COVID-19に対するプライム・ブースト異種ワクチン接種法 mRNA+アデノウイルスワクチン vs. アデノウイルスワクチン2回接種(RCT; Com-COV試験; Lancet 2021)

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COVID-19ワクチンの種類により有効性は異なるが、併用した場合の有効性はどのくらいなのか?

COVID-19は、健康、社会、経済の面で世界に深刻な影響を与えています。ワクチン接種による免疫は、疾病の負担を軽減し、現在の公衆衛生対策から脱却し、その後の経済回復のための基本となります。効果が実証されている複数のワクチンが世界的に展開されており、その中には、英国などで2回接種の同種スケジュールで承認されているmRNAワクチン「コミナティ」(BNT162b2あるいはトジナメラン、Pfizer-BioNTech社、以下BNT)やアデノウイルスベクターワクチン「バキスゼブリア」(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca社、以下ChAd)が含まれています(WHO)。

2021年7月30日現在、全世界で30~80億本以上のCOVID-19ワクチンが接種されていますが、さらに多くの人々が未接種のままとなっています(WHO)。異種混合ワクチンのスケジュールは、国内外の一部のワクチンプログラムに内在する物流上の問題を軽減することができます。このようなスケジュールは、低所得国や中所得国、およびChAdの使用に年齢制限を設けている国では特に重要となる可能性があります。

Ad26およびAd5ベクターのCOVID-19ワクチンを用いた異種混合のプライム・ブースト(prime-boost)スケジュールを展開しているスプートニクVワクチンプログラムでは、強固な体液性および細胞性反応が誘導され、症候性疾患に対して91.6%の有効性が示されていますが(PMID: 32896291PMID: 33545094)、現在のところ、異なるプラットフォームのCOVID-19ワクチンを用いた異種混合スケジュールによる有効性のデータはありません。 また、ドイツで行われた観察研究の初期の結果では、BNT/BNTを3週間間隔で投与したコホートとChAd/BNTを10週間間隔で投与したコホートでは、体液性反応はほぼ同じで、細胞性反応はChAd/BNTコホートの方が高いことが示されています(medRxiv, プレプリント)。異種混合ワクチンの安全性と免疫原性に関するデータが得られれば、初回接種後に特定のワクチンが禁忌となった人にこれらのスケジュールを使用する際の参考になり、ワクチンのサプライチェーンの混乱やワクチン使用に関するガイダンスの変更を緩和したいと考えているワクチンプログラムにとっても役立ちます。 さらに、混合スケジュールは、ライセンスされたスケジュールと比較して、体液性または細胞性の免疫反応を増強または持続させる可能性があり、より多くの種類のSARS-CoV-2に対してそうなる可能性があります。

そこで今回は、ChAdワクチンとBNTワクチンを用いた異種混合スケジュールの免疫反応が、同等の同種混合スケジュールと比較して非劣性であるかどうかを調べるために実施されたランダム化化対照試験(Com-COV試験)の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

2021年2月11日から2月26日の間に、参加者 830例が登録され、ランダム化されました。そのうち、プライム・ブーストの間隔が28日の463例の結果が今回報告されました。

参加者の平均年齢は57.8歳(SD 4〜7)で、女性が212例(46%)、少数民族が117例(25%)でした。

ChAd/ChAdChAd/BNTGMR
例数
(mITT解析)
105108
SARS-CoV-2
抗スパイクIgG
(ELU/mL)
1,387
(95%CI 1,186〜1,623)
12,995
(11,520〜14,660)
9.3
(7.7〜11.4)
BNT/BNTBNT/ChAdGMR
例数
(mITT解析)
110109
SARS-CoV-2
抗スパイクIgG
(ELU/mL)
13,938
(12,358〜15,719)
7,133
(6,415〜7,932)
0.51
(0.44〜0.60)

ブースト後28日目に、ChAd/BNT投与群のSARS-CoV-2抗スパイクIgGの幾何平均濃度(12,906 ELU/mL)は、ChAd/ChAd投与群(1,392 ELU/mL)に比べて非劣性であり、幾何平均比(GMR)は9.2(片側97.5%CI 7.5~∞)でした。
BNTでプライミングした被験者では、異種スケジュール(BNT/ChAd、7,133 ELU/mL)の同種スケジュール(BNT/BNT、14,080 ELU/mL)に対する非劣性は示されず、GMRは0.51(片側97.5%CI 0.43~∞)でした。

重篤な有害事象は全グループで4件発生しましたが、いずれもワクチン接種との関連はないと考えられました。

コメント

SARS-CoV-2の感染予防において、ワクチン接種による免疫原性(immunogenicity) の獲得が重要です。免疫原性については、被接種者の血清中の抗体レベル(抗体価)が感染や発症を防ぐレベルに達した人の割合で評価されます。ワクチンで誘導される免疫には液性免疫と細胞性免疫がありますが、 測定の容易な液性免疫が評価に用いられています。今回の試験では、SARS-CoV-2抗スパイクIgGの濃度を測定しています。

試験結果によれば、mRNAワクチン「商品名:コミナティ」(BNT162b2あるいはトジナメラン、Pfizer-BioNTech社)あるいはアデノウイルスベクターワクチン「商品名:バキスゼブリア」(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca社)を初回接種し、その後に同じワクチンあるいは、異なるワクチンを接種した場合のSARS-CoV-2抗スパイクIgG濃度を検証したところ、ブースト後28日目に、ChAd/BNT投与群のSARS-CoV-2抗スパイクIgGの幾何平均濃度(12,906 ELU/mL)は、ChAd/ChAd投与群(1,392 ELU/mL)に比べて非劣性が示されました。一方、BNT接種者では、異種スケジュール(BNT/ChAd、7,133 ELU/mL)の同種スケジュール(BNT/BNT、14,080 ELU/mL)に対する非劣性は示されませんでした。

以上の結果から、アデノウイルスベクターワクチンを初回接種した場合、ブースターとしてmRNAワクチンを接種した方が、抗体価の上昇が見込めそうです。一方、mRNAワクチンを初回接種した場合は、ブースターもmRNAワクチンを接種した方が良さそうです。

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✅まとめ✅ アストラゼネカ社製 アデノウイルスベクターワクチンの2回接種(ChAd/ChAd)と比較して、アデノウイルスベクターワクチン+mRNA COVID-19ワクチン接種(ChAd/BNT)の免疫原性が高いことから、異種混合プライム・ブースト・ワクチン接種の有効性が支持された。

根拠となった試験の抄録

背景:異種混合のプライム・ブーストCOVID-19ワクチンスケジュールを使用することで、COVID-19の大量免疫を促進することができる。アデノウイルスベクターワクチン(ChAdOx1 nCoV-19,AstraZeneca社,以下ChAd)とmRNAワクチン(BNT162b2,Pfizer-BioNTech社,以下BNT)を4週間の間隔で接種する異種混合スケジュールは、同種混合スケジュールに比べて反応性が高いことを以前に報告している。ここでは、ChAdワクチンとBNTワクチンを用いた異種混合スケジュールの安全性と免疫原性について報告する。

方法:Com-COVは、ワクチンの安全性、反応原性、および免疫原性を評価する参加者盲検ランダム化非劣性試験である。併存疾患がない、または十分にコントロールされている50歳以上の成人で、実験室で確認されたSARS-CoV-2感染の既往がない場合に対象とされ、英国内の8施設で募集された。
対象者の大部分は一般コホート(28日または84日の初回ブースト間隔)に登録され、初回ブースト後28日または84日の間隔で投与されるChAd/ChAd、ChAd/BNT、BNT/BNT、またはBNT/ChAdにランダムに割り付けられた(1:1:1:1:1:1:1:1)。
対象者の一部(n=100)は免疫学コホートに登録され、免疫反応を評価するために血液検査が追加された。これらの参加者は、4つのスケジュール(28日間隔のみ)にランダムに(1:1:1:1)割り当てられた。
参加者は投与されたワクチンについてはマスキングされたが、プライム・ブーストの間隔についてはマスキングされなかった。
主要評価項目は、ChAd/BNT、ChAd/ChAd、BNT/ChAdとBNT/BNTを比較したときの、ブースト後28日目の血清SARS-CoV-2抗スパイクIgG濃度(ELISA法で測定)の幾何平均比(GMR)であった。これらの比較のGMRの片側97.5%CIの下限値が0.63より大きい場合、異種スケジュールは承認された同種スケジュールに対して非劣性であると考えられた。主要解析は、ベースライン時に血清が陰性であったper-protocol集団で行われた。安全性の解析は、試験用ワクチンを少なくとも1回接種した参加者を対象に行われた。この試験はISRCTN(69254139)に登録されている。

調査結果:2021年2月11日から2月26日の間に、参加者 830例が登録され、ランダム化された。そのうち、プライム・ブーストの間隔が28日の463例の結果が今回報告された。参加者の平均年齢は57.8歳(SD 4〜7)で、女性が212例(46%)、少数民族が117例(25%)であった。
ブースト後28日目に、ChAd/BNT投与群のSARS-CoV-2抗スパイクIgGの幾何平均濃度(12,906 ELU/mL)は、ChAd/ChAd投与群(1,392 ELU/mL)に比べて非劣性であり、GMRは9.2(片側97.5%CI 7.5~∞)であった。
BNTでプライミングした被験者では、異種スケジュール(BNT/ChAd、7,133 ELU/mL)の同種スケジュール(BNT/BNT、14,080 ELU/mL)に対する非劣性は示されず、GMRは0.51(片側97.5%CI 0.43~∞)であった。
重篤な有害事象は全グループで4件発生したが、いずれもワクチン接種との関連はないと考えられた。

解釈:BNT/ChAdレジメンが非劣性基準を満たさなかったにもかかわらず、両異種混合レジメンのSARS-CoV-2抗スパイクIgG濃度は、COVID-19病および入院に対する有効性が証明されているライセンス・ワクチン・スケジュール(ChAd/ChAd)のそれよりも高かった。ChAD/ChAdと比較してChAd/BNTの免疫原性が高いことから、これらのデータは、ChAdおよびBNT COVID-19ワクチンを用いた異種混合プライム・ブースト・ワクチン接種の柔軟性を支持するものである。

資金提供:UK Vaccine Task ForceおよびNational Institute for Health Research

引用文献

Safety and immunogenicity of heterologous versus homologous prime-boost schedules with an adenoviral vectored and mRNA COVID-19 vaccine (Com-COV): a single-blind, randomised, non-inferiority trial
Xinxue Liu et al. PMID: 34370971 PMCID: PMC8346248 DOI: 10.1016/S0140-6736(21)01694-9
Lancet. 2021 Aug 6;S0140-6736(21)01694-9. doi: 10.1016/S0140-6736(21)01694-9. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34370971/

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