SARS-CoV-2 オミクロン株に対するワクチン3回接種の効果はどのくらいなのか?
SARS-CoV-2のオミクロン株は、これまでの変異株よりも伝播することが報告されており、優勢期におけるワクチンの有効性がどのくらいであるのかについて関心が寄せられています。
そこで今回は、異種mRNAワクチンのブースタースケジュール(3回接種)と一次スケジュール(2回接種)および同種mRNAワクチンのブースタースケジュール(3回接種)を比較し、ワクチンの有効性を調査した集団ベースのコホート解析の結果をご紹介します。
本試験ではデンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンを対象に、2020年12月27日~2022年12月31日のデータが用いられました。
AZD1222(Oxford-AstraZeneca社製)または一価SARS-CoV-2野生株(先祖株)ベースのmRNAワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech社製)またはmRNA-1273(Moderna社製)を任意の組み合わせで少なくとも一次ワクチン接種を受けた18歳以上の成人全員が対象となりました。
本試験の主要アウトカム評価項目は、COVID-19によるCOVID-19関連入院および死亡の国別複合リスクであり、COVID-19による集中治療室入院およびSARS-CoV-2感染が追加アウトカムでした。
オミクロンが優勢であった期間に、これらの転帰を異種ブースターを受けた者と一次スケジュールを受けた者(マッチ解析)、および同種mRNAワクチンブースターを受けた者(重み付け解析)で比較されました。追跡調査はブースター投与後14日目から75日間に行い、ワクチンの有効性の比較は1-リスク比として算出されました。
試験結果から明らかになったことは?
北欧4カ国全体で、1,086,418例の参加者がAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273の異種ブースタースケジュールを受け、2,505,093例がBNT162b2+mRNA-1273の異種ブースタースケジュールを受けました。
AZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273 vs. 一次スケジュールのみ(2回接種) | BNT162b2+mRNA-1273 vs. 一次スケジュールのみ(2回接種) | |
COVID-19関連入院 | 82.7%(77.1%~88.2%) | 81.5%(78.9%~84.2%) |
COVID-19による死亡 | 95.9%(91.6%~100.0%) | 87.5%(82.5%~92.6%) |
一次スケジュールのみ(2回接種)と比較して、AZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273とBNT162b2+mRNA-1273からなる異種ブースタースケジュールのワクチン有効性は、COVID-19関連入院に対してそれぞれ82.7%(95%信頼区間 77.1%~88.2%)と81.5%(78.9%~84.2%)、COVID-19による死亡に対してそれぞれ95.9%(91.6%~100.0%)と87.5%(82.5%~92.6%)でした。
同族mRNAブースタースケジュールも同様に、前回の一次コースワクチン接種のみと比較して、COVID-19関連入院(≧76.5%)およびCOVID-19による死亡(≧84.1%)に対する予防効果の増加と関連していました。
AZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273 vs. 同種ブースタースケジュール | BNT162b2+mRNA-1273 vs. 同種ブースタースケジュール | |
COVID-19関連入院 | 27.2%(3.7%~50.6%) | 23.3%(15.8%~30.8%) |
COVID-19による死亡 | 21.7%(-8.3%~51.7%) | 18.4%(-15.7%~52.5%) |
異種ブースタースケジュールと同種ブースタースケジュールを比較した場合、COVID-19関連入院に対するワクチン有効性はAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273スケジュールで27.2%(3.7%~50.6%)、BNT162b2+mRNA-1273スケジュールで23.3%(15.8%~30.8%)、COVID-19による死亡に対するワクチン有効性はそれぞれ21.7%(-8.3%~51.7%)、18.4%(-15.7%~52.5%)でした。
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SARS-CoV-2の流行状況によりCOVID-19患者数は増減を繰り返しています。特にオミクロン変異株は感染力(感染伝播)が従来株よりも強いことから、これに対する定期的なワクチンの有効性検証が求められています。
さて、本試験結果によれば、北欧地域のコホート解析の結果、異種ブースタースケジュールは、プライマリーコーススケジュールや同種ブースタースケジュールと比較して、COVID-19に関連する重篤なオミクロン転帰に対する予防効果が高いことが明らかとなりました。具体的にはCOVID-19関連入院の予防効果が高く、COVID-19関連死亡に対してもリスク減少傾向です。
オミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む1価ワクチンの開発が進んでおり、今後はオミクロンのXBB株に対するワクチン接種が主流になると考えられることから、新規のワクチンの効果についても結果の公表が待たれます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 北欧地域のコホート解析の結果、異種ブースタースケジュールは、プライマリーコーススケジュールや同種ブースタースケジュールと比較して、COVID-19に関連する重篤なオミクロン転帰に対する予防効果が高いことが明らかとなった。
根拠となった試験の抄録
目的:オミクロンが優勢な時期に、異種mRNAワクチンのブースタースケジュール(3回接種)と一次スケジュール(2回接種)および同種mRNAワクチンのブースタースケジュール(3回接種)を比較し、ワクチンの有効性を調査すること。
試験デザイン: 集団ベースのコホート解析。
試験設定: デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、2020年12月27日~2022年12月31日。
試験参加者:AZD1222(Oxford-AstraZeneca社製)または一価SARS-CoV-2野生株(先祖株)ベースのmRNAワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech社製)またはmRNA-1273(Moderna社製)を任意の組み合わせで少なくとも一次ワクチン接種を受けた18歳以上の成人全員。
主要評価項目:主要アウトカム評価項目は、COVID-19によるCOVID-19関連入院および死亡の国別複合リスクと、COVID-19による集中治療室入院およびSARS-CoV-2感染の追加アウトカムとした。オミクロンが優勢であった期間に、これらの転帰を異種ブースターを受けた者と一次スケジュールを受けた者(マッチ解析)、および同種mRNAワクチンブースターを受けた者(重み付け解析)で比較した。追跡調査はブースター投与後14日目から75日間行い、ワクチンの有効性の比較は1-リスク比として算出した。
結果:北欧4カ国全体で、1,086,418例の参加者がAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273の異種ブースタースケジュールを受け、2,505,093例がBNT162b2+mRNA-1273の異種ブースタースケジュールを受けた。一次スケジュールのみ(2回接種)と比較して、AZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273とBNT162b2+mRNA-1273からなる異種ブースタースケジュールのワクチン有効性は、COVID-19関連入院に対してそれぞれ82.7%(95%信頼区間 77.1%~88.2%)と81.5%(78.9%~84.2%)、COVID-19による死亡に対してそれぞれ95.9%(91.6%~100.0%)と87.5%(82.5%~92.6%)であった。同族mRNAブースタースケジュールも同様に、前回の一次コースワクチン接種のみと比較して、COVID-19関連入院(≧76.5%)およびCOVID-19による死亡(≧84.1%)に対する予防効果の増加と関連していた。異種ブースタースケジュールと同種ブースタースケジュールを比較した場合、COVID-19関連入院に対するワクチン有効性はAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273スケジュールで27.2%(3.7%~50.6%)、BNT162b2+mRNA-1273スケジュールで23.3%(15.8%~30.8%)、COVID-19による死亡に対するワクチン有効性はそれぞれ21.7%(-8.3%~51.7%)、18.4%(-15.7%~52.5%)であった。
結論:異種ブースタースケジュールは、プライマリーコーススケジュールや同種ブースタースケジュールと比較して、COVID-19に関連する重篤なオミクロン転帰に対する予防効果が高い。
引用文献
Comparative effectiveness of heterologous third dose vaccine schedules against severe covid-19 during omicron predominance in Nordic countries: population based cohort analyses
Niklas Worm Andersson et al. PMID: 37487623 PMCID: PMC10360027 DOI: 10.1136/bmj-2022-074325
BMJ. 2023 Jul 24;382:e074325. doi: 10.1136/bmj-2022-074325.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37487623/
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