A Randomized Controlled Trial to Reduce Falls in People With Parkinson’s Disease
Meg E Morris et al.
Neurorehabil Neural Repair. 2015 Sep;29(8):777-85.
doi: 10.1177/1545968314565511. Epub 2015 Jan 7.
PMID: 25567121
ACTRN12606000344594
Keywords: Parkinson’s disease; falls prevention; movement strategy training; physical therapy; progressive resistance strength training.
論文の概要図
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【パーキンソン病患者の転倒に対する理学療法介入の効果はどのくらいですか?】
PICOTSL
- P:MMSEスコアが24点以上、ホーン・ヤールの重症度分類が5以下のパーキンソン病患者
- I :漸増抵抗力トレーニング(progressive resistance strength training)*
運動戦略トレーニング(movement strategy training) - C:ライフスキルプログラム(対照群)
- O:primary_介入完了から12ヵ月間にわたって前向きに記録された転倒率
- T:治療・予後、RCT
- S:オーストラリア、単施設(実施期間:2006年7月〜2010年12月)
- L:単盲検かつ単施設のため一般化が困難である。対照群では脱落率が高かった。対象患者が軽度から中等度。筋力や運動量などを測定していない。症例数が少なく検出力不足。
*転倒予防教育を併用
選択基準
組入基準
- Mini Mental State Examination(MMSE*)スコアが24点以上
- HoehnおよびYahrステージ(ホーン・ヤールの重症度分類**)が5以下
- パーキンソン病の確定診断
- 介入を行うことが医学的に可能かつ安全
*ミニメンタルステート検査:時間の見当識、場所の見当識、3単語の即時再生と遅延再生、計算、物品呼称、文章復唱、3段階の口頭命令、書字命令、文章書字、図形模写の計11項目から構成される30点満点の認知機能検査である。
**ホーン・ヤール重症度分類:Ⅰ〜Ⅴの5段階で分類され疾患重症度ステージが進むほど数字が大きい
I :体の片側だけに手足のふるえや筋肉のこわばりがみられる。体の障害はないか、あっても軽い。
II :両方の手足のふるえ、両側の筋肉のこわばりなどがみられる。日常の生活や仕事がやや不便になる。
III :小刻みに歩く、すくみ足がみられる。方向転換のとき転びやすくなるなど、日常生活に支障が出るが、介助なしに過ごせる。職種によっては仕事を続けられる。
Ⅳ:立ち上がる、歩くなどが難しくなる。生活のさまざまな場面で、介助が必要になってくる。
Ⅴ:車いすが必要になる。ベッドで寝ていることが多くなる。
除外基準
- 脳深部刺激を受けたことのある患者
批判的吟味
- ランダム割り付けされているか?→⭕️
- ランダム化が隠蔽化されているか?→⭕️ :中央割り付けであり、封筒法で隠蔽化されている。
評価を実施したすべての治療者は、グループへの割り付けを分からないようにした。 - ベースラインは同等か?→🔺:いくつかの項目でバラツキがある。
レボドパのみによる治療、併用療法、4種類以上の薬剤使用、向精神病薬、修正ホーン・ヤール分類、無動などに群間差があるようにみえる。例数から3群のバランスを取ることは困難であると考えられるが、特に対照群で修正ホーン・ヤール分類のスコアが高めな点は気にかかる。また筋力や運動量などの測定が実施されていない。 - ITT解析か?→⭕️:全ての解析がITT解析で実施された。
- 脱落は結果に影響を与えるほどか?→🔺:対照群で脱落が多い。
漸増抵抗力トレーニング:同意撤回 2例、死亡 1例
運動戦略トレーニング :死亡 2例
ライフスキル情報 :同意撤回 2例、試験継続を望まなかった 5例、死亡 1例 - マスキング(ブラインド)されているか?→🔺:評価者のみの単盲検。トレーニング介入であるため致し方ない気がする。
介入を実施した治療者は、参加者の評価を行わず、アウトカム指標を記録しなかった。研究者、評価者、スタッフは、すべての参加者が試験を終了するまで試験結果を知らされなかった。 - 症例数は充分か?→❌:サンプルサイズ不足。
対照群の60%が転倒、3群間の転倒者の割合の差が20%、脱落率 15%、検出力 80%、有意水準 5%であることに基づいて780例の先験的なサンプルサイズの計算を行ったところ、当初は330例(110例/群)の参加者が必要であることが示された。 - アドヒアランスは?→⭕️:参加者の出席率(6回以上のセッションへの出席によって定義)は、3群間で差がなかった。
すべてのセッションへの出席率は良好で、参加者の90%が予定の8セッションのうち6回以上に出席していた。 - 主要アウトカムに対する試験期間は妥当か?→⭕️:妥当であると判断した(前向きに12ヵ月間)。
結果
主要アウトカム:転倒発生率
漸増抵抗力トレーニング vs. ライフスキルプログラム
IRR = 0.385(95%CI 0.184〜0.808)、P<0.05
運動戦略トレーニング vs. ライフスキルプログラム
IRR = 0.151(95%CI 0.071〜0.322)、P<0.01
※転倒は、ヒトが地面、床、または低層階で安静になる結果となった予期せぬ出来事と定義された。
安全性
重大な副作用や重要な有害性は報告されておらず、どの群においても意図しない影響はなかった。
各群の介入内容
漸増抵抗力トレーニング(PRST群)
PRST群では、理学療法士の指導のもと、個別に機能的抵抗運動を行った。
参加者の知覚労作が修正知覚労作スケールの必要レベル(≒5)を下回った場合、エクササイズは、反復回数を最大15回まで、セット数を最大3回まで、または体重の2%の重さを増加させることで進行した。抵抗は、ウェイトベスト、セラバンド(Hygenic Corp, Akron, OH)、またはウェイトを使用した。
タスクは、反復回数とセット数を増やし、タスクの難易度を調整することで進行させた。
各セッションの開始時に、参加者の健康状態の変化や前回のセッション以降の新たな筋肉痛の有無をモニターし、プログラムを適宜調整した。各セッションの開始時には、参加者の健康状態の変化や前回のセッション以降の新たな筋肉痛をモニターし、プログラムを適切に調整した。PRST群では、クリニックでの治療セッションに加えて、週に1回の自宅での運動プログラムを行った。自宅でのプログラムセッションは、外来治療セッションの内容と期間とほぼ一致していた。
運動戦略トレーニング(MST群)
参加者は、先に詳述したように、セラピスト、家族、介護者の監督の下で、注意力、精神的なリハーサル、動きの視覚化、言葉による合図、リズミカルな合図、視覚的な合図を使用して、戦略を練習した。 参加者は週に一度、自宅でエクササイズシートとエクササイズとストラテジーの写真が掲載された小冊子を使ってストラテジーを練習した。在宅プログラムのセッションは、外来治療セッションの内容と期間に非常によく似ていた。
ライフスキルプログラム(対照群)
ライフスキルセッションは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、またはソーシャルワーカーが実施した。
これらのセッションには、社会活動、実践的なアドバイス、情報セッション、グループディスカッションなどが含まれていたが、転倒や移動に関する内容は含まれていなかった。
在宅プログラムは、パンフレット、DVD、小冊子、オーディオテープを用いた同様のライフスキル活動を毎週2時間実施した。
✅まとめ✅ 軽度から中等度のパーキンソン病患者における転倒予防教育と漸増抵抗力トレーニングまたは運動戦略トレーニングを組み合わせたリハビリテーション介入は、ライフスキル情報のみと比較して、転倒率を減少させた
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