スタチン治療と筋肉症状の関連性はどのくらいですか?(RCT; StatinWISE試験; BMJ 2021)

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スタチンによる筋肉症状の発生はどの程度なのか?

スタチンは、一次予防および二次予防において、男女を問わず、また、すべての年齢層において、心血管疾患のイベントを減少させます。また、ランダム化試験のシステマティックレビューとメタアナリシスにより、スタチンの安全性が確認されています。

重篤な副作用は稀ですが、スタチンはミオパシー(筋障害)のリスクを高め(絶対過剰リスクは年間治療者のうち約1/10,000人)、これは重篤な横紋筋融解症に進展する可能性があります(年間治療者のうち約0.2/10,000人)。しかし、重度ではない筋肉症状については明らかになっていません。

多くの人は、スタチンが筋肉痛を頻繁に引き起こすと考えており、この考えは、非盲検の観察研究の結果やメディアの報道によって強化されています。このような考えにより、患者は治療を中断し、心血管疾患リスクを高めることになっています。

日常診療を受けている患者にとって、筋肉症状がスタチンによって引き起こされているかどうかを確実に判断することは、臨床医にとっても患者にとっても容易ではありません。

そこで今回は、個々の患者を対象にした盲検下ランダム化比較試験StatinWISE(Statin Web-based Investigation of Side Effects)の結果についてご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

参加者 151例が、少なくとも1回のスタチン投与期間と1回のプラセボ投与期間の症状スコアを提供し、一次解析に含まれました。スタチン投与期間とプラセボ投与期間で、筋肉症状スコアに差は認められませんでした。

スタチン群
(アトルバスタチン20mg)
プラセボ群
筋肉症状の平均スコア(VAS)1.68
(SD 2.57)
1.85
(SD 2.74)

☆平均差(スタチン-プラセボ)-0.11、95%信頼区間 -0.36~0.14、P=0.40

耐得られない筋肉症状による中止は、スタチン投与期間では18例(9%)、プラセボ投与期間では13例(7%)でしたが、試験終了者の3分の2は、スタチン長期治療を再開する意向があったようです。

スタチンによる筋肉症状はバイアスが多く含まれているのかもしれません。現時点においては、内的妥当性の高い試験です。

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✅まとめ✅ スタチン服用時に重度の筋肉症状を報告したことのある参加者において、アトルバスタチン20mgは、プラセボと比較して重度ではない筋肉症状の発生に差は認められなかった

根拠となった論文の抄録

目的:過去にスタチン服用時に筋肉症状を訴えたことのある人を対象に、スタチンの筋肉症状への影響を確立すること。

試験デザイン:ランダム化、プラセボ対照のn-of-1試験シリーズ。

試験設定:2016年12月から2018年4月まで、英国の50施設にわたるプライマリーケア

参加者:筋肉症状のために最近スタチンの治療を中止した、または中止を検討している200例。

介入:参加者は、アトルバスタチン20mgを1日1回投与するか、プラセボを投与する二重盲検の治療期間(各2ヵ月)を6回繰り返す方法にランダム割り付けされた。

主要評価項目:各治療期間の終了時に、参加者は筋肉症状を視覚的アナログスケール(0~10)で評価した。主要解析では、スタチン投与期間とプラセボ投与期間の症状スコアを比較した。

結果:参加者 151例が、少なくとも1回のスタチン投与期間と1回のプラセボ投与期間の症状スコアを提供し、一次解析に含まれた。
全体として、スタチン投与期間とプラセボ投与期間で、筋肉症状スコアに差は認められなかった(平均差スタチン-プラセボ -0.11、95%信頼区間 -0.36~0.14、P=0.40)。
不耐応の筋肉症状による中止は、スタチン投与期間では18例(9%)、プラセボ投与期間では13例(7%)であった。試験終了者の3分の2は、スタチンによる長期治療を再開することを報告した。

結論:スタチン服用時に重度の筋肉症状を報告したことのある参加者において、アトルバスタチン20mgの筋肉症状に対するプラセボと比較した全体的な効果は認められなかった。試験を終えたほとんどの参加者は、スタチン系薬剤による治療を再開する意向があることを示した。N-of-1試験は、集団レベルで薬効を評価し、個々の治療の指針とすることができる。

引用文献

Statin treatment and muscle symptoms: series of randomised, placebo controlled n-of-1 trials
Emily Herrett et al. PMID: 33627334 PMCID: PMC7903384 DOI: 10.1136/bmj.n135
BMJ. 2021 Feb 24;372:n135. doi: 10.1136/bmj.n135.
ISRCTN30952488, EUDRACT 2016-000141-31, NCT02781064.
—続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33627334/

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