併存疾患によりロモソズマブ関連の心血管イベントのリスクは変化する?
平成31(2019)年1月8日にロモソズマブ(商品名:イベニティ)が承認されました。販売開始後から2019年8月18日までに報告された国内症例の集積状況は、虚血性心疾患又は脳血管障害関連症例、及び原因不明死亡症例として36例(心血管系事象関連の死亡2例、原因不明の死亡5例)が報告されていますが、いずれもロモソズマブとの因果関係が否定できない症例は報告されていない、とされています。しかし、海外での報告も踏まえると、ロモソズマブは心・脳血管系イベントのリスク上昇と関連していることは疑いようのない事実であると考えられます。したがって、これらのイベントの危険因子を特定することは、ロモソズマブの安全な使用に貢献する可能性があります。
そこで今回は、ロモソズマブ使用者の心・脳血管イベントの危険因子を検討することを目的とした日本のデータベース研究の結果をご紹介します。
本試験では、まず日本の医薬品副作用報告データベースのデータを用いて、心・脳血管系イベントの発生頻度を比較するために不均衡解析が行われました。次に、多変量ロジスティック解析により、ロモソズマブ使用者の心・脳血管系イベントの危険因子について検討されました。
試験結果から明らかになったことは?
合計で859例のロモソズマブ使用者が確認されました。ロモソズマブ使用者のみで心・脳血管イベントともに不均衡な発生が認められました。
心イベントのリスク オッズ比 OR(95%CI) | |
心疾患 | OR 5.9(3.5~9.9) P<0.01 |
高血圧 | OR 1.6(1.0~2.7) P=0.047 |
多変量ロジスティック解析により、ロモソズマブ使用者の心イベントリスクは、心疾患(オッズ比[OR] 5.9、95%信頼区間[CI]3.5~9.9、P<0.01)および高血圧(OR 1.6、95%CI 1.0~2.7;P=0.047)患者においては有意に増加することが示されました。
脳血管イベントのリスク オッズ比 OR(95%CI) | |
脳血管障害 | OR 2.7(1.2~6.2) P=0.02 |
高血圧 | OR 2.6(1.7~3.9) P<0.01 |
また、ロモソズマブ使用者における脳血管イベントのリスクは、脳血管障害(OR 2.7、95%CI 1.2~6.2、P=0.02)および高血圧(OR 2.6、95%CI 1.7~3.9、P<0.01)であると、著しく増加することが示された。
コメント
ロモソズマブ使用により心血管イベントのリスクが増加することが報告されていますが、どのような患者背景によりリスク増加が示されるのか検証が求められています。
さて、本試験結果によれば、日本のデータベース(JADER)解析において、高血圧がロモソズマブ使用者の心臓または脳血管イベントのリスクを増加させる可能性が示唆されました。
高血圧は心血管イベントのリスクを増加させることは明らかであるため、高血圧症がリスク因子となることは疑いようのない事実であると考えられます。抄録には記載がありませんが、ネガティブコントロールに何を設定していたのか気になるところです。ネガティブコントロールに適切な薬剤(心血管イベントのリスクを増加させないことが明らかとなっている薬剤)を設定していないと、そもそもJADERでロモソズマブの心血管イベントのリスク増加を抽出できるのかが不明確となってしまいます。その上ではじめて、ロモソズマブによる心血管イベントのリスク増加に関連する因子を特定できると考えられます。
とはいえ、これまでの報告も踏まえると結果の信頼性はある程度高いと考えられます。
続報に期待。
☑まとめ☑ 日本のデータベース研究の結果、高血圧がロモソズマブ使用者の心臓または脳血管イベントのリスクを増加させる可能性が示唆された。
根拠となった試験の抄録
背景:ロモソズマブは心・脳血管系イベントのリスク上昇と関連している。これらのイベントの危険因子を特定することは、ロモソズマブの安全な使用に貢献する可能性がある。
目的:本研究は、ロモソズマブ使用者の心・脳血管イベントの危険因子を検討することを目的とした。
方法:まず、日本の医薬品副作用報告データベースのデータを用いて、心・脳血管系イベントの発生頻度を比較するために不均衡解析を行った。次に、多変量ロジスティック解析により、ロモソズマブ使用者の心・脳血管系イベントの危険因子を検討した。
結果:合計で859例のロモソズマブ使用者が確認された。ロモソズマブ使用者のみで心・脳血管イベントともに不釣り合いな発生が認められた。多変量ロジスティック解析により、ロモソズマブ使用者の心イベントリスクは、心疾患(オッズ比[OR] 5.9、95%信頼区間[CI]3.5~9.9、P<0.01)および高血圧(OR 1.6、95%CI 1.0~2.7;P=0.047)患者においては有意に増加することが示された。また、ロモソズマブ使用者における脳血管障害のリスクは、脳血管障害(OR 2.7、95%CI 1.2~6.2、P=0.02)および高血圧(OR 2.6、95%CI 1.7~3.9、P<0.01)であると、著しく増加することが示された。
結論:本結果は、高血圧がロモソズマブ使用者の心臓または脳血管イベントのリスクを増加させる可能性を示唆する。他の関連因子を評価するための追加研究が必要であるが、これらの知見は、ロモソズマブの適切な使用と有害事象の抑制に寄与する可能性がある。
引用文献
Evaluation of Risk of Cardiac or Cerebrovascular Events in Romosozumab Users Focusing on Comorbidities: Analysis of the Japanese Adverse Drug Event Report Database
Kazumasa Kotake et al.
Journal of Pharmacy Technology 2022. First published online December 28, 2022
https://doi.org/10.1177/87551225221144960
— 読み進める journals.sagepub.com/doi/10.1177/87551225221144960
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