心血管疾患におけるアスピリンの投与量は81mgと325mgどちらが良いですか?(Open-RCT; ADAPTABLE試験; N Engl J Med. 2021)

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心血管イベント抑制及び出血リスクにおけるアスピリンの最適用量は?

動脈硬化性心血管疾患を有する患者においては、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントの発生を抑制するための治療戦略が求められており、その1つとしてアスピリンによる予防的治療が行われています。

しかし、アスピリンは出血リスクがあることから、心血管イベントの発生抑制とのリスクベネフィットを考慮する必要があります。

そこで今回は、動脈硬化性心血管疾患を有する患者におけるアスピリンの用量を比較した試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

患者15,076例が中央値26.2ヵ月(四分位範囲[IQR] 19.0~34.9)にわたって追跡され、ランダム化前に13,537例がすでにアスピリンを服用しており、そのうち85.3%が1日81mgのアスピリンを服用していました。

死亡、心筋梗塞による入院、脳卒中による入院は、81mg群では590例(推定比率7.28%)、325mg群では569例(推定比率7.51%)に認められました。
☆ハザード比 1.02、95%信頼区間[CI] 0.91~1.14

81mg群325mg群
死亡、心筋梗塞による入院、脳卒中による入院590例
(推定比率7.28%)
569例
(推定比率7.51%)

大出血による入院は、81mg群で53例(推定比率0.63%)、325mg群で44例(推定比率0.60%)に認められた。
☆ハザード比1.18、95%CI 0.79~1.77

81mg群325mg群
大出血による入院53例
(推定比率0.63%)
44例
(推定比率0.60%)

325mgに割り付けられた患者は、81mgに割り付けられた患者に比べて用量変更の発生率が高く(41.6% vs. 7.1%)、割り付けられた用量に曝露された日数(中央値)も少ないことが明らかとなりました(434日[IQR 139~737] vs. 650日[IQR, 415~922])。

81mg群325mg群
用量変更の発生率7.1%41.6%
曝露日数(中央値)650日
(IQR 415~922 )
434日
(IQR 139~737)

コメント

日本におけるアスピリンの承認用量は81mgと330mg(腸溶錠は100mg)ですので、本試験で用いられた用量とほぼ同じです。

さて、本試験結果によれば、アスピリン81mg群と325mg群の間で、心血管イベントや大出血に有意な差は認められなかったようです。ただし、服用した日数が異なること、試験期間が2年程度ですので、死亡や心筋梗塞による入院、脳卒中による入院が発生するまでの期間としては、やや短いと考えられます。このため、通常のMACE(死亡、非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞の複合)ではなく、入院というアウトカムにしているのではないかと考察できます。また服用日数については、325mg群で41.6%で用量変更となっていますので、致し方ないとも考えられます。

本試験の内的妥当性はやや低い可能性がありますが、心血管イベントや大出血に有意差がなく、かつ用量変更が多いことから、325mgを用いる意義は少ないと考えられます。

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✅まとめ✅ 確立された心血管疾患を有する患者において、アスピリン81mgへの大幅な用量変更が行われた。アスピリン81mgと325mgの間で、心血管イベントや大出血に有意な差は認められなかった。

根拠となった論文の抄録

背景:動脈硬化性心血管病の患者において、死亡、心筋梗塞。脳卒中のリスクを低下させ、大出血を最小限に抑えるためのアスピリンの適切な投与量については、議論のあるところである。

方法:非盲検かつ実用的なデザインを用いて、動脈硬化性心血管病の患者を、アスピリンを1日あたり81mgまたは325mgを投与する戦略にランダム割り付けした。
有効性の主要評価項目は、あらゆる原因による死亡、心筋梗塞による入院、脳卒中による入院の複合とし、time-to-event解析で評価した。
安全性の主要評価項目は、大出血による入院で、これもTime-to-event解析で評価した。

結果:患者15,076例が中央値26.2ヵ月(四分位範囲[IQR] 19.0~34.9)にわたって追跡された。ランダム化前に13,537例(アスピリンの使用歴に関する情報が得られた患者の96.0%)がすでにアスピリンを服用しており、そのうち85.3%が1日81mgのアスピリンを服用していた。
死亡、心筋梗塞による入院、脳卒中による入院は、81mg群では590例(推定比率7.28%)、325mg群では569例(推定比率7.51%)に認められた(ハザード比1.02、95%信頼区間[CI] 0.91~1.14)。大出血による入院は、81mg群で53例(推定比率0.63%)、325mg群で44例(推定比率0.60%)に認められた(ハザード比1.18、95%CI 0.79~1.77)。325mgに割り付けられた患者は、81mgに割り付けられた患者に比べて用量変更の発生率が高く(41.6% vs. 7.1%)、割り付けられた用量に曝露された日数(中央値)も少なかった(434日[IQR 139~737] vs. 650日[IQR, 415~922])。

結論:確立された心血管疾患を有する患者を対象とした本実用化試験では、アスピリン1日81mgへの大幅な用量変更が行われ、アスピリン1日81mgに割り付けられた患者とアスピリン1日325mgに割り付けられた患者との間で、心血管イベントや大出血に有意な差は認められなかった(資金提供:Patient-Centered Outcomes Research Institute; ADAPTABLE ClinicalTrials.gov number, NCT02697916)。

引用文献

Comparative Effectiveness of Aspirin Dosing in Cardiovascular Disease
W Schuyler Jones et al. PMID: 33999548 DOI: 10.1056/NEJMoa2102137
N Engl J Med. 2021 May 15. doi: 10.1056/NEJMoa2102137. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33999548/

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