慢性腎臓病における血管石灰化に対するマグネシウム補給の効果はどのくらいですか?(小規模DB-RCT; MAGiCAL-CKD試験; J Am Soc Nephrol. 2023)

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マグネシウム経口補給がCKD患者の血管石灰化の進行を抑制する効果があるのか?

血清マグネシウム濃度の上昇は、CKD患者における心血管イベントのリスク低下と関連していることが報告されています。また、マグネシウム補充はCKD動物モデルにおいて血管の石灰化を防ぐことも報告されています。しかし、より質の高い試験デザインでの検証は充分に行われていません。

そこで今回は、マグネシウムの経口補給がCKDにおける血管石灰化の進行を遅らせるかどうかを調べるために実施されたランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間臨床試験(MAGiCAL-CKD)の結果をご紹介します。

本試験では、eGFRが15~45 mL/minの患者148例を登録し、水酸化マグネシウム15mmolを1日2回経口投与する群とプラセ群に12ヵ月間ランダムに割り付けられました。

本試験の主要評価項目は、ベースラインの冠動脈石灰化(CAC)スコア、年齢、糖尿病で調整した12ヵ月後のCACスコアの群間差でした。

試験結果から明らかになったことは?

合計75例の参加者にマグネシウムが投与され、73例にプラセボが投与されました。ベースラインのeGFR中央値は25mL/min、ベースラインのCACスコア中央値はマグネシウム群で413、プラセボ群で274でした。

マグネシウム群では試験中に血漿マグネシウムが有意に増加したにもかかわらず、12ヵ月後のベースライン調整CACスコアは両群間で有意差はありませんでした。ベースライン時のCAC>0、糖尿病、または血清石灰化傾向の三分位値による事前設定サブグループ解析においても、主要アウトカムを有意に変化させることはありませんでした。

消化器系の副作用を経験した参加者は、マグネシウム投与群で35例、プラセボ投与群で9例でした。死亡5例、心血管イベント6例がマグネシウム投与群で発生したのに対し、プラセボ群では死亡2例、心血管イベント0例でした。

コメント

慢性腎臓病はカルシウム排泄が滞ることで、細胞内のカルシウム濃度が高まりやすく、これが血管の石灰化を引き起こすと考えられています。カルシウム排泄にはマグネシウムが関与しており、細胞内のマグネシウム濃度を上げることでカルシウム排泄が促進されることから、マグネシウムを摂取することで、カルシウム蓄積による血管石灰化を抑制できることが期待されます。

さて、本試験結果によれば、マグネシウムの12ヵ月間の補充は、プラセボと比較して、血漿マグネシウムの有意な増加にもかかわらず、CKDにおける血管石灰化の進行を遅らせることはありませんでした。一方、死亡や心血管イベントについては、マグネシウム投与群で増加傾向でした。本試験は二重盲検のランダム化比較試験ですが、小規模な検討結果であることから追試が求められます。したがって、本試験結果のみで結論づけることはできませんが、死亡や心血管イベントについては継続的な安全性モニタリングが求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ マグネシウムの12ヵ月間の補充は、血漿マグネシウムの有意な増加にもかかわらず、CKDにおける血管石灰化の進行を遅らせることはなかった。死亡や心血管イベントについて継続的な安全性モニタリングが求められる。

根拠となった試験の抄録

背景:血清マグネシウム濃度の上昇は、CKD患者における心血管イベントのリスク低下と関連している。また、マグネシウムはCKDの動物モデルで血管の石灰化を防ぐ。

方法:マグネシウムの経口補給がCKDにおける血管石灰化の進行を遅らせるかどうかを調べるために、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間臨床試験を実施した。eGFRが15~45 mL/minの患者148例を登録し、水酸化マグネシウム15mmolを1日2回経口投与する群とプラセ群に12ヵ月間ランダムに割り付けた。
主要評価項目は、ベースラインの冠動脈石灰化(CAC)スコア、年齢、糖尿病で調整した12ヵ月後のCACスコアの群間差とした。

結果:合計75例の参加者にマグネシウムが投与され、73例にプラセボが投与された。ベースラインのeGFR中央値は25mL/min、ベースラインのCACスコア中央値はマグネシウム群で413、プラセボ群で274であった。マグネシウム群では試験中に血漿マグネシウムが有意に増加したにもかかわらず、12ヵ月後のベースライン調整CACスコアは両群間で有意差はなかった。ベースライン時のCAC>0、糖尿病、または血清石灰化傾向の三分位値による事前設定サブグループ解析は、主要アウトカムを有意に変化させなかった。消化器系の副作用を経験した参加者は、マグネシウム投与群で35例、プラセボ投与群で9例だった。死亡5例、心血管イベント6例がマグネシウム投与群で発生したのに対し、プラセボ群では死亡2例、心血管イベント0例であった。

結論:マグネシウムの12ヵ月間の補充は、血漿マグネシウムの有意な増加にもかかわらず、CKDにおける血管石灰化の進行を遅らせることはなかった。

引用文献

The Effect of Magnesium Supplementation on Vascular Calcification in Chronic Kidney Disease: A Randomized Clinical Trial (MAGiCAL-CKD)
Iain Bressendorff et al.
J Am Soc Nephrol. 2023 Feb 2. doi: 10.1681/ASN.0000000000000092. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36749131/

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