米国におけるSARS-CoV-2感染後の炎症反応はワクチン接種で抑えられる(前向きコホート研究; THE Lancet Microb 2023)

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新型コロナウイルス感染症患者における炎症反応はワクチン接種により変化するのか?

サイトカインおよびケモカインは、感染およびワクチン接種に対する反応において重要な役割を果たしています。しかし、経時的な変化については充分に検証されていません。

そこで今回は、SARS-CoV-2感染者におけるCOVID-19ワクチン接種とサイトカインおよびケモカインの濃度および軌跡との縦断的関連を評価することを目的に実施された縦断的前向きコホート研究の結果をご紹介します。

外来COVID-19に対する回復期血漿療法の有効性を評価するために多施設ランダム化試験(米国の外来患者23施設)に登録された参加者の血液サンプルが用いられました。試験参加者(18歳以上)は、ワクチン接種前にCOVID-19に罹患していた者、またはスクリーニング(輸血前)、14日目、90日目の診察時に血液サンプルと症状データを収集したブレイクスルー感染症患者に限定されました。

COVID-19ワクチン接種状況と21種類のサイトカインおよびケモカインの濃度(多重サンドイッチ免疫測定法を用いて測定)との関連を、年齢、性別、BMI、高血圧、糖尿病、試験群、およびCOVID-19の波(プレアルファまたはアルファおよびデルタ)で調整した多変量線形混合効果回帰モデルが用いられました。

試験結果から明らかになったことは?

2020年6月29日から2021年9月30日の間に、最近SARS-CoV-2に感染した882例が登録され、そのうち506例(57%)が女性、376例(43%)が男性でした。882例中688例(78%)がベースライン時にワクチン未接種、55例(6%)が部分接種、139例(16%)が完全接種でした。

幾何平均濃度の低さ
ワクチン完全接種群 vs. 未接種群
スクリーニング時、ワクチン接種後14日/90日すべてにおいて有意な群間差ありIL-2RA
IL-7
IL-8
IL-15
IL-29(インターフェロン-λ)
誘導性蛋白質-10
単球走化性蛋白質-1
腫瘍壊死因子-α

交絡因子を補正した後、スクリーニング時のインターロイキン(IL)-2RA、IL-7、IL-8、IL-15、IL-29(インターフェロン-λ)、誘導性蛋白質-10、単球走化性蛋白質-1、腫瘍壊死因子-αの幾何平均濃度は、完全接種群のほうが未接種群よりも有意に低いことが示されました。

90日目には、ワクチン完全接種群ではワクチン未接種群に比べてIL-7、IL-8、血管内皮増殖因子-Aの幾何平均濃度が約20%低いことが示されました。サイトカインおよびケモカイン濃度は、ワクチン完全接種群、部分接種群、未接種群で経時的に減少しました。

サイトカインおよびケモカイン濃度(log10)は、ワクチン未接種群の参加者では他の群よりも早く減少しましたが、90日時点の幾何平均濃度は、完全ワクチン接種の参加者よりも全般的に高かいことが示された。

完全ワクチン接種からの日数および接種ワクチンの種類は、サイトカインおよびケモカイン濃度と相関しませんでした。

コメント

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者数は増減を繰り返しており、感染の終息は見込めません。COVID-19の特徴として炎症性サイトカインの急速な増加であるサイトカインストームが報告されています。このサイトカインストームは疾患の重症度や患者転帰、後遺症であるlong COVIDリスクの増加と関連しています。

基本的な感染予防対策の一つとしてワクチン接種が推奨されており、疾患の重症度や患者転帰、long COVIDのリスク低下と関連していますが、この関連性において炎症性サイトカインがどのように影響しているのかについては充分に検証されていません。

さて、縦断的コホート研究の結果、症候性COVID-19の初期および回復期において、完全ワクチン接種者はワクチン未接種者よりも炎症マーカーの濃度が低いことが示されました。ワクチン接種が短期的および長期的な炎症の抑制と関連していることが示唆されたことになりますが、患者転帰に関連する要因の一つであることが示されたに過ぎません。さらなる検証が求められます。

続報に期待。

person holding test tubes

✅まとめ✅ 症候性COVID-19の初期および回復期において、完全ワクチン接種者はワクチン未接種者よりも炎症マーカーの濃度が低かったことから、ワクチン接種が短期的および長期的な炎症の抑制と関連していることが示唆された。

根拠となった試験の抄録

背景:サイトカインおよびケモカインは、感染およびワクチン接種に対する反応において重要な役割を果たしている。我々は、SARS-CoV-2感染者におけるCOVID-19ワクチン接種とサイトカインおよびケモカインの濃度および軌跡との縦断的関連を評価することを目的とした。

方法:この縦断的前向きコホート研究では、外来COVID-19に対する回復期血漿療法の有効性を評価する多施設ランダム化試験に登録された参加者の血液サンプルを用いた。この試験は米国の外来患者23施設で実施された。試験参加者(18歳以上)は、ワクチン接種前にCOVID-19に罹患していた者、またはスクリーニング(輸血前)、14日目、90日目の診察時に血液サンプルと症状データを収集したブレークスルー感染症患者に限定された。COVID-19ワクチン接種状況と21種類のサイトカインおよびケモカインの濃度(多重サンドイッチ免疫測定法を用いて測定)との関連を、年齢、性別、BMI、高血圧、糖尿病、試験群、およびCOVID-19の波(プレアルファまたはアルファおよびデルタ)で調整した多変量線形混合効果回帰モデルを用いて検討した。

所見:2020年6月29日から2021年9月30日の間に、最近SARS-CoV-2に感染した882例が登録され、そのうち506例(57%)が女性、376例(43%)が男性であった。882例中688例(78%)がベースライン時にワクチン未接種、55例(6%)が部分接種、139例(16%)が完全接種であった。交絡因子を補正した後、スクリーニング時のインターロイキン(IL)-2RA、IL-7、IL-8、IL-15、IL-29(インターフェロン-λ)、誘導性蛋白質-10、単球走化性蛋白質-1、腫瘍壊死因子-αの幾何平均濃度は、完全接種群のほうが未接種群よりも有意に低かった。90日目には、完全接種群ではワクチン未接種群に比べてIL-7、IL-8、血管内皮増殖因子-Aの幾何平均濃度が約20%低かった。サイトカインおよびケモカイン濃度は、完全接種群、部分接種群、ワクチン未接種群で経時的に減少した。サイトカインおよびケモカイン濃度(log10)は、ワクチン未接種群の参加者では他の群よりも早く減少したが、90日時点の幾何平均濃度は、完全ワクチン接種の参加者よりも全般的に高かった。完全ワクチン接種からの日数および接種ワクチンの種類は、サイトカインおよびケモカイン濃度と相関しなかった。

解釈:症候性COVID-19の初期および回復期において、完全ワクチン接種者はワクチン未接種者よりも炎症マーカーの濃度が低かったことから、ワクチン接種が短期的および長期的な炎症の抑制と関連していることが示唆された。

資金提供:米国国防総省、国立衛生研究所、Bloomberg Philanthropies、メリーランド州、Mental Wellness Foundation、Moriah Fund、Octapharma、HealthNetwork Foundation、Shear Family Foundation

引用文献

Dynamics of inflammatory responses after SARS-CoV-2 infection by vaccination status in the USA: a prospective cohort study
Xianming Zhu et al.
Published:August 07, 2023DOI:https://doi.org/10.1016/S2666-5247(23)00171-4
THE Lancet Microb 2023
ー 続きを読む https://www.thelancet.com/journals/lanmic/article/PIIS2666-5247(23)00171-4/fulltext#%20

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