人工膝関節全置換術を受ける患者におけるカルバゾクロムの止血および抗炎症効果はどのくらい?(RCT; J Arthroplasty. 2020)

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人工膝関節全置換術(TKA)に対する止血療法にはトラネキサム酸単独療法とカルバゾクロム併用療法、どちらが良いのか?

人工膝関節全置換術(TKA)後の術後回復期には、術後貧血や同種輸血、手術に対するストレス免疫反応などが関与しています。スルホン酸カルバゾクロムナトリウム(カルバゾクロム)はいくつかの機序により出血を抑制することが報告されていますが、TKA後の予後に対するCSSの影響は不明です。

そこで今回は、カルバゾクロムとトラネキサム酸(TXA)の併用が術後の貧血、輸血、炎症反応に及ぼす影響を評価したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本研究は、初回の片側TKAを施行された患者200例を対象としたランダム化プラセボ対照試験であり、A群はTXAと局所及び静注CSS、B群はTXAと局所CSSのみ、C群はTXAと静注CSS、D群はTXAのみの4群に分けられました。

試験結果から明らかになったことは?

総失血量は、A群(609.92 ± 221.24mL)、B群(753.16 ± 247.67mL)、C群(829.23 ± 297.45mL)で、D群(1158.26 ± 334.13mL、P<0.05)より少ないことが示されました。また、D群と比較して、A、B、C群の術後腫脹率、炎症性バイオマーカー値、Visual analog scale疼痛スコア、退院時可動域が有意に改善されました(P<0.05)。

血栓塞栓症の合併症は発生しませんでした。輸血率、術中出血量、血小板数、平均在院日数は4群間で差がありませんでした(P>0.05)。

コメント

術後の止血療法として、トラネキサム酸やカルバゾクロムが使用されますが、併用療法との効果比較については充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、カルバゾクロムとトラネキサム酸の併用は、トラネキサム酸単独よりも周術期の出血量と炎症反応の抑制に有効であり、血栓塞栓症合併リスクを増加させないことが示されました。

カルバゾクロムとしては静注と局所製剤を併用した方が失血量は少なそうですが、日本では経口と静注製剤のみです。いずれにせよ、カルバゾクロムは低コストであり、トラネキサム酸単独よりは術後良好なようですので、カルバゾクロムを併用した方が良さそうです。

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☑まとめ☑ カルバゾクロムとトラネキサム酸の併用は、トラネキサム酸単独よりも周術期の出血量と炎症反応の抑制に有効であり、血栓塞栓症合併リスクを増加させないことが示された。

根拠となった試験の抄録

背景:人工膝関節全置換術(TKA)後の術後回復には、術後貧血、同種輸血、手術に対するストレス免疫反応などが関与している。スルホン酸カルバゾクロムナトリウム(CSS)はいくつかの機序により出血を抑制する。我々は、CSSとトラネキサム酸(TXA)の併用が術後の貧血、輸血、炎症反応に及ぼす影響を評価した。

方法:本研究は、初回の片側TKAを施行された患者200例を対象としたランダム化プラセボ対照試験として計画された。A群はTXAと局所及び静注CSS、B群はTXAと局所CSSのみ、C群はTXAと静注CSS、D群はTXAのみの4群に分けられた。

結果:総失血量は、A群(609.92 ± 221.24mL)、B群(753.16 ± 247.67mL)、C群(829.23 ± 297.45mL)で、D群(1158.26 ± 334.13mL、P<0.05)より少なかった。また、D群と比較して、A、B、C群の術後腫脹率、炎症性バイオマーカー値、Visual analog scale疼痛スコア、退院時可動域が有意に改善された(P<0.05)。血栓塞栓症の合併症は発生しなかった。輸血率、術中出血量、血小板数、平均在院日数は4群間で差がなかった(P>0.05)。

結論:カルバゾクロムとトラネキサム酸の併用は、トラネキサム酸単独よりも周術期の出血量と炎症反応の抑制に有効であり、血栓塞栓症合併リスクを増加させないことが示された。

キーワード:出血、スルホン酸カルバゾクロムナトリウム、炎症、人工膝関節全置換術、トラネキサム酸

引用文献

Hemostatic and Anti-Inflammatory Effects of Carbazochrome Sodium Sulfonate in Patients Undergoing Total Knee Arthroplasty: A Randomized Controlled Trial
Yue Luo et al. PMID: 31471180 DOI: 10.1016/j.arth.2019.07.045
J Arthroplasty. 2020 Jan;35(1):61-68. doi: 10.1016/j.arth.2019.07.045. Epub 2019 Aug 6.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31471180/

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