把握が重要です。

さて、横断研究の結果、小児におけるインフルエンザ抗ウイルス薬の使用には大きなばらつきがあり、使用量が不足していることが示されました。特にインフルエンザ合併症のリスクが高い幼児(2歳未満)において、診療ガイドラインに沿った抗ウイルス薬の使用率は低いことが示されました(40%未満)。

患者転帰への影響が大きいことから、インフルエンザ合併症のリスクが高い2歳未満の幼児に対しては、抗インフルエンザ薬の使用を考慮した方が良さそうですが、抗インフルエンザ薬を使用した場合と、使用しなかった場合とでの比較検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 横断研究の結果、小児におけるインフルエンザ抗ウイルス薬の使用には大きなばらつきがあり、使用量が不足している。特にインフルエンザ合併症のリスクが高い幼児(2歳未満)におけるガイドラインに沿った抗ウイルス薬の使用率は低かった(40%未満)。

根拠となった試験の抄録

背景:インフルエンザ抗ウイルス薬は、症状持続期間が2日未満の小児やインフルエンザ合併症のリスクが高い小児の転帰を改善する。小児集団におけるインフルエンザ抗ウイルス薬の実際の処方は不明である。

方法:2010年7月1日~2019年6月30日にIBM Marketscan Commercial Claims and Encounters Databaseに登録された18歳未満の患者における外来および救急部での処方請求を対象とした横断研究を行った。インフルエンザ抗ウイルス薬の使用は、オセルタミビル、バロキサビル、ザナミビルの調剤と定義した。
主要転帰は、登録小児1,000人当たりの抗ウイルス薬調剤率であった。副次的転帰は、インフルエンザ診断 1,000例あたりの抗ウイルス薬調剤率と、インフレ調整後の抗ウイルス薬費用とした。転帰は、年齢、急性治療と予防治療、インフルエンザシーズン、地域によって層別化して算出した。

結果:解析には、2010年から2019年の間に行われた1,416件の抗ウイルス薬調剤が含まれた。オセルタミビルが最も処方頻度の高い抗ウイルス薬であった(99.8%)。調剤率は、登録小児1,000人当たり4.4~48.6人であった。治療率は、年長児(12~17歳)、2017~2018年のインフルエンザシーズン、および東南中部地域で最も高かった。インフルエンザ合併症のリスクが高い幼児(2歳未満)におけるガイドラインに沿った抗ウイルス薬の使用率は低かった(40%未満)。インフレ調整後の処方費用は208,458,979ドルであり、費用の中央値は111~151ドルであった。

結論:小児におけるインフルエンザ抗ウイルス薬の使用には大きなばらつきがあり、使用量が不足している。これらの知見は、小児のインフルエンザ予防と治療における改善の機会を明らかにするものである。

引用文献

Trends in Outpatient Influenza Antiviral Use Among Children and Adolescents in the United States
James W Antoon et al. PMID: 37953658 PMCID: PMC10681853 (available on 2024-12-01) DOI: 10.1542/peds.2023-061960
Pediatrics. 2023 Dec 1;152(6):e2023061960. doi: 10.1542/peds.2023-061960.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37953658/

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