起立性/立位低血圧患者においても積極的な降圧は有効ですか?(個人データのメタ解析; JAMA. 2023)

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起立性低血圧あるいは立位低血圧患者においても厳格に血圧コントロールした方が良いのか?

成人の起立性低血圧あるいは立位低血圧(orthostatic/standing hypotension)の患者において、集中的な血圧治療と標準的な血圧治療の利点について継続的な懸念があります。これは、治療に伴うリスクとベネフィットに関する情報の集積が不充分であるためです。

そこで今回は、ベースライン時に起立性低血圧あるいは立位低血圧を有する患者層における、より低い血圧治療目標または積極的治療と標準的な血圧治療目標、プラセボとの心血管疾患(CVD)または全死亡に対する効果を明らかにすることを目的に実施されたメタ解析の結果をご紹介します。

本試験は2022年5月13日までのMEDLINE、EMBASE、CENTRALデータベースの系統的レビューに基づく個々の参加者データのメタ解析(PRISMAガイドラインに従って抽出)です。起立性/立位低血圧の評価を伴う血圧薬理学的治療(より強度の高い血圧目標または治療薬)のランダム化試験が対象となりました。1段階アプローチによるCox比例ハザードモデルを用いて効果が決定されました。

本試験の主要アウトカムはCVDまたは全死亡でした。

起立性低血圧は、座位から立位に体位を変えた後に収縮期血圧が20mmHg以上、および/または拡張期血圧が10mmHg以上低下したものと定義されました。一方、立位低血圧は、起立時の収縮期血圧が110mmHg以下、または起立時の拡張期血圧が60mmHg以下と定義されました。

試験結果から明らかになったことは?

9件の試験には29,235例が参加し、中央値で4年間追跡されました(平均年齢 69.0[SD 10.9]歳、女性 48%)。ベースライン時の起立性低血圧は9%、立位低血圧は5%でした。

ベースライン時に起立性低血圧を有さない群ベースライン時に起立性低血圧を有する群
より集中的な血圧治療または積極的治療HR 0.81
(95%CI 0.76〜0.86
HR 0.83
(95%CI 0.70〜1.00
ベースライン時の起立性低血圧の有無と治療の交互作用P=0.68

より集中的な血圧(降圧)治療または積極的治療により、ベースライン時に起立性低血圧を有さない群(ハザード比[HR] 0.81、95%CI 0.76〜0.86)では、ベースライン時に起立性低血圧を有する群(HR 0.83、95%CI 0.70〜1.00;ベースライン時の起立性低血圧と治療の交互作用P=0.68)と同様に、CVDまたは全死亡のリスクが低下しました。

ベースライン時に立位低血圧を有さない群ベースライン時に立位低血圧を有する群
より集中的な血圧治療または積極的治療HR 0.80
(95%CI 0.75〜0.85
HR 0.94
(95%CI 0.75〜1.18
ベースライン時の立位低血圧の有無と治療の交互作用P=0.16

より集中的な血圧治療または積極的治療は、ベースライン時に立位低血圧を有さない群ではCVDまたは全死亡のリスクを低下させ(HR 0.80、95%CI 0.75〜0.85)、ベースライン時に立位低血圧を有する群では有意ではありませんでした(HR 0.94、95%CI 0.75〜1.18)。しかし、上記の効果はベースライン時の立位低血圧による差はありませんでした(治療とベースラインの立位低血圧との交互作用P=0.16)。

コメント

成人の起立性低血圧あるいは立位低血圧(orthostatic/standing hypotension)の患者における積極的な降圧治療が、患者転帰に与える影響については充分に検討されていません。

さて、高血圧試験参加者の個人データを用いたメタ解析において、集中的治療は起立性低血圧の有無にかかわらず心血管疾患または全死亡のリスクを低下させました。一方、立位低血圧の有無においては、リスク低下の程度が異なっていました。

まだまだ試験数が少なく、データ数が充分ではありませんが、少なくとも起立性低血圧を有する患者集団においては、積極的な降圧治療が患者予後に優れているようです。とはいえ、転倒や骨折のリスクが増加する可能性があることから、積極的な降圧における継続的な安全性評価が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 高血圧試験参加者の個人データを用いたメタ解析において、集中的治療は起立性低血圧の有無にかかわらず心血管疾患または全死亡のリスクを低下させた。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:成人起立性低血圧あるいは立位低血圧(orthostatic/standing hypotension)の患者において、集中的な血圧治療と標準的な血圧治療の利点について継続的な懸念がある。

目的:ベースライン時に起立性低血圧を有する層における、より低い血圧治療目標または積極的治療と標準的な血圧治療目標またはプラセボとの心血管疾患(CVD)または全死亡に対する効果を明らかにすること。

データ源:2022年5月13日までのMEDLINE、EMBASE、CENTRALデータベースの系統的レビューに基づく個々の参加者データのメタ解析

研究の選択:起立性低血圧の評価を伴う血圧薬理学的治療(より強度の高い血圧目標または治療薬)のランダム化試験。

データ抽出と統合:PRISMAガイドラインに従って抽出された個々の参加者データのメタ解析。1段階アプローチによるCox比例ハザードモデルを用いて効果を決定した。

主要アウトカムと評価基準:主要アウトカムはCVDまたは全死亡とした。起立性低血圧は、座位から立位に体位を変えた後に収縮期血圧が20mmHg以上、および/または拡張期血圧が10mmHg以上低下したものと定義した。立位低血圧は、起立時の収縮期血圧が110mmHg以下、または起立時の拡張期血圧が60mmHg以下と定義した。

結果:9件の試験には29,235例が参加し、中央値で4年間追跡された(平均年齢 69.0[SD 10.9]歳、女性 48%)。ベースライン時の起立性低血圧は9%、立位低血圧は5%であった。より集中的な血圧治療または積極的治療により、ベースライン時の起立性低血圧のない群(ハザード比[HR] 0.81、95%CI 0.76〜0.86)では、ベースライン時の起立性低血圧のある群(HR 0.83、95%CI 0.70〜1.00;ベースライン時の起立性低血圧と治療の交互作用P=0.68)と同様に、CVDまたは全死亡のリスクが低下した。より集中的な血圧治療または積極的治療は、ベースラインの立位低血圧のない群ではCVDまたは全死亡のリスクを低下させ(HR 0.80、95%CI 0.75〜0.85)、ベースラインの立位低血圧のある群では有意ではなかった(HR 0.94、95%CI 0.75〜1.18)。効果はベースラインの立位低血圧による差はなかった(治療とベースラインの立位低血圧との交互作用P=0.16)。

結論と関連性:高血圧試験参加者のこの集団において、集中的治療は起立性低血圧の有無にかかわらず心血管疾患または全死亡のリスクを低下させたが、起立性低血圧のある人で効果が異なるという証拠はなかった。

引用文献

Orthostatic Hypotension, Hypertension Treatment, and Cardiovascular Disease: An Individual Participant Meta-Analysis
Stephen P Juraschek et al. PMID: 37847274 PMCID: PMC10582789 (available on 2024-04-17) DOI: 10.1001/jama.2023.18497
JAMA. 2023 Oct 17;330(15):1459-1471. doi: 10.1001/jama.2023.18497.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37847274/

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