貧血を呈する透析患者におけるダプロデュスタットの有効性・安全性はどのくらい?(Open-RCT; ASCEND-D試験; N Engl J Med. 2021)

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ダプロデュスタットの心血管安全性は?

腎臓の機能低下により腎臓からのエリスロポエチン分泌が減少することで、赤血球産生能が低下し貧血(腎性貧血)を呈します。

慢性腎臓病(CKD)患者においては、腎性貧血治療のために遺伝子組換えヒトエリスロポエチンおよびその誘導体製剤(ESA)が使用されていますが、ESAの使用により脳卒中、心筋梗塞、その他の有害事象のリスクを高める可能性が報告されています。低酸素誘導因子(HIF)プロリル水酸化酵素阻害剤(PHI)は、ヘモグロビン値の上昇において、赤血球造血刺激因子(ESA)と同等の効果があることがいくつかの試験で示唆されている。

このランダム化非盲検第3相試験では、透析を受けており、ヘモグロビン値が8.0~11.5g/デシリットルのCKD患者を、経口HIF-PHI(ダプロダスタット)または注射用ESA(血液透析を受けている場合はエポエチンアルファ、腹膜透析を受けている場合はダルベポエチンアルファ)の投与を受けるように割り付けた。
主要アウトカムは、ベースラインから28~52週目までのヘモグロビン(Hb)値の平均変化量(非劣性マージン:-0.75g/dL)と、主要有害心血管イベント(あらゆる原因による死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)の初回発生で、非劣性マージンは1.25でした。

試験結果から明らかになったことは?

合計2,964例のCKD患者がランダム化を受けました。ベースラインのHb値の平均(±SD)は、全体で10.4±1.0g/dLでした。

ベースラインから28~52週目までの
Hb値の平均(±SE)変化量
ダプロダスタット群0.28±0.02g/dL
ESA群0.10±0.02g/dL
 群間差0.18g/dL(95%CI 0.12~0.24
非劣性マージン -0.75g/dL

ベースラインから28~52週目までのヘモグロビン(Hb)値の平均(±SE)変化量は、ダプロダスタット群で0.28±0.02g/dL、ESA群で0.10±0.02g/dL(差 0.18g/dL、95%信頼区間(CI)0.12~0.24)であり、事前に規定した非劣性マージンである-0.75g/dLを満たしていました。

重大な心血管イベント
ダプロダスタット群25.2%(374/1,487例)
ESA群26.7%(394/1,477例)
 ハザード比0.93(95%CI 0.81~1.07

中央値2.5年の追跡期間中、重大な心血管イベントが発生したのは、ダプロダスタット群では1,487例中374例(25.2%)、ESA群では1,477例中394例(26.7%)であり(ハザード比 0.93、95%CI 0.81~1.07)、これもダプロダスタットの事前に規定した非劣性マージンを満たしていました。
☆絶対リスク減少(ARR)=1.5%
☆治療必要数(NNT)=67

その他の有害事象が発生した患者の割合は、両群で同程度でした。

コメント

エリスロポエチン製剤は、貧血症状を改善することから腎性貧血治療に使用されます。しかし、同時にエリスロポエチン使用による血栓塞栓症リスクがあることから、米国や英国では、心血管イベントの発生をアウトカムに設定した臨床試験を実施することで、安全性データを提出するよう求められています。

さて、本試験結果によれば、ダプロデュスタットはESAと比較して、ヘモグロビン値の変化および心血管アウトカムに関して非劣性でした。これまで心血管アウトカムについて検証されたHIF-PH阻害薬は、ロキサデュスタット、バダデュスタット、そしてダプロデュスタットです。

同種同効薬として、HIF-PH阻害薬間の比較は実施されないと考えられますので、現在あるデータから判断するしかありません。多剤との相互作用や用法、心血管安全性の観点から、ダプロデュスタットが使用しやすそうではあります。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 透析を受けているCKD患者において、ベースラインからのヘモグロビン値の変化および心血管アウトカムに関して、ダプロダスタットはESAに対して非劣性を示した。

根拠となった試験の抄録

背景:慢性腎臓病(CKD)患者において、貧血治療のために遺伝子組換えヒトエリスロポエチンおよびその誘導体を使用することは、脳卒中、心筋梗塞、その他の有害事象のリスクを高める可能性があると言われている。低酸素誘導因子(HIF)プロリル水酸化酵素阻害剤(PHI)は、ヘモグロビン値の上昇において、赤血球造血刺激因子(ESA)と同等の効果があることがいくつかの試験で示唆されている。

方法:このランダム化非盲検第3相試験では、透析を受けており、ヘモグロビン値が8.0~11.5g/dLのCKD患者を、経口HIF-PHI(ダプロダスタット)または注射用ESA(血液透析を受けている場合はエポエチンアルファ、腹膜透析を受けている場合はダルベポエチンアルファ)の投与を受けるように割り付けた。
主要アウトカムは、ベースラインから28~52週目までのヘモグロビン(Hb)値の平均変化量(非劣性マージン:-0.75g/dL)と、主要有害心血管イベント(あらゆる原因による死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)の初回発生で、非劣性マージンは1.25でした。

結果:合計2,964例の患者がランダム化を受けた。ベースラインのHb値の平均(±SD)は、全体で10.4±1.0g/dLであった。ベースラインから28~52週目までのヘモグロビン値の平均(±SE)変化量は、ダプロダスタット群で0.28±0.02g/dL、ESA群で0.10±0.02g/dL(差 0.18g/dL、95%信頼区間(CI)0.12~0.24)であり、事前に規定した非劣性マージンである-0.75g/dLを満たしていた。中央値2.5年の追跡期間中、主要な心血管イベントが発生したのは、ダプロダスタット群では1,487例中374例(25.2%)、ESA群では1,477例中394例(26.7%)であり(ハザード比 0.93、95%CI 0.81~1.07)、これもダプロダスタットの事前に規定した非劣性マージンを満たしていた。その他の有害事象が発生した患者の割合は、両群で同程度であった。

結論:透析を受けているCKD患者において、ベースラインからのヘモグロビン値の変化および心血管アウトカムに関して、ダプロダスタットはESAに対して非劣性を示した。

資金提供:グラクソ・スミスクライン社

ASCEND-D ClinicalTrials.gov番号:NCT02879305

引用文献

Daprodustat for the Treatment of Anemia in Patients Undergoing Dialysis
Ajay K Singh et al. PMID: 34739194 DOI: 10.1056/NEJMoa2113379
N Engl J Med. 2021 Nov 5. doi: 10.1056/NEJMoa2113379. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34739194/

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