Dapagliflozin in Patients with Heart Failure and Reduced Ejection Fraction
McMurray JJV et al.
NEJM 2019
PMID:31535829
Funding: AstraZeneca
ClinicalTrials .gov number, NCT03036124.
【PICOTS】
P: EF40%以下の心不全患者(NYHA II〜IV)
I : 標準治療+ダパグリフロジン 10mg/day
C: 標準治療+プラセボ
O: primary outcome —- 心不全の増悪(入院あるいは静脈内治療を必要とする心不全)+心血管死亡の複合
T: ランダム化比較試験(バランスブロックランダム化、2型糖尿病の有無に重きをおき層別化)、治療・予後、プラセボ対照、ITT解析
S: 20ヶ国の410施設、追跡期間18ヶ月
【患者背景】
両群間で患者背景に偏りは認められない。NYHAⅡが約67%、Ⅲが約32%、IVが約1%。
【組入基準】
18歳以上、駆出率40%以下、およびニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスII、III、またはIVの症状を有する患者。
sacubitril–valsartanに加えてベータ遮断薬少なくとも600 pg/mL(または心不全で入院した場合は≥400 pg/mL)の血漿N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)。過去12か月)。 ベースライン心電図で心房細動または心房粗動のある患者については、心不全の入院歴に関係なく、少なくとも900 pg/mLのNT-proBNPレベルを有す。
患者は、標準的な心不全機器療法(植込み型除細動器、心臓再同期療法、またはその両方)と、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、sacubitril–valsartanに加えてベータ遮断薬などの標準的な薬物療法を受ける必要があった。 ただし、そのような薬剤の使用が禁じられているか、許容できない副作用が生じた場合を除く。
さらに、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の使用が奨励された。
ガイドラインの推奨に従って、薬剤の用量は個別に調整された。
2型糖尿病の患者(組入後に新規で発症したのは各群3%ずつ)は引き続き血糖降下療法を受けたが、必要に応じて用量を調整することができた。 具体的には、低血糖リスクを最小限に抑えるために、インスリンとスルホニル尿素の用量を減らすことができる(たとえば、HbA1cレベルが7%未満の患者)。
【除外基準】
SGLT2阻害剤による最近の治療または許容できない副作用、1型糖尿病、低血圧または収縮期血圧が95 mm Hg未満、および推定糸球体濾過率(eGFR)30 mL/min/1.73 m2未満または急速に低下する腎機能が含まれる。
【批判的吟味】
・ランダム化:⭕️(ブロックランダム化:ブロック数は8)
・コンシールメント:⭕️(interactive voice- or Web- response systemによる中央割付)
・ブラインド(マスキング):⭕️(二重らしい)
・サンプルサイズ:充分。power =90%, α =0.05で4,500例必要。
・真のアウトカム:真のアウトカムを含む複合
・解析方法:Intention-To-Treat, ITT
・脱落:ダパグリフロジン群で268例(11.3%)、プラセボ群で283例(11.9%)
【結果】
・有効性
ダパグリフロジン群の386人(16.3%)およびプラセボ群の502人(21.2%)で、心不全の悪化(入院または心不全の静脈内治療をもたらす緊急来院)または死亡の主要な複合転帰が発生した。
★ハザード比 =0.74, 95%信頼区間[CI] 0.65〜0.85, P <0.001
⇒ ARR =4.9, NNT =21(95%CI 15〜38)
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複合アウトカムの3つのコンポーネントすべてのイベント率は、ダパグリフロジンを支持した。
心不全の悪化の最大数は入院であった。 ダパグリフロジンを投与された患者のうち231人(9.7%)が心不全で入院したのに対し、プラセボ群では318人(13.4%)だった。
★ハザード比 =0.70; 95%CI 0.59〜0.83
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心血管系の原因による死亡は、ダパグリフロジン群で227例(9.6%)およびプラセボ群で273例(11.5%)発生した。
★ハザード比 =0.82, 95%CI, 0.69〜0.98
—-
心不全による入院または心血管性死亡の二次複合アウトカムの発生率は、プラセボ群よりもダパグリフロジン群の方が低かった。
★ハザード比 =0.75; 95%CI, 0.65〜0.85, P <0.001)
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ダパグリフロジン群では、567件の初発イベントと再発イベント(心不全による入院340件および心血管死亡227件)、プラセボ群では742件のイベント(心不全による入院469件および心血管死亡273件)が発生した。
★Rate Ratio =0.75(95%CI, 0.65〜0.88, P <0.001)
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カンザスシティ心筋症アンケートの総症状スコアの増加(症状が少ないことを示す)は、ベースラインから8ヶ月目までの間にプラセボ群よりもダパグリフロジン群で大きかった。
ダパグリフロジン群では、プラセボ群よりも多くの患者が合計スコアで少なくとも5ポイント(最小限の重要な差)の増加を示した。
★58.3% vs. 50.9%; オッズ比 =1.15; 95%CI 1.08〜1.23, P <0.001)
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また有意な悪化がみられたものは少数だった。
★25.3% vs. 32.9%, オッズ比 =0.84, 95%CI 0.78〜0.90, P <0.001)
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事前に指定された腎複合アウトカムの発生率は、治療グループ間で差はなかった。
ダパグリフロジン群の276人(11.6%)とプラセボ群の329人(13.9%)が何らかの原因で死亡した。
★ハザード比 =0.83; 95%CI 0.71〜0.97)
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NYHA機能性クラスIIIまたはIVの患者はクラスIIの患者よりも有益性が低いようにみえたが、ダパグリフロジンの主要アウトカムに対する効果は、ベースラインで糖尿病のない患者を含む、事前に指定されたサブグループ全体でほぼ一貫していた。
ベースラインでサキュビトリル-バルサルタンを服用している患者を含む事後サブグループ分析では、主要アウトカムのダパグリフロジンとプラセボの比較ハザード比は0.75(95%CI 0.50〜1.13)、服用していない群では0.74(95%CI 0.65〜0.86)だった。
・安全性
合計8人の患者(ダパグリフロジン群で5人、プラセボ群で3人)は、ダパグリフロジンまたはプラセボを投与しなかったため、安全性解析から除外された(本文 Table 2)。
ダパグリフロジン群では29人(1.2%)、プラセボ群では40人(1.7%)の患者で体積減少に関連する重篤な有害事象が発生した(P = 0.23)。
重篤な腎有害事象は、ダパグリフロジン群の38例(1.6%)およびプラセボ群の65例(2.7%)で発生した(P = 0.009)。
有害事象が治療の中止につながることはめったになかった。
・重篤な有害事象はすべて Table S1にリストされた。
・ダパグリフロジン群では、各イベントの顕著な増加はなかった。
【コメント】
内的妥当性は問題なさそう。ソフトアウトカムと思われる項目も入っているが、二重盲検であるため気にしなくても良いのかもしれない。ただし試験が進むにつれ、各パラメータ(Hematocrit、NT-proBNP、体重)の群間差が出てくるため、ソフトアウトカムへ影響が出てくる可能性が高い。
複合ではあるが、プライマリーアウトカムについて有意な差が認められた。これは2型糖尿病併発の有無にかかわらず、有意な差であった。
またプライマリーアウトカムに含まれている各項目について、それぞれ単体でも群間差は認められているが、統計解析は実施されなかった。
個人的に気になったのは、ダパグリフロジン追加によるA1c低下は -0.21だったこと。これは2型糖尿病の既往を有する患者が、両群ともに40%程度含まれていたためではないかと考えられる。また有害事象のうち、体液減少による重篤なイベントがプラセボ群で多い点も気になった。さらにARNI使用の有無でアウトカム発生に差異が認められたが、これは薬剤を使用した層が全体の10%程度であることから、SGLT2阻害薬とARNIとの使い分けについて結論は出せず、さらなる検討が必須である。
外的妥当性については、アジア人種が全体の20%程度、eGFR 66 mL/min/1.73 m2、年齢66歳程度、NYHAクラスIIが67%と、そこまで低くないと考えられる。またBMI 28については、浮腫を含めての値であると考えられるため、そこまで高い値ではないと考えられる。
総評としては、決して特殊な患者層ではないため目の前の患者に適応できる可能性が高い。
なんとなくフォシーガ®️以外のSGLT2阻害薬も同じような臨床試験やりそう。
コメント
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