コロナ後遺症の予防におけるワクチン接種の効果はどのくらいか?
SARS-CoV-2ウイルスにより引き起こされるCOVID-19の患者数は増減を繰り返し、感染終息の兆しが見えないことから、コロナとの共存(withコロナ)を迫られています。
COVID-19に対する治療薬や感染予防対策が講じられ、感染者数増加の抑制や重症化のリスク低減を実現しました。一方で、新たな課題としてロングCOVID(long-COVID、long COVID、コロナ後遺症)があげられ、これに対する発症予防戦略の確立が急務となっています。
そこで今回は、SARS-CoV-2ウイルスの急性感染前後、あるいはロングCOVID(コロナ後遺症)と診断された後に行うCOVID-19ワクチン接種が、コロナ後遺症の発生率や症状に及ぼす影響を明らかにすることを目的に実施されたシステマティックレビューの結果をご紹介します。
本システマティックレビューは、2020年1月1日から2022年8月3日までのPubMed、Embase、Cochrane covid-19試験、プレプリントはEurope PubMed Central (Europe PMC) をデータソースとしています。SARS-CoV-2ウイルスに感染する前と後にワクチン接種を行った、またはコロナ後遺症の診断後にコロナ後遺症の症状を発症した患者について報告した試験、コホート研究、および症例対照研究が対象となりました。
試験結果っから明らかになったことは?
1,645件の論文がスクリーニングされましたが、ランダム化比較試験は見つかりませんでした。5ヵ国(米国、英国、フランス、イタリア、オランダ)の16件の観察研究が確認され、614,392例の患者について報告されていました。
調査対象となったコロナ後遺症の最も一般的な症状は、疲労、咳、嗅覚の喪失、息切れ、味覚の喪失、頭痛、筋肉痛、睡眠困難、集中困難、心配や不安、記憶喪失や混乱でした。
SARS-CoV-2ウイルスに感染する前のワクチン接種に関するデータを報告した研究は12件あり、10件がコロナ後遺症の発生率を有意に減少させました。
感染前のワクチン接種回数 | コロナ後遺症の発症オッズ比 |
1回 | 0.22〜1.03 |
2回 | 0.25〜1 |
3回 | 0.16 |
任意 | 0.48〜1.01 |
ワクチン1回接種でコロナ後遺症を発症するオッズ比は0.22〜1.03、2回接種でオッズ比は0.25〜1、3回接種で0.16、任意の接種で0.48〜1.01となりました。
コロナ後遺症の発症オッズ比 | |
感染後のワクチン接種 | 0.38~0.91 |
感染後のワクチン接種について報告した研究は5件あり、オッズ比は0.38~0.91でした。研究間の異質性が高いため、意味のあるメタ解析は不可能でした。これらの研究では、他の保護行動やデータの欠落などの潜在的な交絡因子を調整できなかったため、バイアスのリスクが高くなり、エビデンスの確実性が低くなりました。
コメント
COVID-19罹患後のlong COVID(コロナ後遺症)は、様々な症状を呈し、患者QOLを低下させます。このため、コロナ後遺症の対策確立が求められています。
さて、本試験結果によれば、COVID-19ワクチンがlong COVID(コロナ後遺症)に対して保護および治療効果を有する可能性が示唆されました。しかし、試験間の異質性が高いことから、メタ解析は実施されませんでした。long COVIDの予防や治療におけるワクチンの有効性を明確に判断するためには、より確実な比較観察研究や試験が必要です。とはいえ、SARS-CoV-2ウイルス感染前のワクチン接種回数が多いほど、コロナ後遺症の発症オッズ比は低くなっています。あくまでも傾向が示されたに過ぎませんが、定期的なワクチン接種が有効であると考えられます。
続報に期待。
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