日焼け防止行動により骨密度の低下や骨折リスク増加は起こるのか?
日焼け防止とビタミンD欠乏症との間には因果関係がないというエビデンスが出てきたにもかかわらず、多面的な日焼け防止が骨密度(BMD)の低下や骨粗鬆症性骨折の有病率の増加と関連するかどうかについてのデータは充分ではありません。このようなデータの不足から、患者の心配や日焼け防止行動の低下につながる可能性があります。
そこで今回は、日焼け防止行動とBMD zスコアおよび骨粗鬆症性骨折の有病率との関連を調査した米国の人口ベース研究の結果をご紹介します。
この横断研究には、国民健康・栄養調査(NHANES)の2017年から2018年のサイクルに参加した米国の成人データが含まれていました。データは2020年9月から11月にかけて分析されました。主要評価項目は、部位別BMDおよび総BMD、骨粗鬆症性骨折(股関節、手首、脊椎)でした。
試験結果から明らかになったことは?
NHANESの皮膚科アンケートに回答した20歳以上の成人3,418例(平均年齢 39.5歳[95%CI 38.6~40.4]、男性1,612例[47.2%]、女性1,806例[52.9%])のデータを対象としました。
「頻繁に日陰に入る」、「長袖を着る」、「日焼け止めを使う」における割合は、それぞれ31.6%(95%信頼区間 27.8~35.7%)、11.8%(95%信頼区間 10.6~13.1%)、26.1%(95%信頼区間 23.5~28.8%)でした。
部位別および全体のBMD zスコアの低下 推定値(95%CI) | |
頻繁に日陰に入る | -0.23(-0.47〜0.02)、P=0.18 |
長袖を着る | -0.08(-0.27〜0.12)、P=0.72 |
日焼け止めを使用 | -0.10(-0.32〜0.13)、P=0.15 |
個々の日焼け防止行動の実施は、多変量モデルにおいて、部位別および全体のBMD zスコアの低下とは関連していませんでした(頻繁に日陰に入る、長袖を着る、日焼け止めを使用することについて、それぞれの推定値-0.23 [95%CI -0.47〜0.02]、P=0.18、-0.08 [-0.27〜0.12]、P=0.72、および-0.10 [-0.32〜0.13]、P=0.15)。
多変量モデルでは、中程度から頻繁に日陰にいることは、脊椎骨折の有病率の低下と関連していました(オッズ比 0.19 [95%CI 0.04〜0.86]、P=0.02)。
コメント
ビタミンDはカルシウムとリンの吸収を高め、骨形成を促します。ビタミンDは日光により体内で生成されることから、日光を遮るとビタミンDの生成低下・骨形成の低下から骨粗鬆症、さらには骨折が引き起こされる可能性があります。
さて、日焼け防止行動「頻繁に日陰に入る」、「長袖を着る」、「日焼け止めを使う」により、BMDの低下や骨粗鬆症性骨折のリスク増加とは関連していませんでした。
ちなみに体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間を推定した国立環境研究所の研究結果では、両手・顔を晴天日の太陽光に露出したと仮定した場合、紫外線の弱い冬の12月の正午では、那覇で8分、つくばでは22分の日光浴で必要量のビタミンDを生成することができるものの、緯度の高い札幌では、つくばの3倍以上の76分日光浴をしないと必要量のビタミンDを生成しないことが判りました。露出している部分がある程度あれば、天候にもよりますが、短時間でビタミンDが生成されるようです。
過度の日焼けは、日焼けだけでなく、皮膚のシワやシミ、良性腫瘍だけでなく皮膚がんや白内障を引き起こすことが報告されていますので、日焼け防止行動は実施した方が良いと考えます。
✅まとめ✅ 米国の成人集団における日焼け防止行動の日常的な実施は、BMDの低下や骨粗鬆症性骨折のリスク増加とは関連していなかった。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:日焼け防止とビタミンD欠乏症との間には因果関係がないという心強いエビデンスが出てきたにもかかわらず、多面的な日焼け防止が骨密度(BMD)の低下や骨粗鬆症性骨折の有病率の増加と関連するかどうかについてのデータは少ない。このようなデータの不足は、患者の心配や日焼け防止行動の低下につながる可能性がある。
目的:日焼け防止行動とBMD zスコアおよび骨粗鬆症性骨折の有病率との関連を調査する。
試験デザイン、設定および参加者:この人口ベースの横断研究には、国民健康・栄養調査(NHANES)の2017年から2018年のサイクルに参加した米国の成人データが含まれている。データは2020年9月から11月にかけて分析された。
主要アウトカムと測定方法:NHANESデータにおける日焼け防止行動(日陰にいる、長袖を着る、日焼け止めの使用)、部位別BMDおよび総BMD、骨粗鬆症性骨折(股関節、手首、脊椎)と定義されました。
結果:NHANESの皮膚科アンケートに回答した20歳以上の成人3,418例(平均年齢 39.5歳[95%CI 38.6~40.4]、男性1,612例[47.2%]、女性1,806例[52.9%])のデータを対象とした。
「頻繁に日陰に入る」、「長袖を着る」、「日焼け止めを使う」における割合は、それぞれ31.6%(95%信頼区間 27.8~35.7%)、11.8%(95%信頼区間 10.6~13.1%)、26.1%(95%信頼区間 23.5~28.8%)であった。
個々の日焼け防止行動の実施は、多変量モデルにおいて、部位別および全体のBMD zスコアの低下とは関連していなかった(日陰に頻繁に入る、長袖を着る、日焼け止めを使用することについて、それぞれ推定値-0.23 [95%CI -0.47〜0.02]、P=0.18、-0.08 [-0.27〜0.12]、P=0.72、および-0.10 [-0.32〜0.13]、P=0.15)。
多変量モデルでは、中程度から頻繁に日陰にいることは、脊椎骨折の有病率の低下と関連していた(オッズ比 0.19 [95%CI、0.04〜0.86]、P=0.02)。
結論と関連性:今回の横断研究では、米国の成人集団における日焼け防止行動の日常的な実施は、BMDの低下や骨粗鬆症性骨折のリスク増加とは関連していなかった。日焼け防止は、おそらくリスク回避行動のために、骨粗鬆症性骨折の有病率のわずかな減少と関連しているかもしれない。これらの結果は、日焼け防止の安全性に関する証拠が増えていることを示しており、骨の健康との間にそれほど大きな負の関連はないことを示唆している。
引用文献
Association of Sun-Protective Behaviors With Bone Mineral Density and Osteoporotic Bone Fractures in US Adults
Mohsen Afarideh et al. PMID: 34705034 PMCID: PMC8552114 (available on 2022-10-27)DOI: 10.1001/jamadermatol.2021.4143
JAMA Dermatol. 2021 Oct 27;e214143. doi: 10.1001/jamadermatol.2021.4143. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34705034/
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