アストラゼネカ社製ワクチン接種後の異常な血栓症や血小板減少症リスクはどのくらいですか?(症例シリーズ; N Engl J Med. 2021)

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COVID-19ワクチン接種後に血栓症が発生する?

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンは、コロナウイルス2019(COVID-19)のパンデミックに対抗するための最も重要な対策です。

2020年12月から2021年3月にかけて、欧州医薬品庁(EMA)は、ランダム化盲検比較試験に基づいて4つのワクチンを承認しました。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質抗原をコードする2つのmRNAベースのワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech社)および「mRNA-1273」(Moderna社)を脂質ナノ粒子に封入したもの、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質をコードする組換えチンパンジーアデノウイルスベクター「ChAdOx1 nCov-19」(AstraZeneca社)、および「Ad26. COV2.S(Johnson & Johnson/Janssen)は、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質をコードする組換えアデノウイルス26型ベクターです。

2021年4月7日時点で、欧州連合(EU)では8,200万回以上のワクチン接種が行われており、ドイツではワクチン接種者の約4分の1がChAdOx1 nCov-19ワクチンを接種していました(2021年4月21日時点のドイツでは、21,997,335回のワクチン接種が完了▶️リンク)。2021年2月下旬から、ChAdOx1 nCov-19のワクチン接種後の患者に、血小板減少症を伴う異常な血栓事象が数例観察されています。しかし、ChAdOx1 nCov-19ワクチン(アストラゼネカ社製ワクチン)と血栓症との関係性については充分に検討されていません。

そこで今回は、アストラゼネカ社製ワクチン接種後に血栓症が認められた症例における血栓症リスクとの関連性について検証した症例シリーズ研究をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

症例シリーズでは、ワクチン接種の5~16日後から、1例を除く患者10例に1つ以上の血栓イベントが発生し、致命的な頭蓋内出血が見られました。

1つ以上の血栓症を呈した患者のうち、9例が脳静脈血栓症、3例が脾静脈血栓症、3例が肺塞栓症、4例がその他の血栓症であり、このうち6例が死亡しました。また患者5例が播種性血管内凝固症候群に罹患していました。症状が出る前にヘパリンを投与されていた患者はいませんでした。

PF4-ヘパリンに対する抗体が陽性であった患者28例全員が、ヘパリンとは独立したPF4の存在下での血小板活性化アッセイに陽性でした。血小板活性化は、高濃度のヘパリン、Fc受容体遮断モノクローナル抗体、免疫グロブリン(10mg/ml)によって抑制されました。患者2例において、PF4またはPF4-ヘパリン親和性精製抗体を用いた追加試験により、PF4依存性の血小板活性化が確認されました。

コメント

欧州連合(EU)では8,200万回以上のワクチン接種が行われており、ドイツではそのうちの約25%がアストラゼネカ社製ワクチンでした。アデノウイルスベクター「ChAdOx1 nCov-19」ワクチン接種後にPF4依存性の血小板活性化が認められていることから、発生頻度が稀ではあるものの、アストラゼネカ社製ワクチンによる血栓リスクを否定できません。

しかし、新型コロナウイルス罹患によりサイトカインストームが引き起こされると、血栓塞栓症のリスクが増加し、オランダの研究結果ではICU患者の約30%で血栓塞栓症の合併リスクが認められていることから、ワクチン接種による血栓塞栓症リスクよりも高頻度であることが推測されます。したがって、血栓塞栓症リスクがあるためにワクチン接種を行わない理由にはならないように捉えられます。

今後は、どのような患者でアストラゼネカ社製ワクチン接種による血栓塞栓症リスクが増加するのか検証する必要があると考えられます。

個人的にはmRNAベースのCOVID-19ワクチンを接種したいところです。

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✅まとめ✅ アストラゼネカ社製ワクチン接種は、PF4に対する血小板活性化抗体を介する免疫性血小板減少症をまれに発症させる可能性があり、これは臨床的には自己免疫性ヘパリン誘発性血小板減少症と酷似していた

根拠となった論文の抄録

背景:重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク抗原をコードする組換えアデノウイルスベクター(ChAdOx1 nCov-19,アストラゼネカ)のワクチン接種後に、異常な血栓症や血小板減少症を発症した症例が数例あった。この異常な血液凝固障害の病態について、さらなるデータが必要であった。

方法:ドイツとオーストリアにおいて、ChAdOx1 nCov-19のワクチン接種後に血栓症または血小板減少症を発症した患者11例の臨床的および実験的特徴を評価した。血小板第4因子(PF4)-ヘパリン抗体を検出するための標準的な酵素結合免疫吸着法と、血小板活性化抗体を検出するための改良型(PF4強化型)血小板活性化試験を様々な反応条件で行った。この検査には、ワクチン関連の血栓症イベントの調査のために血液サンプルが紹介された患者のサンプルが含まれており、スクリーニング用のPF4-ヘパリン免疫測定法で28件が陽性となった。

結果:患者11例のうち、9例が女性で、年齢中央値は36歳(範囲 22~49歳)であった。ワクチン接種の5~16日後から、1例を除く患者に1つ以上の血栓イベントが発生し、致命的な頭蓋内出血が見られた。1つ以上の血栓症を呈した患者のうち、9例が脳静脈血栓症3例が脾静脈血栓症3例が肺塞栓症4例がその他の血栓症であり、このうち6例が死亡した。患者5例が播種性血管内凝固症候群に罹患していた。症状が出る前にヘパリンを投与されていた患者はいなかった。PF4-ヘパリンに対する抗体が陽性であった患者28例全員が、ヘパリンとは独立したPF4の存在下での血小板活性化アッセイに陽性であった。血小板活性化は、高濃度のヘパリン、Fc受容体遮断モノクローナル抗体、免疫グロブリン(10mg/ml)によって抑制された。患者2例において、PF4またはPF4-ヘパリン親和性精製抗体を用いた追加試験により、PF4依存性の血小板活性化が確認された。

結論:ChAdOx1 nCov-19によるワクチン接種は、PF4に対する血小板活性化抗体を介する免疫性血小板減少症をまれに発症させる可能性があり、これは臨床的には自己免疫性ヘパリン誘発性血小板減少症と酷似している(資金提供:ドイツ研究財団)。

引用文献

Thrombotic Thrombocytopenia after ChAdOx1 nCov-19 Vaccination
Andreas Greinacher et al. PMID: 33835769 DOI: 10.1056/NEJMoa2104840
N Engl J Med. 2021 Apr 9. doi: 10.1056/NEJMoa2104840. Online ahead of print.
— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33835769/

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