ステージ4の慢性腎臓病におけるダパグリフロジンの効果はどのくらい?(DAPA-CKD事前解析; J Am Soc Nephrol. 2021)

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SGLT2阻害薬ダパグリフロジンはステージ4CKD患者においても有効か?

腎機能が正常またはそれに近い患者と比較して、CKD患者は、死亡、心血管イベント、入院の割合が高く(PMID: 15385656PMID: 16738019)、身体機能、認知機能、健康関連QOL(生活の質)の低下など、健康状態が悪化しています(PMID: 15507063PMID: 17023495PMID: 18651545PMID: 19643926)。20年以上前に行われたランダム化臨床試験では、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害剤が、2型糖尿病やその他の蛋白尿性CKDに伴うCKDの進行を抑制することが確認されました。その後、RAAS阻害剤は広く推奨されるようになり、腎臓病関連の複合エンドポイント(死亡、透析や腎移植の必要性、血清クレアチニンの倍増など)を改善するだけでなく、CKDに頻繁に見られる高血圧のコントロールや心不全の合併症を軽減する効果も得られました(PMID: 16407508PMID: 8596594PMID: 11565518PMID: 10437863)。しかし、実際には、一過性の血清クレアチニンの上昇や高カリウム血症により、RAAS阻害剤の処方は制限されており、特にCKDが進行した患者では、しばしば薬剤の中止を余儀なくされています(PMID: 16669417)。

いくつかのナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤は、2型糖尿病患者の死亡率および心血管イベントの発生率を低下させることが示されています(DECLARE-TIMI 58CREDENCEEMPA-REG OUTCOME)。当初、SGLT2阻害剤は、血糖コントロールと比較して有効性が低下するため、腎機能低下患者への使用は推奨されていませんでした(PMID: 28302903PMID: 25805666)。 CREDENCE試験は、SGLT2阻害剤の中では初めて心腎複合エンドポイントを設定した試験で、アルブミン尿や腎機能障害のある患者を対象に実施されました。また、2型糖尿病、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)300~5,000mg/g、スクリーニング時のeGFR30~90mL/min/1.73m2の患者のみが登録され、腎障害および心血管障害のリスクが有意に減少することが示されました(PMID: 30990260)。 一方、Dapagliflozin And Prevention ofAdverse Outcomes in Chronic Kidney Disease(DAPA-CKD)試験では、2型糖尿病の有無にかかわらず、UACR200~5,000mg/g、スクリーニング時のeGFR25~75mL/min/1.73m2の患者が登録されました(PMID: 32030417PMID: 33283207)。 DAPA-CKD試験では、ランダム化された4,304例のうち624例(14%)がベースライン時にステージ4のCKDでした。

そこで今回は、DAPA-CKDのサブ集団における安全性評価、主要評価項目および主要な副次評価項目に対するダパグリフロジンの効果を評価した結果をご紹介します。

試験結果から明らかになたことは?

ステージ4のCKD患者293例にダパグリフロジンが投与され、331例にプラセボが投与されました。

ステージ4のCKD患者における
リスク減少率(vs. プラセボ)
ハザード比
(95%CI)
CKD2/3と比較した場合の
相互作用P値
主要複合エンドポイント27%
(95%CI -2~47%)
0.73
(95%CI 0.53〜1.02)
P=0.22
腎臓29%
95%CI -2~51%)
0.71
(95%CI 0.49〜1.02)
P=0.13
心血管17%
(95%CI -53〜55%)
0.83
(95%CI 0.45〜1.53)
P=0.63
死亡32%
(95%CI -21〜61%)
0.68
(95%CI 0.39〜1.21)
P=0.95

ダパグリフロジンにランダムに割り付けられたステージ4のCKD患者は、プラセボと比較して、主要複合エンドポイントで27%(95%信頼区間[95%CI]:-2~47%)、腎臓、心血管、死亡の各エンドポイントでそれぞれ29%(-2~51%)、17%(-53〜55%)、32% (-21〜61%)の減少を示しました。CKDステージ4と2/3を比較した場合の相互作用P値は、それぞれ0.22、0.13、0.63、0.95でした。

eGFRスロープは、ダパグリフロジン群とプラセボ群で、それぞれ2.15および3.38ml/min/1.73m2/年減少しました(P=0.005)。

ダパグリフロジン投与群とプラセボ投与群では、重篤な有害事象と注目すべき有害事象の発生率は同程度でした。

コメント

慢性腎臓病(CKD)患者を対象にSGLT2阻害薬ダパグリフロジン(フォシーガ®️)10mg/日の効果を検証したDAPA-CKD試験、このうちステージ4のCKD患者を対象とした事前設定サブ解析試験。

本試験結果によれば、ステージ4のCKDおよびアルブミン尿を有する患者においても、全体解析の結果と同様にハードアウトカム発生を抑制しましたが、いずれのアウトカムもプラセボと比較して減少傾向でした。あくまでもサブ解析であることから、サンプルサイズが不充分であり、またランダム化も破綻していることから仮説生成的な結果です。追試が求められます。

とはいえ、有益な結果ではあります。eGFR低下およびアルブミン尿を呈するステージ4においてもSGLT2阻害薬ダパグリフロジンを使用する意義があるのかもしれません。続報に期待。

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✅まとめ✅ ステージ4のCKDおよびアルブミン尿を有する患者において、DAPA-CKD試験全体で観察された結果との一致が認められたが、いずれもリスク低下傾向であった。またプラセボと比較してリスク増加は認められなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:Dapagliflozin and Prevention of Adverse Outcomes in Chronic Kidney Disease(DAPA-CKD)ランダム化プラセボ対照試験において、ナトリウム-グルコースコトランスポーター2阻害剤であるDapagliflozinは、2型糖尿病の有無にかかわらずCKD患者の腎不全リスクを有意に低下させ、生存期間を延長した。

方法:eGFRが25~75ml/min/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比が200~5000mg/gの成人を対象に、ダパグリフロジン10mg/日またはプラセボを投与するランダム化を行った。今回、ベースラインでCKDステージ4(eGFR 30ml/min/1.73m2)の患者を対象に、ダパグリフロジンの効果を事前に規定した解析を行った。
主要評価項目は、eGFRが50%以上持続的に低下するまでの時間、ESKD、腎臓死または心血管死の複合とした。二次エンドポイントは、腎臓複合(一次エンドポイントと同じだが、心血管死亡を含まない)、心血管死亡または心不全による入院の複合、および全死亡とした。

結果:ステージ4のCKD患者293例にダパグリフロジンが投与され、331例にプラセボが投与された。ダパグリフロジンにランダムに割り付けられたステージ4のCKD患者は、プラセボと比較して、主要複合エンドポイントで27%(95%信頼区間[95%CI]:-2~47%)、腎臓、心血管、死亡の各エンドポイントでそれぞれ29%(-53~55%)、17%(-21~61%)の減少を示した。CKDステージ4と2/3を比較した場合の相互作用P値は、それぞれ0.22、0.13、0.63、0.95でした。
eGFRスロープは、ダパグリフロジン群とプラセボ群で、それぞれ2.15および3.38ml/min/1.73m2/年減少した(P=0.005)。ダパグリフロジン投与群とプラセボ投与群では、重篤な有害事象と注目すべき有害事象の発生率は同程度であった。

結論:ステージ4のCKDおよびアルブミン尿を有する患者において、ダパグリフロジンの効果は、DAPA-CKD試験全体で観察されたものと一致し、リスク増加の証拠はなかった。

キーワード:SGLT2阻害剤、慢性腎臓病、ダパグリフロジン、ステージ4のCKD

引用文献

Effects of Dapagliflozin in Stage 4 Chronic Kidney Disease
Glenn M Chertow et al. PMID: 34272327 DOI: 10.1681/ASN.2021020167
J Am Soc Nephrol. 2021 Sep;32(9):2352-2361. doi: 10.1681/ASN.2021020167. Epub 2021 Jul 16.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34272327/

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