デキサメタゾンの用量により患者予後は異なるのか？
COVID-19はサイトかインストームを引き起こし、重症化や死亡リスクを増加させます。これを予防するために、重症化リスクの高い患者においてはステロイドの早期投与が行われます。しかし、ステロイドであるデキサメタゾンの投与量の違いがCOVID-19急性肺炎の転帰に及ぼす影響は不明です。
そこで今回は、成人COVID-19患者を対象に、異なる用量のデキサメタゾンを比較したランダム化比較試験の系統的レビュー・メタ解析の結果をご紹介します。デキサメタゾンの高用量投与は1日12～24mg、低用量投与は1日6～8mgと定義されました。
本試験の主要アウトカムは28日死亡率でした。
試験結果から明らかになったことは？
3,469例の患者を含む8件の試験が同定され、1,775例の患者が高用量のデキサメタゾンを投与されました。
| 高用量 | 低用量 | オッズ比 （95%CI） | |
| 死亡率 | 22.0％ | 20.2％ | オッズ比 1.20 （0.86〜1.67）、p=0.29 I2=63％ TSA調整CI 0.31〜4.66 エビデンスの質（QoE）：非常に低い |
高用量のデキサメタゾンを投与された患者と低用量のデキサメタゾンを投与された患者で死亡率に差は認められませんでした（22.0％ vs. 20.2％；オッズ比 1.20、95％信頼区間 0.86〜1.67；p=0.29；I2=63％；TSA調整CI 0.31〜4.66；QoEは非常に低い）。
メタ回帰では、死亡率に対するステロイドの用量依存的効果は示されませんでした。
高用量のデキサメタゾンは、高血糖のリスク増加（23.6％ vs. 17.2％；1.51、1.19〜1.92；p=0.0008；I2=0％；TSA調整CI 0.90〜2.54；低QoE）と関連していましたが、二次感染（14.3％ vs. 15.0％；0.87、0.56〜1.37；p=0.56；I2=72％；非常に低QoE）とは関連していませんでした。バイアスリスクは8件の研究のうち7件で低いことが示されました。
コメント
デキサメタゾン（デキサメタゾン）の投与量の違いがCOVID-19急性肺炎の転帰に及ぼす影響については充分に検討されていません。
さて、ランダム化比較試験のメタ解析の結果、高用量のデキサメタゾンを投与された急性COVID-19患者の死亡率は、低用量のデキサメタゾンを投与された患者と同程度であることが示されました。高用量のデキサメタゾンは高血糖のリスク上昇と関連していましたが、二次感染のリスク増加とは関連していませんでした。感染症の特徴から、28日間と短期的な追跡期間であることから、より長期的な影響については不明です。とはいえ、高用量（1日12～24mg）デキサメサゾンを投与する意義は低そうです。
デキサメサゾンを投与する際には、低用量1日6～8mgで良さそうです。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験のメタ解析の結果、高用量のデキサメタゾンを投与された急性COVID-19患者の死亡率は、低用量のデキサメタゾンを投与された患者と同程度であるが、高用量のデキサメタゾンは高血糖のリスク上昇と関連している。
根拠となった試験の抄録
はじめに：デキサメタゾンの投与量の違いがCOVID-19急性肺炎の転帰に及ぼす影響は不明である。
方法：成人COVID-19患者を対象に、異なる用量のデキサメタゾンを比較したランダム化比較試験の系統的レビューとメタ解析を行った。デキサメタゾンの高用量投与は1日12～24mgとし、低用量投与は1日6～8mgとした。主要アウトカムは28日死亡率であった。
結果：3,469例の患者を含む8件の試験が同定され、1,775例の患者が高用量のデキサメタゾンを投与された。高用量のデキサメタゾンを投与された患者と低用量のデキサメタゾンを投与された患者で死亡率に差はなかった（22.0％ vs. 20.2％；オッズ比 1.20、95％信頼区間 0.86〜1.67；p=0.29；I2=63％；TSA調整CI 0.31〜4.66；QoEは非常に低い）。メタ回帰では、死亡率に対するステロイドの用量依存的効果は示されなかった。高用量のデキサメタゾンは、高血糖のリスク増加（23.6％ vs. 17.2％；1.51、1.19〜1.92；p=0.0008；I2=0％；TSA調整CI 0.90〜2.54；低QoE）と関連していたが、二次感染（14.3％ vs. 15.0％；0.87、0.56〜1.37；p=0.56；I2=72％；非常に低QoE）とは関連していなかった。バイアスリスクは8件の研究のうち7件で低かった。
結論：高用量のデキサメタゾンを投与された急性COVID-19患者の死亡率は、低用量のデキサメタゾンを投与された患者と同程度であるが、高用量のデキサメタゾンは高血糖のリスク上昇と関連している。
キーワード：急性呼吸窮迫症候群、COVID-19、デキサメタゾン、メタアナリシス、系統的レビュー
引用文献
Effect of dexamethasone dose on outcomes in acute COVID-19 disease: A systematic review and meta-analysis
Timothy Arthur Chandos Snow et al. PMID: 37757919 DOI: 10.1016/j.jinf.2023.09.008
J Infect. 2023 Sep 25:S0163-4453(23)00510-8. doi: 10.1016/j.jinf.2023.09.008. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37757919/
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