体液過剰を伴う急性代償性心不全におけるループ利尿薬へのアセタゾラミド追加は有効ですか?(DB-RCT; ADVOR試験; N Engl J Med. 2022)

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アセタゾラミドはループ利尿薬による急性代償性心不全のうっ血除去効果を増強する?

急性代償性心不全の治療は、一般的に入院を必要とすることが多く、酸素吸入や強心薬を使用します。また心浮腫(うっ血)が認められることが多く、ループ利尿薬をはじめとする利尿薬を使用しますが、治療抵抗性となる症例も報告されています。

近位尿細管ナトリウム再吸収を抑制する炭酸脱水酵素阻害薬であるアセタゾラミドが、ループ利尿薬のうっ血除去効率を改善し、体液過剰を有する急性代償性心不全患者においてより多くの、より速い除水(うっ血除去)をもたらす可能性があるかは不明です。

そこで今回は、急性心不全で体液過剰の臨床徴候(すなわち、浮腫、胸水、心不全)を有する患者を対象に、ループ利尿薬へのアセタゾラミド追加効果について検証したADVOR試験の結果をご紹介します。

本試験は、多施設共同、並行群間、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験でした。体液過剰の臨床徴候を有し、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルが1000pg/ml以上またはB型ナトリウム利尿ペプチドレベルが250pg/ml以上であった急性心不全患者を、アセタゾラミド静注(500mg/日)または標準ループ利尿剤静注(経口維持量の2倍に相当)にプラセボを追加投与する群にランダムに割り付けました。ランダム化は左室駆出率(40%以下または40%以上)により層別化されました。

本試験の主要エンドポイントは、ランダム化後3日以内に体液過剰の徴候がなく、うっ血治療薬の増量が適応とならないうっ血除去の成功と定義された。副次的エンドポイントは、3ヵ月間のフォローアップ期間中のあらゆる原因による死亡または心不全による再入院の複合でした。また、安全性についても評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

合計519例の患者がランダム化を受けました。

アセタゾラミド群プラセボ群リスク比
(95%CI)
うっ血除去の成功108/256例
(42.2%)
79/259例
(30.5%)
1.46
1.17~1.82
P<0.001
あらゆる原因による死亡または
心不全による再入院
76/256例
(29.7%)
72/259例
(27.8%)
1.07
0.78~1.48

うっ血除去の成功は、アセタゾラミド群では256例中108例(42.2%)、プラセボ群では259例中79例(30.5%)で認められました(リスク比 1.46、95%信頼区間 [CI] 1.17~1.82;P<0.001)。あらゆる原因による死亡または心不全による再入院は、アセタゾラミド群では256例中76例(29.7%)に、プラセボ群では259例中72例(27.8%)に認められました(ハザード比 1.07、95%CI 0.78~1.48)。

アセタゾラミド投与は、より高い累積尿量およびナトリウム利尿と関連しており、より優れた利尿効果と一致する所見でした。

腎機能の悪化、低カリウム血症、低血圧、有害事象の発生率は、両群で同程度でした。

コメント

アセタゾラミドは腎上皮において炭酸脱水酵素の働きを抑制し、Na+、HCO3-の尿細管からの再吸収を抑制することによって利尿効果を示します。その効果は投与後6~12時間持続するとされています。日本において、アセタゾラミドは心性浮腫の適応を有していますが、急性代償性心不全患者におけるループ利尿薬へ追加した際の効果については充分に検討されていませんでした。

さて、本試験結果によれば、急性心不全患者において、ループ利尿薬にアセタゾラミドを追加することにより、うっ血の除去がより効果的に行われました。一方、あらゆる原因による死亡または心不全による再入院については差がありませんでした。

アセタゾラミドによる利尿作用は、チアジド系利尿薬やループ利尿薬と比較すると弱いことが知られていることから、急性代償性心不全患者における主治療薬になることはありませんが、本試験結果から、ループ利尿薬の補助薬として利用できることが示されました。今後の検討が認められますが、ループ利尿薬に抵抗性を示す急性代償性心不全患者に対する治療選択肢にもなりうるかもしれません。

続報に期待。

ちなみにアセタゾラミドの適応(2022年8月現在)は、剤形により異なりますが以下のとおりです;

緑内障、てんかん(他の抗てんかん薬で効果不十分な場合に付加)、肺気腫における呼吸性アシドーシスの改善、心性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症、メニエル病及びメニエル症候群、睡眠時無呼吸症候群

この他、注射薬については「脳梗塞、もやもや病等の閉塞性脳血管障害」における「脳循環予備能(安静時及び負荷時の脳血流量の増加)の検査(SPECT 又は非放射性キセノン脳血流動態検査)」を目的した使用が保険適応で認められています(日本核医学会)。

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✅まとめ✅ 急性心不全患者において、ループ利尿薬にアセタゾラミドを追加することにより、うっ血の除去がより効果的に行われた。

根拠となった試験の抄録

背景:近位尿細管ナトリウム再吸収を抑制する炭酸脱水酵素阻害薬であるアセタゾラミドがループ利尿薬の効率を改善し、体液過剰のある急性代償性心不全患者においてより多くの、より速い除水をもたらす可能性があるかは不明である。

方法:多施設共同、並行群間、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験において、急性心不全で体液過剰の臨床徴候(すなわち、浮腫、胸水、心不全)を有する患者を割り付けた。N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルが1000pg/ml以上またはB型ナトリウム利尿ペプチドレベルが250pg/ml以上であった急性心不全患者を、アセタゾラミド静注(500mg/日)または標準ループ利尿剤静注(経口維持量の2倍に相当)にプラセボを追加投与する群に割り付けた。ランダム化は左室駆出率(40%以下または40%以上)により層別化された。
主要エンドポイントは、ランダム化後3日以内に体液過多の徴候がなく、うっ血治療薬の増量が適応とならないうっ血除去の成功と定義された。副次的エンドポイントは、3ヵ月間のフォローアップ期間中のあらゆる原因による死亡または心不全による再入院の複合であった。また、安全性についても評価した。

結果:合計519例の患者がランダム化を受けた。うっ血除去の成功は、アセタゾラミド群では256例中108例(42.2%)、プラセボ群では259例中79例(30.5%)で認められた(リスク比 1.46、95%信頼区間 [CI] 1.17~1.82;P<0.001)。あらゆる原因による死亡または心不全による再入院は、アセタゾラミド群では256例中76例(29.7%)に、プラセボ群では259例中72例(27.8%)に認められた(ハザード比 1.07、95%CI 0.78~1.48)。アセタゾラミド投与は、より高い累積尿量およびナトリウム利尿と関連しており、より優れた利尿効果と一致する所見であった。腎機能の悪化、低カリウム血症、低血圧、有害事象の発生率は、両群で同程度であった。

結論:急性心不全患者において、ループ利尿薬にアセタゾラミドを追加することにより、うっ血がより効果的に行われた。

資金提供:ベルギー医療知識センター

ClinicalTrials.gov番号:NCT03505788

引用文献

Acetazolamide in Acute Decompensated Heart Failure with Volume Overload
Wilfried Mullens et al. PMID: 36027559 DOI: 10.1056/NEJMoa2203094
N Engl J Med. 2022 Aug 27. doi: 10.1056/NEJMoa2203094. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36027559/

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