降圧薬の服薬アドヒアランスとイベント発生リスクとの関連性は?
脳卒中後の転倒リスクを増加させることなく、降圧剤が主要な有害心血管イベント(MACE)を回避するのに役立つかどうかに関する実環境でのエビデンスは限られています。
そこで今回は、脳卒中後のMACEおよび入院を要する転倒の発生率と降圧薬のアドヒアランスとの関連について検討した後向きコホート研究の結果をご紹介します。
急性脳卒中後に新たに降圧剤を調剤された成人の後方視的コホート研究(Australian Stroke Clinical Registry 2012-2016; Queensland and Victoria)。医薬品調剤記録を用いて、脳卒中後最初の6か月間にカバーされた日数の割合に応じた服薬アドヒアランスを決定した。退院後6か月から18ヵ月間のアウトカムは以下の通り:(i) MACE(全死亡、脳卒中再発、急性冠症候群の複合アウトカム)、(ii) 入院を必要とする転倒。
推計はCoxモデルを用い、逆確率治療ウェイトを用いて30以上の交絡因子で調整した。
試験結果から明らかになったことは?
対象者4,076例(年齢中央値 68歳、女性 37%)のうち、58%が退院後6ヵ月以内に80%以上のカバー日数を有していました。その後12ヵ月間に360例(9%)がMACEを経験し、337例(8%)が入院を必要とする転倒を経験しました。
ハザード比 HR (95%CI) アドヒアランス80%以上 vs. 80%未満 | |
MACE (全死亡、脳卒中再発、急性冠症候群の複合アウトカム) | HR 0.68 (0.54〜0.84) |
入院を要する転倒 | 下位分布HR 0.78 (0.62〜0.98) |
群間のバランスを調整した後、80%以上のカバー日数の参加者は、80%未満のカバー日数の参加者よりもMACE(ハザード比 0.68、95%CI 0.54〜0.84)および入院を要する転倒(下位分布ハザード比 0.78、95%CI 0.62〜0.98)リスクが減少していました。
コメント
降圧薬の服薬アドヒアランスが患者転帰にどのように影響するのかについては充分に検討されていません。
さて、本試験結果によれば、服薬アドヒアランスが80%以上の場合、80%未満と比較して、MACEおよび入院を必要とする転倒、両方のリスク低減と関連していました。
あくまでも相関関係が示されたに過ぎませんが、やはり薬剤の有益性を得るためには服薬アドヒアランス80%以上が、一つの目安になりそうです。
続報に期待。
✅まとめ✅ 脳卒中後6か月以内の降圧薬のアドヒアランスの80%以上の場合、80%未満と比較して、MACEおよび入院を必要とする転倒、両方のリスク低減と関連していた。
根拠となった試験の抄録
背景:脳卒中後の転倒リスクを増加させることなく、降圧剤が主要な有害心血管イベント(MACE)を回避するのに役立つかどうかに関する実環境でのエビデンスは限られている。我々は、脳卒中後のMACEおよび入院を要する転倒の発生率と降圧薬のアドヒアランスとの関連について検討した。
方法:急性脳卒中後に新たに降圧剤を調剤された成人の後方視的コホート研究(Australian Stroke Clinical Registry 2012-2016; Queensland and Victoria)。医薬品調剤記録を用いて、脳卒中後最初の6か月間にカバーされた日数の割合に応じた服薬アドヒアランスを決定した。退院後6か月から18ヵ月間のアウトカムは以下の通り:(i) MACE(全死亡、脳卒中再発、急性冠症候群の複合アウトカム)、(ii) 入院を必要とする転倒。
推計はCoxモデルを用い、逆確率治療ウェイトを用いて30以上の交絡因子で調整した。
結果:対象者4,076例(年齢中央値 68歳、女性 37%)のうち、58%が退院後6ヵ月以内に80%以上のカバー日数を有していた。その後12ヵ月間に360例(9%)がMACEを経験し、337例(8%)が入院を必要とする転倒を経験した。群間のバランスが取れた後、80%以上のカバー日数の参加者は、80%未満のカバー日数の参加者よりもMACE(ハザード比 0.68、95%CI 0.54〜0.84)および入院を要する転倒(下位分布ハザード比 0.78、95%CI 0.62〜0.98)リスクが減少していた。
結論:脳卒中後6か月以内の降圧薬の高いアドヒアランスは、MACEおよび入院を必要とする転倒の両方のリスクの低減と関連していた。脳卒中後の転帰を最大化するために、患者には降圧薬の服用を継続するよう勧めるべきである。
キーワード:降圧剤、コンプライアンス/アドヒアランス、死亡率/生存率、品質とアウトカム、二次予防、脳卒中
引用文献
Antihypertensive Medication Adherence and the Risk of Vascular Events and Falls After Stroke: A Real-World Effectiveness Study Using Linked Registry Data
Lachlan L Dalli et al. PMID: 36330805 DOI: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.122.19883
Hypertension. 2022 Nov 4. doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.122.19883. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36330805/
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