重症COVID-19患者における各介入による180日間の生存率はどのくらい?(RCTの二次解析; REMAP-CAP試験; JAMA. 2022)

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重症COVID-19に対する各介入の効果はどのくらいなのか?

重症COVID-19患者に対する治療法はいくつかありますが、その長期的な効果は不明です。

そこで今回は、COVID-19を有する重症成人に対する複数の介入の180日間の長期的な効果について明らかにしたREMAP-CAP試験の結果をご紹介します。

本試験では、2020年3月9日から2021年6月22日の間に、14ヵ国197施設からCOVID-19を有する重症成人患者4,869例が登録された、複数の治療領域内で介入を試験する進行中の適応プラットフォーム試験(REMAP-CAP)の事前に特定した二次解析です。2022年3月2日に180日間の最終フォローアップが終了しました。

本試験の患者は、免疫調整剤(n=2,274)、回復期血漿(n=2,011)、抗血小板療法(n=1,557)、抗凝固療法(n=1,033)、抗ウイルス剤(n=726)、および副腎皮質ホルモン(n=401)という6つの治療領域内で1以上の介入を受けるようランダムに割り付けられました。

本試験の主要アウトカムは180日目までの生存率とし、ベイズ区分指数モデルで解析されました。ハザード比(HR)が1未満は生存率の改善(優越)、1より大きいHRは生存率の悪化(有害)、無益性は転帰の相対的改善が20%未満で、HRが0.83より大きい場合に示されることとされました。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化された患者 4,869例(平均年齢 59.3歳、女性 1,537例[32.1%])のうち、4,107例(84.3%)は生命状態が判明し、2,590例(63.1%)が180日目で生存していました。

6ヵ月生存率
調整ハザード比 HR(95%信用区間 CrI)
IL-6受容体拮抗薬99.9%以上;調整HR 0.74(0.61~0.90
抗血小板剤95%;調整HR 0.85(0.71~1.03
抗凝固療法99.9%;調整HR 1.13(0.93~1.42
回復期血漿99.2%;HR 0.99(0.86~1.14
ロピナビル・リトナビル96.6%;HR 1.06(0.82~1.38
ヒドロキシクロロキン96.9%;HR 1.51(0.98~2.29
ロピナビル・リトナビル+ヒドロキシクロロキン併用96.8%;HR 1.61(0.97~2.67
副腎皮質ステロイド早期中止
ヒドロコルチゾン57.1~61.6%

IL-6受容体拮抗薬は対照群と比較して99.9%以上の確率で6ヵ月生存率を改善し(調整HR 0.74、95%信用区間CrI 0.61~0.90)、抗血小板剤は95%の確率で6ヵ月生存率を改善しました(調整HR 0.85、95%CrI 0.71~1.03)。

試験で定義された統計的無益(HR>0.83)の確率において、抗凝固療法(99.9%;HR 1.13、95%CrI 0.93~1.42)、回復期血漿(99.2%;HR 0.99、95%CrI 0.86~1.14)、ロピナビル・リトナビル(96.6%;HR 1.06、95%CrI 0.82~1.38)では治療効果が高く、一方で、ヒドロキシクロロキン(96.9%;HR 1.51、95%CrI 0.98~2.29)、ロピナビル・リトナビルとヒドロキシクロロキンの併用(96.8%;HR 1.61、95%CrI 0.97~2.67)は、有害となる確率が高いことが示されました。

副腎皮質ステロイドについては、事前に定義した統計的トリガーに達する前に早期に中止されました。さまざまなヒドロコルチゾン投与戦略において、6ヵ月生存率が向上する確率は57.1~61.6%でした。

コメント

COVID-19に対する治療薬として多くの薬剤が検討されていますが、いずれも短期間の結果にとどまっています。COVID-19は後遺症(long-COVID)や合併症の発症を引き起こすことから、より長期的な影響についての検証が求められます。

さて、本試験結果によれば、重症COVID-19患者の180日死亡率を改善する確率の高い介入として、IL-6受容体拮抗薬および抗血小板薬が示されました。特にIL-6受容体拮抗薬の死亡リスク低減効果は6ヵ月間にわたって示されるようです。重要患者においては、IL-6受容体拮抗薬の使用を優先した方が良さそうです。

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☑まとめ☑ 重症COVID-19患者の180日死亡率を改善する確率の高い介入として、IL-6受容体拮抗薬および抗血小板薬が示された。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:重症COVID-19患者に対する治療法の長期的な効果は不明である。

目的:COVID-19を有する重症成人に対する複数の介入の長期的な効果について明らかにすること。

試験デザイン、設定、参加者:2020年3月9日から2021年6月22日の間に、14ヵ国197施設からCOVID-19を有する重症成人患者4,869例が登録された、複数の治療領域内で介入を試験する進行中の適応プラットフォーム試験(REMAP-CAP)の事前に特定した二次解析である。2022年3月2日に180日間の最終フォローアップが終了した。

介入:患者は、免疫調整剤(n=2,274)、回復期血漿(n=2,011)、抗血小板療法(n=1,557)、抗凝固療法(n=1,033)、抗ウイルス剤(n=726)、および副腎皮質ホルモン(n=401)という6つの治療領域内で1以上の介入を受けるようランダムに割り付けられた。

主要アウトカムと測定法:主要アウトカムは180日目までの生存率とし、ベイズ区分指数モデルで解析した。ハザード比(HR)が1未満は生存率の改善(優越)、1より大きいHRは生存率の悪化(有害)、無益性は転帰の相対的改善が20%未満で、HRが0.83より大きい場合に示される。

結果:ランダム化された患者 4,869例(平均年齢 59.3歳、女性 1,537例[32.1%])のうち、4,107例(84.3%)は生命状態が判明し、2,590例(63.1%)が180日目で生存していた。IL-6受容体拮抗薬は対照群と比較して99.9%以上の確率で6ヵ月生存率を改善し(調整HR 0.74、95%信用区間CrI 0.61~0.90)、抗血小板剤は95%の確率で6ヵ月生存率を改善した(調整HR 0.85、95%CrI 0.71~1.03)。試験で定義された統計的無益(HR>0.83)の確率において、抗凝固療法(99.9%;HR 1.13、95%CrI 0.93~1.42)、回復期血漿(99.2%;HR 0.99、95%CrI 0.86~1.14)、ロピナビル・リトナビル(96.6%;HR 1.06、95%CrI 0.82~1.38)では治療効果が高く、一方で、ヒドロキシクロロキン(96.9%;HR 1.51、95%CrI 0.98~2.29)、ロピナビル・リトナビルとヒドロキシクロロキンの併用(96.8%;HR 1.61、95%CrI 0.97~2.67)は、有害となる確率が高かった。副腎皮質ステロイドについては、事前に定義した統計的トリガーに達する前に早期に中止した。さまざまなヒドロコルチゾン投与戦略において、6ヵ月生存率が向上する確率は57.1~61.6%であった。

結論と関連性:1つ以上の治療的介入を受けるようランダム化された重症COVID-19患者において、IL-6受容体拮抗薬による治療は、対照にランダム化された患者と比較して、99.9%を超える確率で180日死亡率が改善し、抗血小板薬による治療は、対照にランダム化された患者と比較して95.0%の確率で180日死亡率が改善された。全体として、これまでに報告された短期間の結果と合わせて考えると、今回の知見は、初期の院内治療効果は6ヵ月までほとんどの治療法で一貫していたことを示している。

引用文献

Long-term (180-Day) Outcomes in Critically Ill Patients With COVID-19 in the REMAP-CAP Randomized Clinical Trial
Writing Committee for the REMAP-CAP Investigators PMID: 36525245 DOI: 10.1001/jama.2022.23257
JAMA. 2022 Dec 16. doi: 10.1001/jama.2022.23257. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36525245/

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