2型糖尿病患者における変形性関節症の発症に対するメトホルミン vs. SU系薬(コホート研究; JAMA Netw Open. 2023)

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メトホルミンは変形性膝関節症の発症抑制と関連しているのか?

メトホルミンは末梢組織における糖取り込みの促進、小腸における糖吸収の抑制等の作用を介して血糖降下作用を示すとされています。仮説として報告されている作用機序は多岐にわたることから、2型糖尿病だけでなく、がんや他の疾患への有用性が期待されています。

これまでの報告から、変形性関節症(OA)の発症に対して、メトホルミンが保護的な関連性を有する可能性が示されていますが、確たる疫学データは不足しています。

そこで今回は、2型糖尿病患者において、スルホニルウレア系薬剤と比較してメトホルミンで治療した場合のOAおよび人工関節置換のリスクを明らかにしたレトロスペクティブ・コホート研究の結果をご紹介します。

本試験では、2003年12月から2019年12月までのOptum deidentified Clinformatics Data Mart Databaseの請求データが用いられました。参加者は、40歳以上で少なくとも1年間の継続的な登録があり、2型糖尿病を有していました。1型糖尿病、またはOA、炎症性関節炎、または関節置換の診断歴がある個人は除外されました。年齢、性別、人種、シャルソン併存疾患スコア、治療期間を用いて時間条件付き傾向スコアマッチングを行い、有病新規ユーザーコホートを作成しました。データは、2021年4月から12月まで分析されました。

関心のあるアウトカムは、OAおよび関節置換術の発症でした。Cox比例ハザードモデルを用いて、OAおよび人工関節置換術の発症の調整ハザード比(aHR)を算出しました。感度分析では、メトホルミンによる治療歴を有する集団をスルホニルウレア系薬剤による治療歴のある集団と比較しました。

試験結果から明らかになったことは?

時間条件付き傾向スコアマッチング後、メトホルミン群と対照群にはそれぞれ20,937例(平均[SD]年齢 62.0[11.5]歳、男性 24,379例[58.2%])が含まれました。

調整後ハザード比 aHR
メトホルミン vs. スルホニルウレア系薬剤
感度分析
OA発症リスクaHR 0.76
(95%CI 0.68〜0.85
P<0.001
aHR 0.77
(95%CI 0.65〜0.90
P<0.001
関節置換リスクaHR 0.80
(95%CI 0.50〜1.27
P=0.34
aHR 1.04
(95%CI 0.60〜1.82
P=0.89

調整後解析では、OA発症リスクは、スルホニルウレア系薬剤と比較してメトホルミンで治療した人で24%減少しましたが(aHR 0.76、95%CI 0.68〜0.85; P<0.001)、関節置換リスクについては有意差はありませんでした(aHR 0.80、95%CI 0.50〜1.27; P=0.34)。

感度分析では、OA発症リスクは、スルホニルウレア系薬剤と比較してメトホルミンで治療した集団の方が低いままであり(aHR 0.77、95%CI 0.65〜0.90; P<0.001)、関節置換のリスクは統計的に有意ではない(aHR 1.04、95%CI 0.60〜1.82; P=0.89)ままでした。

コメント

メトホルミンは多面的な作用を有していることから、様々な疾患への応用が期待されています。

さて、糖尿病患者のコホート研究において、メトホルミン治療は、スルホニル尿素治療と比較して、変形性膝関節症(OA)発症リスクの有意な低下と関連していました。一方、関節置換リスクについては差がありませんでした。OAと言っても病期のステージによって、重症度が異なります。関節置換を実施するのは、重症度の高いOA患者集団であることから、今回の結果から重要な示唆を得られます。ただし、本試験はコホート研究であり、あくまでも仮説生成的な結果です。追試が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 糖尿病患者のコホート研究において、メトホルミン治療は、スルホニル尿素治療と比較して、変形性膝関節症の発症リスクの有意な低下と関連していた。

※次ページに根拠となった論文情報を掲載しています。

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