高齢の抗うつ薬使用と認知症の発症リスクとの関連性は?(前向きコホート研究; J Affect Disord. 2024)

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高齢者における抗うつ薬の使用と認知症リスクとの関連性は?

抗コリン作用を有する抗うつ薬の使用は、認知症リスクの増加と関連する可能性が報告されています。しかし、これまでに発表されている結果は矛盾しています。

そこで今回は、三環系抗うつ薬(TCA)を処方された高齢者と、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やその他の抗うつ薬(OA)を処方された高齢者の認知症発症リスクを比較することを目的に実施されたスペインの前向きコホート研究の結果をご紹介します。

本研究は、Spanish Database for Pharmacoepidemiological Research in Primary Care(BIFAP)のデータ(2005年から2018年まで)を用いて実施された前向き集団ベースのコホート研究です。本コホート研究には、認知症がなく、抗うつ薬長期単剤療法を受けている60歳以上の患者62,928例が含まれました。

患者はATCシステムに基づいて曝露抗うつ薬群[TCA、SSRI使用者、OAs使用者]に分けられました。認知症の発症リスクはCox回帰モデルによって算出され、ハザード比(HR)と95%信頼区間が示されました。生存解析にはKaplan-Meierモデルが、関連性の検定にはChi2検定が用いられました。

試験結果から明らかになったことは?

認知症の発症リスクハザード比 HR
(95%CI)
SSRI使用者 vs. 三環系抗うつ薬(TCA
使用者
HR 1.864(1.624〜2.140
その他の抗うつ薬(OA)使用者HR 2.103(1.818〜2.431

SSRI使用者はTCA使用者よりも認知症リスクが高いことが示されました(HR 1.864、95%CI 1.624〜2.140)。さらに、OA使用者にも有意な認知症リスクが認められました(HR 2.103、95%CI 1.818〜2.431)。

いくつかの限界は、抗うつ薬の処方傾向のばらつき、いくつかの抗うつ薬を使用している患者数の少なさ、用量や社会経済的特性に関する情報の欠如、他の適応症に対する抗うつ薬の使用、または治療コンプライアンスであろう。

コメント

抗精神病薬や抗うつ薬の使用により、認知症の発症リスクが高まる可能性が報告されています。しかし、充分に検討されていません。

さて、スペインの前向きコホート研究の結果、高齢者におけるSSRI及びその他の抗うつ薬の使用は、三環系抗うつ薬の使用者よりも認知症発症リスクが高い可能性が示されました。

抗コリン作用は、SSRIと比較して三環系抗うつ薬で強いことが知られています。薬剤の有する抗コリン作用が認知機能障害のリスクを高めることから、基礎研究の薬剤メカニズムとは相反する結果です。

研究デザインから、あくまでも相関関係が示されたに過ぎず、因果の逆転(逆因果)の可能性も充分にあります。そもそも認知症の発症リスクの高い集団が、SSRIを使用している(あるいは使用傾向にある)と考えられます。したがって、本研究結果のみで結論づけることは難しいと考えられます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ スペインの前向きコホート研究の結果、高齢者におけるSSRI及びその他の抗うつ薬の使用は、三環系抗うつ薬の使用者よりも認知症発症リスクが高い可能性が示された。

根拠となった試験の抄録

背景:抗コリン作用を有する抗うつ薬の使用は、認知症リスクの増加と関連している。しかし、発表されている結果は矛盾している。本研究の目的は、三環系抗うつ薬(TCA)を処方された高齢者と、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やその他の抗うつ薬(OA)を処方された高齢者の認知症発症リスクを比較することである。

方法:Spanish Database for Pharmacoepidemiological Research in Primary Care(BIFAP)のデータ(2005年から2018年まで)を用いて、前向き集団ベースのコホート研究を行った。コホート研究には、認知症がなく、抗うつ薬長期単剤療法を受けている60歳以上の患者62,928例が含まれた。患者はATCシステムに基づいて曝露抗うつ薬群[TCA、SSRI使用者、OAs使用者]に分けられた。認知症のリスクはCox回帰モデルによって算出され、ハザード比(HR)と95%信頼区間が示された。生存解析にはKaplan-Meierモデルを用いた。関連性の検定にはChi2検定を用いた。

結果:SSRI使用者はTCA使用者よりも認知症リスクが高いことが示された(HR 1.864、95%CI 1.624〜2.140)。さらに、OA使用者にも有意な認知症リスクがあった(HR 2.103、95%CI 1.818〜2.431)。いくつかの限界は、抗うつ薬の処方傾向のばらつき、いくつかの抗うつ薬を使用している患者数の少なさ、用量や社会経済的特性に関する情報の欠如、他の適応症に対する抗うつ薬の使用、または治療コンプライアンスである。

結論:我々の所見から、SSRIおよびOAの高齢使用者はTCA高齢使用者よりも認知症発症リスクが高いことが示された。しかし、さらなる研究が必要であろう。

キーワード:抗コリン薬、抗うつ薬、BIFAP、コホート研究、認知症

引用文献

Risk of dementia among antidepressant elderly users: A population-based cohort analysis in Spain
Javier Santandreu et al. PMID: 38195007 DOI: 10.1016/j.jad.2024.01.002
J Affect Disord. 2024 Jan 7:349:54-61. doi: 10.1016/j.jad.2024.01.002. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38195007/

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